すべての結婚は異類婚・・・?
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異類婚姻譚 (講談社文庫) |
本谷 有希子 | |
講談社 |
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子供もなく定職にもつかず、ただ安楽な結婚生活を送る主婦の私はある日、
いつの間にか互いの輪郭が混じりあって、
自分の顔が夫の顔とそっくりになっていることに気付く…。
夫婦という形式への強烈な違和を軽妙洒脱に描いた表題作で第154回芥川賞受賞!
自由奔放な想像力で日常を異化する中短編4作を収録。
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芥川賞受賞作ですね。
本谷有希子さん。
これまで読んだことはないなあ・・・、
しかしなんとあの映画「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」の原作者だったんですね。
本巻には表題作を含め中短編4作が収められています。
表題作「異類婚姻譚」
子供もいない専業主婦の私。
いつの間にか自分の顔が夫の顔とそっくりになっていることに気づく。
似た者夫婦とはよく言うけれど・・・。
でも本作はそこにとどまらず、家にいる夫はひたすらだらりんとして無気力。
それに連れて夫の顔もしだいに崩れていく・・・。
外向きには瞬時に元通りの顔になるのだけれど、
家にいて妻と二人だけの夫の顔はもはや原型を留めないくらいに崩れ果ててゆく・・・。
そうすると、妻の顔もまた同じようにだらしなく崩れていく・・・。
夫がついに会社にも行かなくなったある日、彼は言う
「俺もサンちゃんもこれっぽっちも大事なことに向き合いたくなんかないのよ。」
二人そっくりになってしまうことに危惧を覚えていた妻は、
夫の言葉に圧倒され、いっそ同化てしまってもいいのかと思い始める。
だがしかし・・・。
自分のなりたいものに成り果ててしまう夫。
日常の裂け目の中にふいに落ち込み、異界に迷い込みそうになる主婦。
無人の場所で"犬たち"と暮らす女。
自分で望んだ"藁の夫"と結婚をした主婦。
考えてみれは結婚はすべて「異類婚」なのかもしれません。
自分とは全く違う「個」と共に生活するようになること。
必ず違和感はあるし、違和感を埋めるために同化することもあれば、
違和感のまま破局することもあります。
むしろはじめから「藁の夫」と知っているならそのほうがマシなのかもと思ったりもする。
男性側からすれば、紙の妻だのハリネズミの妻だのもあったりするのでしょうね・・・。
「異類婚姻譚」本谷有希子 講談社文庫
満足度★★★★☆