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Kバレエ「クレオパトラ」

2018-06-16 23:09:32 | 見る
熊川バレエの「クレオパトラ」を見てきました。オーチャードホール。
初演が評判だったオリジナルの作品。
すばらしくドラマチック!

弟プトレマイオスとの争い、
エジプトと自分の運命を託す男であるカエサル、
最後の恋の相手、アントニウス。
だいたいの歴史的な事件を手際よく見せて、
集中的に踊りで見せるのは、クレオパトラの「女の一生」。

プロローグ、エジプトの壁画的な、「目」の大きなデザインの幕が下がっていて、
それが透けると、暗い舞台の中央に非常に長い階段がある。遠近法も使ってはいるけど、実際にすごく高さがある。
そのてっぺんにクレオパトラが立っているのが見える。
露出の多い衣装に薄物を羽織っている。
このあと、劇的な音楽に合わせて、何度か幕が透けて、長い階段を徐々に降りながら、
クレオパトラが違うポーズを見せる。
挑むように艶めかしい動きが蛇のように見える。

その幕が上がって物語が始まるが、この冒頭の見せ方が強烈な印象で、作品の世界を表している。

踊りで印象に残るのは、クレオパトラが神殿の男たちの中から選んだ一人に、一夜の夜伽の相手をさせるシーン。
彼女は口に毒薬の瓶をくわえて男と交わる。
事が済んだら、その毒薬を飲ませて殺すため。
振付もはっきり性的なものだが、エロスに死がぴったりくっついていて、より官能的な踊りになっている。
クレオパトラの腕の動きが蛇のように見える場面が多いのだが、
特にこのシーンでの、床をくねりくねりと這うような動きは、そのまま蛇身のようだった。

主役はダブルキャストで中村祥子と浅川紫織、私が見た回は浅川紫織だった。
女であることそのものが戦略的みたいな役を、途切れない緊張感で演じきってて、凄かった。

終幕は、アントニウスを失って自死を決意したクレオパトラの死のシーンなのだが、
毒蛇に噛ませて死んだという通説を取らずに、
舞台中央に冒頭の長い階段が再び置かれ、
そこを、これまでに死んでいった武将たち、カエサルやプトレマイオス、アントニウスたちが昇っていく。
自分の両脇を、死んだ男たちが通り過ぎて消えていく中に立ち尽くしていたクレオパトラは、
最後に頂上に立って強く両腕を上げると、そのまま弓なりに向こう側へ落下していった。

このラストがすばらしくドラマチックだった!
碇知盛みたい!
エピローグとして、階段にクレオパトラと男たちが立っているのを見せて終わる。
熊川さんは、芸術的に難しくしていくのじゃなく、見やすくアピールする演出力があるのね。

カエサル:スチュアート・キャシディ(それらしい貫禄があってよかった。骨格や筋肉の厚みの、見た目が必要な役ね)
プトレマイオス:篠宮佑一
アントニウス:堀内將平
オクタヴィアヌス:杉野慧

ガイド、案内人という役なのかな(佐野朋太郎)、すごく踊れる人だった。
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