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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

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2018年12月15日 | 映画(か行)

不気味さに圧倒される

 

* * * * * * * * * *


ホラー作品。
一人で見るにはちょっと勇気が必要でしたが、意外とそれほどコワイという感じではない。
むしろザワザワするというか、不気味さに圧倒されます。

秀樹(妻夫木聡)と香菜(黒木華)は、結婚式を終え、幸せな新婚生活を迎えます。
やがて女の子が生まれ、秀樹はイクメンパパとして、子育ての様子をブログで発信。
しかし次第に香菜が沈んだ様子を見せ始めます。
そして、秀樹の周囲で不可解な出来事が次々と起こり始めます。
不安を感じた秀樹は知人からオカルトライター野崎(岡田准一)と
霊感の強い真琴(小松菜奈)を紹介してもらいます。
得体の知れない強大な力を感じた真琴は
更に国内随一の霊媒師の姉・琴子(松たか子)に連絡を取りますが・・・。

常の物語ならば主要人物、特に女性は死なないものなのですが、
本作、そんなお約束はあっさりと裏切られます。
何か得体の知れない強大で邪悪なものが「来る」。
それは作中で最後まで明確な姿を表しませんし、
一体それが何者で、どんな由来でどこからやって来るのかも明かされないままです。
でも私は、本作はそれで成功していると思います。
よくあるホラー物では、終盤で不気味な何かがその姿を表してしまった途端、
滑稽味を感じたり白けたりしてしまうものです。
例えば、突然起こる災害や事故。
神の思惑か悪魔の仕業か、とにかく理不尽にもある日突然私達のもとにやってきます。
そうした強大な邪悪な力には、本来姿形などないのかもしれません。


本作においては「子供」を虐げるものに何かが襲いかかってくる、
大まかにはそういうテーマになっているように思います。


はたから見れば、子煩悩で、子供大好き、素晴らしく幸せな家庭を築きあげているよう見える秀樹。
でも彼にとってはそこにいる妻子よりもブログのほうが大事のようです。
そんな空気を感じ取り、また自らの母親から放置されて育った身の上故か、
子供に愛情を感じられない香菜。
一方、野崎もかつての恋人との間の出来事がトラウマになっており・・・。



それぞれが抱いている仄暗い思い。
だけれども、こんなこと世間にはいくらでもあり溢れているような気がします。
どう考えても彼らがこんな恐ろしい目に逢ういわれはないように思える。
つまり「あれ」が彼らに目をつけたのは、ほんのたまたまか偶然か・・・
そんなふうでもありますね。
そういう理不尽さがまた、コワイということか。

終盤の祈祷のシーンが凄かった。
松たか子さんの異様なオーラ。
仰々しい祈祷シーンは下手をすれば笑ってしまうようなものにもなりかねないと思うのですが、
ここではその迫力に息を呑むばかり。
神にでも仏にでも私も一緒にお祈りしたくなりましたよ・・・。
皮膚感覚でザワザワとしてしまう・・・
そういう意味で面白い作品です。

<シネマフロンティアにて>
「来る」
2018年/日本/134分
監督:中島哲也
原作:澤村伊智
出演:岡田准一、黒木華、妻夫木聡、小松菜奈、松たか子、青木崇高、柴田理恵

不気味さ★★★★★
理不尽さ★★★★☆
満足度★★★★☆