これは1年ほど前に見た「蒼き狼/地果て海尽きるまで」とつい、引き比べてしまいます。
モンゴル帝国を打ち立てたチンギス・ハーンのまだ若いテムジン時代の物語。
彼の少年時代からモンゴルの部族をほぼ一つにまとめる部分まで、という設定も同じ。
でも、相当手触りは異なっています。
何しろ、その日本作品は私はあまり好きではありませんでした。
まず、セリフは無論日本語で、しかも時代劇がかった仰々しい台詞回しにひどく違和感を覚えてしまったのです。
こちらは、全編モンゴル語。
広大なモンゴルの大地に吹くモンゴルの風を感じる。
彼の妻、ボルテはメルキト族に略奪されてしまうのですが、彼女を取り戻しに行ったときには、身ごもっている。
日本版では、その血を信じられないところが、テムジンの内面の苦しみにつながるのですが、こちらのテムジンは、そんなことはつゆとも気にしない。
豪快にこれは俺の息子だ、といって放つ。
そうですよね、世界征服までしようという人が、そんなことにこだわってどうする!
あの広大な大地では、それは気にすべきことではない。
彼と兄弟の誓いを結ぶ、ジャムカ。
いやはや、彼は良かったですね。すごい迫力がありました。
ちょっと、浅野忠信が、食われてたかも・・・。
いやいや、彼は彼で、また、別の強さがあるわけです。
なんというか、ここでのテムジンは、とらわれては逃げ、またとらわれては逃げ、苦難の連続。
そのような中で、体力と深い精神力を身につけたようです。
牢にとらわれた彼は、ほとんど禅僧のよう。
最後にそこから妻のボルテが彼を救出するくだりは、
とって付けたような感じで、違和感がありますが、
全体ではかなりのリアリティーと迫力で、
反町対浅野とすれば、私は浅野テムジンに軍配を上げたいと思います。
チンギス・ハーンの物語はここまでも面白いですが、私はこの先、モンゴル帝国が、中国・ヨーロッパへ進出していくくだりにも興味があります。
島田荘司の作品に、そのことに触れたものがありまして、
「溺れる人魚」という本ですが、
いかにしてモンゴルが、ヨーロッパを手中にしていったか、
また、その後のことなどにも若干触れていて、なかなか楽しめました。
・・・歴史は浪漫ですねえ・・・。
2007年/ドイツ=カザフスタン=ロシア=モンゴル/125分
監督:セルゲイ・ボドロフ
出演:浅野忠信、スン・ホンレイ、アマジュ・ママダコフ、クーラン・チュラン