よむよま

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「骨と十字架」新国立劇場

2019-07-21 20:27:55 | 見る
新国立劇場で「骨と十字架」を見てきた。7月18日。
ダーウィンの進化論と、キリスト教の神への信仰が相容れないことがテーマ。
実話をもとにした戯曲で、キリスト教の話だけど、
書いたのは日本人劇作家の野木萌葱、演出は小川絵梨子。

地質学者であり古生物学者でもあるテイヤール神父は、
進化論を推奨したがために、所属するイエズス会とヴァチカンの異端審問官から追及されることになる。
もう少し前の時期なら、異端者だ!ということで火あぶりになったケースらしいが、
この時代には、その考えを捨てますと書類にサインすれば許される。
しかし、テイヤールはサインを拒み、ローマから北京へ赴任を命じられる。
北京・・・「辺境の地へ飛ばされた」ということ。
そこでテイヤールは、発掘隊に加わって、北京原人の骨の発見にかかわることになる。
つまり、進化論を捨てよと言われて、世界の果てに追いやられたら、
そこで進化論を証明するものを発掘してしまった。
これで彼は大喜びしたかというと、憂いに沈んでしまうのですね。
彼は、神への信仰(神が世界を作ったという創世記を信じる)と、科学的な進化論を、別ものとしてではなく、一つのものとして信じたいし、学生たちに教えたい。
聖職者であることを辞めない、学者・研究者であることも辞めない。
引き裂かれながら、苦悩しながら、苦しんで生き続けていくの。

不思議なのね、その姿勢が。
聖職者であることを辞めてしまえば、学者として、学会にも迎え入れられる存在だったのに、そうはしない。
あくまでも神父としての道も行こうとする。
このテイヤールの役は、最初、田中壮太郎だったのが、病気降板で代わった、
その俳優の名前が神農直隆(かみのさん!)というの。
テイヤールに、北京に来ませんか?ローマから遠く離れて自由にできますよと言う神父リサンの伊達暁がよかった。
このリサン神父も学者であり、進化論は支持している。しかし、彼は科学は科学、信仰は信仰、別のものだと考えることで折り合いをつけて安定している。
皮肉で冷静な人物だけど、テイヤールの姿に惹きつけられてもいる。
イエズス会の長老が小林隆、テイヤールの態度に困惑しながらも、温かみがある人物だったのはコバさんだからかな。
テイヤールの弟子で、師を心配する若い神父が佐藤祐基、
テイヤールと敵対し、「まったく理解できません!」とキャンキャン言うヴァチカンの審問官が近藤芳正。
男5人だけの舞台で、セットをほぼ入れ替えずに場面が、屋外から屋内へ、屋内から屋外へ、北京へ、ローマへと変わる。
難しくはあったけど、興味が湧いて、パンフレットと一緒に売っていた、
元になった本も買ってしまった。


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