映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ガンジスに還る

2018年12月22日 | 映画(か行)

親子3代の自分らしさ

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インド作品ですが、ダンスシーンはなし!

不思議な夢を見て自らの死期を悟った父・ダヤは、
ガンジス川の畔の聖地バラナシに行くと家族に宣言します。
家族の反対にも聞く耳を持ちません。
やむなく息子ラジーヴが付き添うことになり、二人はバラナシの「解脱の家」にやってきました。

「解脱の家」というのは安らかな死を求める人々が集う施設。
ここでは解脱=死で、おめでたいこととされるのです。
滞在は解脱しようとしまいと15日間まで、と施設からは言われてしまいますが、
ラジーヴから見た父はそんなに早く死ぬようには思えない。
仕事を投げ出して来ているラジーヴは、
いつまでいなければならないかもわからない状況に苛立ちを隠せません。
・・・それでもしばらく滞在し、お互いに正面から向き合うことで
次第に二人の心は打ち解けていきますが・・・。

この間に、ダヤの孫(ラジーヴの娘)が、決まっていた結婚をやめて、
大学に行くと言い出します。
ラジーヴは激怒しますが、ダヤは思うようにすればいいというだけです。
ここに登場する3代の人物たちは
それぞれにインドのある時代を代表するマインドの持ち主なのだろうと思い当たりました。



これまでのインドの伝統を引き継いできたダヤは、
せめて死ぬ時は自分の生まれ育った文化の中で死にたいと思ったのかもしれません。
大切なインドが育んできた宗教・思想・伝統の中で。
それこそが自分らしさだと、彼は知っていた。


一方、孫娘は生まれたときから近代化されたインドにいます。
祖父が自分なりの在り方を貫こうとしているのを見て、
彼女も気持ちが変わったのではないでしょうか。
今を生きている自分は、風習に則って早く結婚するよりも、自立する道を歩みたい、と。


そこで厄介なのは、過渡期、どっちつかずのラジーヴなんですね。
伝統を重んじようとする父、近代化の波に従おうとする娘、
どちらにも納得ができない。
けれども結局は、それが父らしさであり、娘らしさなのだと納得していく
という物語なのではないかと思いました。

まさに今のインドを知ることができる、素敵な作品です。
日本が歩んできた道も、同じですけれど。

<ディノスシネマズにて>
「ガンジスに還る」
2016年/インド/99分
監督:シュバシシュ・ブティヤニ
出演:アディル・フセイン、ラリット・ベヘル、ギータンジャリ・クルカル、パロミ・ゴーシュ、ナブニンドラ・ベヘル

インドの今を見る度★★★★★
家族愛度★★★★☆
満足度★★★★☆