goo blog サービス終了のお知らせ 

映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

サイドカーに犬

2008年04月12日 | 映画(さ行)

(DVD)
芥川賞受賞の長嶋有、デビュー作が原作となっています。
30歳独身、会社勤めの薫が、ふと会社をさぼってしまい、自分の小学生の時のある夏休みの出来事を回想します。
母が家出をした夏。
そこへ父の愛人ヨーコさんが現れる。
ヨーコさんは男勝りで破天荒。
薫の母はとにかくきちんとした「母」であったので、このような女性を見るのは始めて。
薫自身も、まじめできちんとした子なんですね。
夏休みの夜、父たちはマージャン、弟はゲーム、という騒然とした中で、一人宿題をやっていたりする。
そんな彼女ですが、すこしずつヨーコさんに引かれていく。
ヨーコのほうも、適当なことに妥協しない、思慮深さを秘めた薫を好きになっていきます。
2人の「夏休み」は、海辺の町への一泊旅行。
普通ならほとんど交わらない、正妻の娘と、父の愛人。
この奇妙で、微妙な交友が、夏の冒険とマッチして、余韻の深いものになっています。

あるとき、ヨーコはいうのです。
「犬を飼う側、つまり支配する側と、犬として飼われる側、支配されておとなしく言うことを聞くだけの側と、とちらがいいか?と。」
その時の薫の答え。
「良くわからないけど・・・、いつかサイドカーに犬が乗っているのを見たことがあって、あんな風なら、犬もいいなあ・・・。」
それは、支配・被支配というよりは、まだ大人の庇護のもとで楽しく安心に暮らしたいのだという子供としての願いなのかもしれません。
突然の母の家出でもさして動揺していなかったかに見える、薫の、やはり本心。
自分の感情を人にぶつけるということがほとんどない、薫ですが、最後に父にぶつけた思い。
うーん、文学ですね!

さて、それにしても、最大の謎がなぜあの父ちゃんに、あんなきれいな奥さんなのか。そして、あんなきれいな愛人なのか。人生は謎だ。

2007/日本/94分
監督:根岸吉太郎
出演:竹内結子、古田新太、松本花奈、ミムラ、