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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「九十九藤」西條奈加

2018年12月14日 | 本(その他)

江戸の人材派遣業とは・・・?

九十九藤 (つづらふじ) (集英社文庫)
西條 奈加
集英社

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江戸の人材派遣業、口入屋。
縁あってその女主人となったお藤だったが、武家相手の商売は行き詰まっていた。
店を立て直すため、お藤が打って出た一世一代の大勝負は、
周囲の反発を呼び、江戸を揺るがす事態に発展。
さらに、かつての命の恩人によく似た男と出会い、心は揺れ…。
商いは人で決まる―
揺るぎない信条を掲げ、己と仲間を信じて人生を切り開くお藤の姿が胸を打つ、長編時代小説。

* * * * * * * * * *

久しぶりに西條奈加さんの時代小説。
江戸が舞台ではあるけれど、現代の女性の生き方を歌っているように思います。
というのも本作に登場するお藤は、
いろいろな紆余曲折と、なんとも心強い後ろ盾のおかげで、口入屋の差配となります。
口入屋というのは今で言う人材派遣会社のようなもの。
ただし、なんとなく私が最初に抱いたイメージとは違って、
武家に中間を派遣するというのが主な業務。
武家と言っても内情は厳しく、警護役やら参勤交代要員など、常に多くの人員を確保するだけの余裕がない。
そのため本当に必要なときにだけアルバイト要員を雇うと、そんなことらしいです。
なるほどねえ・・・、言われてみれば納得。
で、中間というと、私がこれまでテレビドラマや映画で見てきたのは
いかにも腰の低い下働きのおじさん・・・というイメージだったのですが、
主には警護役ということで、体が大きく無骨な者たち、時にはならず者っぽいところも・・・
というあらっぽい姿が、本作に登場する中間たちです。


お藤はもうそのような荒くれ者を相手にするのは止めにして、
商家を対象とした下働き要員の派遣を始めようと思います。
しかも、人材養成のところから始める。
つまりは研修ですね。
アイデアは良くて好評。
しかし、出る杭は打たれる。
周囲の反感を呼んで、やがて大変な事態に・・・。


このような、江戸で繰り広げられる起業の物語というのがずいぶん面白かったのですが、
なんと本作、ラブストーリーまでもが絡めてあって、一冊で二度美味しい本なのでした。
リアリティ的にはやや疑問もあるところながら、言ってみれば女性の自立の物語。
そう割り切れば悪くはありません。

「九十九藤」西條奈加 集英社文庫
満足度★★★.5