最高齢監督の世界
* * * * * * * * * *
1908年生まれマノエル・デ・オリベイラ監督が
現役世界最高齢で2012年、104歳で発表した作品です。
しかしこの2015年4月106歳で亡くなったとのこと。
私にとっては記念的視聴となりました。
さて、本作。以前に見た「ブロンド少女は過激に美しく」でも感じたのですが、
カメラを固定して、じっくり同じカメラワークで登場人物をとらえ続ける
という作風は、やはりそのまま。
しかも本作は戯曲が原作なので、ほとんど舞台は貧しく薄暗い家のリビングのみ。
セリフ回しもやや硬く、観念的な言葉が多いのです。
というわけでこれは、見ているうちに眠り込んでしまう可能性大です。
私が最後まで眠らず見たというのも奇跡に思えるほどに・・・!
時代はまだ電気が普及していなくて、街の灯にガス灯が使われていたくらいの頃。
・・・て、実際はいつくらいなのでしょう?
1900年代初頭くらい?
つまり監督の生まれた頃か・・・。
登場人物はまず老夫婦。
夫は会社のしがない集金係。
妻はそんな夫を不甲斐ないと思っている。
そして共に暮らす息子の嫁。
肝心の息子はどうやら刑務所に入っているらしく、
もう8年も帰ってこない。
父と嫁はそのことを知っているのですが、
母は、息子が刑務所に入っていることは聞かされていません。
だから、いつもいつも息子がどこで何をしているものやら
心配し、嘆き悲しんでいるのです。
そしてろくに探そうともしない夫をなじり、
嫁にも「アンタのせいで息子は出て行ったのだ」などという。
しかし夫は、妻に息子が刑務所に入っているなどと話したら
どれだけショックを受けるだろうかと、そのことが心配なあまり、
自分がどんなに罵られようとも、じっと耐え秘密を守っているのです。
嫁は本当のことを話したほうが良いとは思いながらも
義父の考えに従い、黙っています。
二人は秘密を共有することによって、並以上に親密なようにも見受けられます。
そんなある日、突然その息子が8年ぶりに帰宅するのです。
これで不和な家庭に幸福が呼び戻されるのか・・・?
いえ、それはさらなる悲劇の前触れでしかなかったのです。
何しろムショ帰り息子なのですから・・・。
帰ってきてまもなく、
「地味で暗くて毎日同じことの繰り返し、これで生きているといえるのか・・・」
とかなんとか、さっそくクダを巻き始めて・・・。
結局この一家は、最大の窮地に陥ることになるのですが、
そのことのために下す父親の決断というのがすごい。
彼は何にしても妻が息子を愛する気持ちを守りぬきたかったようなのです。
あんなにいつも愚痴ばかりで自分をも見下すような妻なのに・・・。
なんというこの慈愛。
感動・・・
というよりはむしろ驚き呆れるという感じでしょうか。
現代感覚からはやはり少しずれていると思わなくもありませんが、
まあ、それも一興。
作風も内容も、ユニークです。
2012年/ポルトガル・フランス/91分
監督:マノエル・デ・オリベイラ
出演:クラウディア・カルディナーレ、ジャンヌ・モロー、マイケル・ロンズデール、リカルド・トレパ、レオノール・シルベイラ
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1908年生まれマノエル・デ・オリベイラ監督が
現役世界最高齢で2012年、104歳で発表した作品です。
しかしこの2015年4月106歳で亡くなったとのこと。
私にとっては記念的視聴となりました。
さて、本作。以前に見た「ブロンド少女は過激に美しく」でも感じたのですが、
カメラを固定して、じっくり同じカメラワークで登場人物をとらえ続ける
という作風は、やはりそのまま。
しかも本作は戯曲が原作なので、ほとんど舞台は貧しく薄暗い家のリビングのみ。
セリフ回しもやや硬く、観念的な言葉が多いのです。
というわけでこれは、見ているうちに眠り込んでしまう可能性大です。
私が最後まで眠らず見たというのも奇跡に思えるほどに・・・!
時代はまだ電気が普及していなくて、街の灯にガス灯が使われていたくらいの頃。
・・・て、実際はいつくらいなのでしょう?
1900年代初頭くらい?
つまり監督の生まれた頃か・・・。
登場人物はまず老夫婦。
夫は会社のしがない集金係。
妻はそんな夫を不甲斐ないと思っている。
そして共に暮らす息子の嫁。
肝心の息子はどうやら刑務所に入っているらしく、
もう8年も帰ってこない。
父と嫁はそのことを知っているのですが、
母は、息子が刑務所に入っていることは聞かされていません。
だから、いつもいつも息子がどこで何をしているものやら
心配し、嘆き悲しんでいるのです。
そしてろくに探そうともしない夫をなじり、
嫁にも「アンタのせいで息子は出て行ったのだ」などという。
しかし夫は、妻に息子が刑務所に入っているなどと話したら
どれだけショックを受けるだろうかと、そのことが心配なあまり、
自分がどんなに罵られようとも、じっと耐え秘密を守っているのです。
嫁は本当のことを話したほうが良いとは思いながらも
義父の考えに従い、黙っています。
二人は秘密を共有することによって、並以上に親密なようにも見受けられます。
そんなある日、突然その息子が8年ぶりに帰宅するのです。
これで不和な家庭に幸福が呼び戻されるのか・・・?
いえ、それはさらなる悲劇の前触れでしかなかったのです。
何しろムショ帰り息子なのですから・・・。
帰ってきてまもなく、
「地味で暗くて毎日同じことの繰り返し、これで生きているといえるのか・・・」
とかなんとか、さっそくクダを巻き始めて・・・。
結局この一家は、最大の窮地に陥ることになるのですが、
そのことのために下す父親の決断というのがすごい。
彼は何にしても妻が息子を愛する気持ちを守りぬきたかったようなのです。
あんなにいつも愚痴ばかりで自分をも見下すような妻なのに・・・。
なんというこの慈愛。
感動・・・
というよりはむしろ驚き呆れるという感じでしょうか。
現代感覚からはやはり少しずれていると思わなくもありませんが、
まあ、それも一興。
作風も内容も、ユニークです。
2012年/ポルトガル・フランス/91分
監督:マノエル・デ・オリベイラ
出演:クラウディア・カルディナーレ、ジャンヌ・モロー、マイケル・ロンズデール、リカルド・トレパ、レオノール・シルベイラ