映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ハイネケン誘拐の代償

2015年06月23日 | 映画(は行)
犯罪の代償とは



* * * * * * * * * *

1983年、オランダ、アムステルダム。
有名ビール企業ハイネケンの会長が誘拐された実話に基づく物語です。



これまで犯罪などに関わったこともない幼なじみの5人の若者が、
巨大組織を装い、
フレディ・ハイネケン(アンソニー・ホプキンス)氏の誘拐を決行。
しかし、海千山千のハイネケン氏は人質となっても動じず、
食事に注文をつけたり本を要求したり、
誘拐犯らを心理的に追い詰めていく・・・。

何しろ、あのレクター博士を演じたアンソニー・ホプキンス。
一体どんなふうに犯人たちを食いつぶしていくのか・・・と、
若干期待があったのですが、
実はそういう話ではなかったんですね。
まあ確かに、ここまでのし上がってきたハイネケン氏、
甘ちゃんの若造グループなど手玉にとってしまう、
確かにそういう雰囲気はありましたが。



ハイネケンとその運転手を監禁しながら、
何くわぬ顔で日常生活をも続けていた彼ら。
始めは5日でかたをつけるつもりだったのが、
3週間近くたっても身代金要求に対する返事がなく、どんどん焦燥してゆくのです。
いつ警察が踏み込んでくるかに怯え、
また、もしこのままナシのつぶてならどうするのか不安にもなります。
まず見せしめとして運転手を殺してみせるのか。
そしてその後にハイネケンをも・・・?
犯罪には全く素人の彼らにはそのような度胸がありません。



チームの一人が思わずつぶやく。
「今やめれば、金は入らないけれど、安らぎの日々を取り戻せる・・・」
まさにここが本作のテーマのように思いました。
犯罪に手を染めれば、
家族と共に笑い、食事をする、
そんな、ささやかではあるけれど人としてあたり前の幸福な生活に
もう戻ることができない。
たとえそれが殺人にまで及ばないにしても・・・。
そのことがすなわち犯罪の「代償」であるわけです。
ついには大金を得てしまった後、初めて彼らはそのことを思い知ることになる。



ここで、アンソニー・ホプキンスの起用は、
逆に失敗だったような気がします。
どうも、変な方に期待(?)してしまって、拍子抜け。
ストーリー自体は納得の行くものでしたが。


「ハイネケン誘拐の代償」
2015年/ベルギー・イギリス・オランダ/95分
監督:ダニエル・アルフレッドソン
出演:アンソニー・ホプキンス、ジム・スタージェス、サム・ワーシントン、ライアン・クワンテン、マーク・ファン・イーウェン
満足度★★★☆☆