映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「杏のふむふむ」 杏

2015年06月22日 | 本(エッセイ)
ごく普通の女の子?

杏のふむふむ (ちくま文庫)
筑摩書房


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ラブラドールのハリーと過ごした小学校時代、
歴女の第一歩を踏み出した中学時代、
単身海外にモデル修業に行った頃、
そして、女優として活動を始めたとき…。
NHK連続テレビ小説のヒロインを演じ国民的な女優となった杏が、
それまでの人生を、人との出会いをテーマに振り返って描いたエッセイ集。
そのとき感じたことを次につなげて明日に向かう姿は、感動必至。


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先日読んだのが、三浦しをんさんの「ふむふむ」で、
こちらは女優・杏さんの「ふむふむ」です。
インタビューではないけれど、
様々な人と出会ったエピソードやその時聞いた話などがエッセイとして描かれています。


驚いてしまうのが文章のお上手なこと、
そして中の可愛らしいカットもすべて杏さん自らのものということで、
やっぱり、天は2物も3物も与えてしまうことがあるという
見本のような方ですね。
彼女がこのように文章を描くことを苦としないのは、
冒頭にエピソードがあるのですが、
小学校の時の担任"エンドウマメ"先生が、
毎日子どもたちが書いた日記に、
必ず一言づつコメントを付けて返してくれていたかららしいのです。
実は私にも小学校の時に同じ経験がありまして、
それ以来こんな感じ・・・?
だから急に、親近感が持ててしまいました。


世界的有名な俳優を親にもち、モデルで、女優・・・。
交友も広くて、さぞかし積極的でお話し上手なお嬢さん
・・・と思ったのですが、
本作の解説で村上春樹氏がこのように言っています。
「ごく普通の女の子」と。
ちょっと意外な感じがしたのですが、
それは多分、杏さんが、自らの知識や経験をことさら人前でひけらかしたりせず、
いつも人の話を真剣に「ふむふむ」と聞いて、
自分に取り入れようとする、
そんな聞き上手な女性だからなのかもしれません。
そんなところも好感が持てますし、
彼女が「歴女」であるというのも、ポイント高い。
もし続きが出るなら、また読みたい。
素敵な本でした。

「杏のふむふむ」杏 ちくま文庫
満足度★★★★☆