映画と本の『たんぽぽ館』

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Merry Christmas! ロンドンに奇跡を起こした男

2018年12月07日 | 映画(ま行)

世界中に愛される「クリスマス・キャロル」誕生秘話

 

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チャールズ・ディケンズ小説「クリスマス・キャロル」の誕生秘話として映画化したもの。



1843年、ディケンズは「オリバー・ツイスト」後のヒット作を生み出すことができず、
生活も苦しくなってきていました。 
そんなある日、メイドが子どもたちにクリスマスのお話をしているのを聞いて、
クリスマスのストーリーを書こうと思い付きます。

しかし、クリスマスシーズンまでわずか6週間で書き上げなければなりません。
新作の執筆に没頭するディケンズは、物語の世界にはまり込み、
現実と幻想の境界が曖昧になってきます。
それでも、いよいよ最終章というところで行き詰まってしまい・・・。



クリスマスのお祝いは、今ではその意義こそは失われつつありますが、
この日本でさえも形だけはしっかりと定着していますね。
でもおよそ150年前を描く本作中で、こんな台詞がありましたよ。
「今どきクリスマスなんて誰も祝わない」
意外にもこの時代、クリスマスはほとんど忘れられかけた田舎臭い行事だったようなのです。
ところが、ディケンズのこの「クリスマス・キャロル」の大ヒットにより、
聖夜に家族が集まり贈り物を交換し、お互いの幸せを祈るという、
今のようなお祝いの形が広まり、定着するようになったということのようです。
もちろん当時も、商業主義に乗せられたという事情はありそうですが・・・。



さて、本作。
物語を書くときには、作家は自身の心の奥深くに降りていくものです。
ディケンズもまた、本作中で実は覗き込みたくないものを見てしまうのです。
彼がまだ幼い頃に、借金のため投獄されてしまった父親のこと。
そのため、彼は貧しく辛く嫌な思いをさんざん味わったこと・・・。
だから彼はどうしても父のことを好きにはなれないでいる・・・。
つまりは、「クリスマス・キャロル」に登場するスクルージはディケンズの影なんですね。
そんな彼の葛藤が、世界中に愛される作品を作り上げていく。
作中の人物たちがディケンズの現実世界に見え隠れする、というのがユニークでした。
クリスマスに向けて、見てみるのも一興。



<ディノスシネマズにて>
「Merry Christmas! ロンドンに奇跡を起こした男」
2017年/アメリカ/104分
監督:バハラット・ナルルーリ
出演:ダン・スティーブンス、クリストファー・プラマー、ジョナサン・プライス、モーフィッド・クラーク
心の葛藤度★★★★☆
満足度★★★.5