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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「冷血 上」高村薫

2018年12月04日 | 本(ミステリ)

家族4人殺害事件の始まり

冷血(上) (新潮文庫)
髙村 薫
新潮社

* * * * * * * * * *

クリスマスイヴの朝、午前九時。
歯科医一家殺害の第一報。
警視庁捜査一課の合田雄一郎は、北区の現場に臨場する。
容疑者として浮上してきたのは、井上克美と戸田吉生。
彼らは一体何者なのか。その関係性とは?
高梨亨、優子、歩、渉―なぜ、罪なき四人は生を奪われなければならなかったのか。
社会の暗渠を流れる中で軌跡を交え、罪を重ねた男ふたり。
合田は新たなる荒野に足を踏み入れる。

* * * * * * * * * *

高村薫さんの合田雄一郎シリーズ、私には久しぶりです。
私が読んでいない間に実は「太陽を曳く馬」というのも出ていて、
いつの間にやら合田さんは係長になっていました。


本作上巻は、まず二人の男が出会い、ATM襲撃やらコンビニ強盗を行い、
ついにはある歯科医の家に盗みに入ろうとするところまでが描かれます。
そこで起こる残虐な一家四人殺害のシーンはここではなし。
しかしこの一家の日常の様子が合間に描写されていて、
事件の被害者への読者の思い入れを作るところにも成功しています。
特に13歳少女・歩のみずみずしい感情がつかの間、
虚無感に囚われた二人の青年の描写の仄暗さから私達を開放してくれました。
しかし、そんな気持ちはバッサリと裏切られてしまいます。
クリスマスイヴの朝、閑静な住宅地で一家四人が殺害されているのが発見される。
そこでようやく合田雄一郎登場。


係長である彼はこれまでのように自らの足を運んで聞き取り捜査などはしない。
ほとんどは本部で、様々なところから上がってくる調査資料を精査したり、
捜査の人員配置を決定したり、スケジュールを組んだり、
検察側との連絡調整をしたり・・・と、総務的な役割を負っています。
そこで地道な捜査が実って、ついには犯人と思しき二人を逮捕。


あらら、普通はここでストーリーは終わりになりませんか。
しかしあくまでも上巻の終わりで、一体あと半分の下巻で何が語られるのだろう・・・?
いぶかしさ半分、期待半分というところで、下巻へ突入します!!


それにしても、歯痛を我慢するのってホントに辛いと思う・・・。
他のことがどうでも良くなってしまうというのがわかる気もします・・・。

図書館蔵書にて(単行本にて)・・・文庫本も発売されたばかりです!
「冷血 上」高村薫 毎日新聞社
満足度★★★.5