(TxT)<戯れ言ですよ

とみーのにっき&おえかきちょう

ふたりはプリキュア 第28話 『レギーネ登場!ってもう来ないで!』

2013年08月11日 | ふたりはプリキュア
いやぁ、見事なシナリオだった。

 そんな今回のお話は…
 休み真っ最中のなぎさとほのか。ほのかの家で宿題に取り込むが、なぎさは暑さでバテ気味…。そんな二人をよそに元気に遊びまわるメップル達。
 鬼ごっこやだるまさんが転んだではしゃぎ回り、なぎさの怒りを買うが…「目覚めるポポ。赤い柱、危ないポポ」突然暗示にかかった様に呟くポルン。
 以前と同様、新たな敵の予言では…と訝しがると同時に、いつまで続くか分からない戦いに落ち込むなぎさ。自分達の力だけで、全てを守り切れるのか。自信が無くて不安になる。
 しかし、いくら考えても戦うしかない。ほのかが呟く。「私だってなぎさがいてくれなきゃバラバラになっちゃいそうなほど不安なのよ…」
  ポルンの予言は当たっていた。日差しの当たらない公園の影で、ひっそりと芽吹く種。第二の使者・レギーネはぼんやりと彷徨い歩く。賑やかな公園を抜け、ショーウィンドウの前で立ち止まる。
 頭の片隅に残る記憶…消滅するドツクゾーンと、二人の少女の姿。あの二人は、何だったか。何かに導かれる様にフラフラと車道を抜けるレギーネには何の障害も無い。
 車はいつの間にか、どこからともなく現れた黒服の男達によって止められている。潰れた車、意識の無い運転手。騒然とする車道を一歩一歩進む。自分には関係ない。行かなくては。今は、自分を呼ぶ何かの元へ、行かなくては。
 「どうしたんですか、二人とも顔色が悪いですよ?」穏やかに微笑むさなえ。「大丈夫です、今の私達にはどうにもならない事だし…」思わず本音がこぼれるなぎさ。
 唇をかみしめる。考えてもどうしようも無い。「どうしようも無いと思うから、どうしようもなくなっちゃうんじゃないかしら」さなえの言葉に顔を上げる。
 昔、自分が戦争で焼け野原になった町を見下ろした絶望感。「希望を忘れちゃダメ」その時握り締めたコミューンから聞こえた声に、気持ちを奮い立たせたという。
 諦めないで、いつだって絶望と希望は背中合わせにある。顔を上げるなぎさとほのか。その瞳には、確かに希望の光が宿っている。「希望を失わなければ明日はきっといい日になりますよ」
 以上公式のあらすじより抜粋。

 放送日は2004年8月15日。終戦記念日なんですねー。そういうことも踏まえつつ、一番言いたい事につなげている良い脚本でした。
 基本的な流れは、ほのかの家で夏休みの宿題をやるなぎほのと、新たに生まれた闇の使者レギーネの様子を交互に見せていき、それが戦闘でひとつになるという流れになっているのですが、まず最初のほのかの家で宿題やるなぎほのの部分が良いんですよ。
 どうもほのかの部屋にはエアコンが無いようで、淡々と宿題に取り組むほのかをよそに、なぎさは暑くてだらけていて、ミポメポポルンは遊び回っている。この様子ががけっこう長い尺で描かれているんですけど、このなんでもない日常の様子がとても「夏休み感」を演出しているんですよ。特に某があるわけでもなく、ポルンのわがままに翻弄されるメップルであったり、暑くて扇風機の前で「あ~」ってやるなぎさだったりする「なんでもないけど時間だけはある」様子が上手く表されていて、夏休みなんだなぁと感じる事が出来るのだ。
 このなんでもない日常を長々と見てきた所で、ポルンの予知「目覚めるポポ」でちょっと雰囲気が変わる。
 前回、ポルンがそういった所から闇の使者ジュナが現れた事もあって、また闇の使者が現れるのではとなったなぎさは、「私たちで本当に大丈夫なのかな?」と不安を露にする。ドツクゾーンとの闘争は一体いつまで続くのか等、次々と不安を口にするなぎさを「やめて!」と制止したほのかも、なぎさがいなかったら自分もバラバラになってしまいそうなくらい不安である事を口にし、さっきまでのなんでもない日常がいつまで続くのか、自分たちだけで守りきれるのか、終わりの見えない闘争に不安になるなぎほのをここで見せているのが印象的だ。
 伝説の戦士プリキュアと言えど、なぎほのは14歳の普通の女子中学生なのである。本来であるならばさっきまで見せていた「なんでも無い日常」を満喫して過ごしていくだけのはずであるが、その日常を守る為に戦わなくてはならないのだ。しかしてその闘争は終わりが見えない。彼女らが不安になるのも当然であろう。

 そこでさなえおばあちゃまの登場である。上記引用したあらすじになるように「自分たちにはどうしようもない」というなぎほのに対し、おばあちゃまは自らの体験談を聞かせるのだが、これも実におもしろい。
 戦後、小さな蔵と半分焼け残った家が残された幼いさなえは、ふとアバンであった昔、父に背負われ行った坂の上にあるケヤキの木を思い出し、そこへ行ってみようとする。きっと一心不乱に坂道を歩いていたのだろう、いつの間にかさなえの後には幾人かの子供達が続いていた。みんなと一緒に遠足気分になって笑顔で坂を上り、ついに坂の上にあるケヤキの木まで辿り着くと、昔、星空と町の光が煌煌と灯っていた風景は、どこまでも続く焼け野原となっていたのだ。
 終戦直後の絶望感の中、何をして良いか分からなかったであろう。ふと思い出した思い出にすがり、きっとあの時のように素晴らしい景色が見えるのだろうと思っていた所で見えたのが一面焼け野原である。なんて空しい光景なのだろう。戦争によって、全てが失われた絶望感を切に感じさせる。
 そんな中、さなえは確かに聞こえたと言う。お守り代わりに持っていたコミューンから「希望を忘れちゃダメ」という声を。絶望感漂う中で、この幻聴かもしれないたった一言が、それでも希望はあると、どんな困難であったとしても諦めてはいけないのだと、さなえに一縷の希望の灯火を灯した。
 戦って死ぬ事が美徳とされた時代に、生き残った人々は何もない所から、さなえのように小さな希望を胸に懸命に生き抜き、そして今があるのだ。やはりこの世代の方々のお言葉は重みが違うのである。
 ともあれ、放送日が終戦記念日ということもあってか、終戦直後の話を盛り込んできたわけだが、坂を登りきっての焼け野原はけっこうショッキングで、このシーンは良く覚えていたのだが、改めて見てもけっこうズシッとくるモノがある。そんな中、「希望を忘れちゃダメ」のたった一言でも、それでも生きていく希望となり、今回一番言いたい事である「希望を失わなければ明日はきっといい日になる」につなげている。

 さなえおばあちゃまのお言葉に、希望を見出したなぎさたちは、おばあちゃまが言っていたケヤキの木へ行ってみようとなるのだが、その前に興味深いシーンがある。
 あかねさんのたこ焼き屋へよってかき氷を食べるのだけど、今時どこでもかき氷なんて売っているし売り上げが上がらないと愚痴をこぼしてしまったあかねさんに、なぎさが「希望を失わなければ明日はきっといい日になる」とおばあちゃまの受け売りを話す。
 あんまりにもらしくないなぎさに、あかねさんは熱でもあるの?と茶化すのだが、なぎさが真面目におばあちゃまの受け売りを話す所を見ると、おばあちゃまの話はなぎさの胸を随分と打った事が窺える。不安を口にしていたなぎさの中で、ガラリと考え方を変えるきっかけのひとつになったのだとここで分かるのだ。
 こういう考え方の変遷が窺えた所で、レギーネの人間体「小山翔子」となぎほのは出会い、彼女を守るザケンナーとの戦闘となる。
 今回の戦闘は決め技マーブルスクリューを放たない戦闘なのだけど、アクションがとてもカッコよく見応えがあってよかったのもさることながら、戦闘中にケヤキの木まで辿り着いたプリキュアのふたりが見たのは、無数のザケンナーであった所からが良い。
 ひどく不安げなブラックが、最初に現れた5体でも苦労しているのに、こんなにたくさんを相手にするなんて絶対無理、と言っておきながら、今日発売の限定チョコタルトを買うのに間に合わないだとか、宿題がたくさん残っているとかにつながって、とっとと帰れー!と怒るブラックのコミカルな演技に変わる。
 まぁ一応は戦後の話のショッキングな部分もあったので、あんまり話が暗くならないようにという配慮なんだけども、おばあちゃまの話を聞いて、なぎさがこの状況でも絶望せず諦めない気持ちに変わっている事を表しているし、なにより、これより後にこういった状況で日常を引き合いに出してくる「はしり」であると言っても良いだろう。今となっては良く知っている「なぎさらしさ」は、ここから始まったのかとちょっと感慨深かったです。

 戦闘後も実に良く出来ていて、レギーネの登場にこれからどうなるどうすると不安を口にするミポメポに、なぎほのは大丈夫だとおばあちゃまの言葉「どんなに苦しくても、絶望と希望は隣り合わせ、希望を失わないでがんばれば、明日はきっと、いい日になるよ!」と笑顔で言い、ケヤキの木のある坂から街を見下ろすのである。
 終戦直後にさなえが見下ろし焼け野原となった町は、今なぎほのの時代になって立派な街並を築いている。何もなかった所から、当時さなえのように懸命に生きた人たちが、希望を失わずに紡いできた結果である。
 新たな闇の使者にこれからの未来に不安を覚えたなぎほのであったが、希望を失わないでがんばれば、この街のように発展していくのだと爽やかな笑顔で終わるのだから清々しい。

 今回のお話として、なぎほのの心の変遷を軸に、新たなる闇の使者の登場を前回同様に不気味な感じを間に挟んでザッピング的に見せて、それが戦闘に入る所でつながって、レギーネをほぼ喋らさずに不気味な感じを残して興味を引っぱり、それでも希望を失わないなぎほのと、見事な流れ。
 お話良し、演出良し、アクション良しと、三拍子揃った見事な出来映えであり、すごくプリキュアらしい、とても良いお話となっておりました。いやぁ~ホント見事でした。
 どーでもいーけど、この回でDVD-BOX「Black」巻が終わり、次回から「White」巻です。やっと半分きました(笑)。
 どーでもいーついでに、若かりしさなえおばあちゃま、可愛いですよね。きっとさぞ美人だったんだろうなぁ。


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