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MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『先輩と彼女』

2015-10-21 00:13:31 | goo映画レビュー

原題:『先輩と彼女』
監督:池田千尋
脚本:和田清人
出演:芳根京子/志尊淳/小島梨里杏/戸塚純貴/水谷果穂/渡辺真起子
2015年/日本

花火とチュッパチャプスをつなげる才能について

 少女漫画を原作とした映画は多々あれど、本作は他のラブコメ映画とは決定的に違う。例えば、主人公の都築りかの憧れの先輩である美野原圭吾と花火を観に行った時、その「みの先輩」に杏子飴を買ってもらうのであるが、口にする前に落としてしまい、そんな時、みの先輩が好きな女性である卒業生の沖田葵が泣きながら2人のそばを通りすぎて、彼女を放っておくことができないみの先輩は葵と一緒に先に帰ってしまうのである。残されたりかの上で炸裂する花火のアップの次のカットは翌日の学校で、登校してきたりかの上からみの先輩と友人の矢田哲雄がお詫びとして大量のチュッパチャプスを降らせるのであるが、それはまるで一本の杏子飴から夢を見始めたりかの頭の上で幻想を伴った花火が夜空で散った後にチュッパチャプスと化してりかの頭の上に振ってきて、その「甘さ」がりかに現実を思い知らせるという意図があるように見える。
 そこまで凝っていなくても、例えば、りかたちが所属している現代文化調査研究部で飼っている猫のタマの額に舞い落ちる桜の花びらがくっつく冒頭のシーンや、りかとみの先輩が一緒にボートに乗っている時に、眠っている先輩を見下ろす際の、背景の青空の中央に映るアップの芳根京子の顔など監督の演出の冴えを感じるのである。
 芳根京子の好演も相俟って、映画作品としてのクオリティーは大ヒットしている『ヒロイン失格』(英勉監督 2015年)よりも高いと思うが、何故かそのような映像を撮った撮影者の名前が分からない。


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『マイ・インターン』

2015-10-20 00:02:52 | goo映画レビュー

原題:『The Intern』
監督:ナンシー・マイヤーズ
脚本:ナンシー・マイヤーズ
撮影:スティーヴン・ゴールドブラット
出演:アン・ハサウェイ/ロバート・デ・ニーロ/レネ・ルッソ/アダム・デヴァイン
2015年/アメリカ

シニア層の観客を取り込む方法について

 主人公で自らファッションサイトを立ち上げて大成功しているジュールズ・オスティンが酒の力を借りて最近は良い男がいなくなり、昔はジャック・ニコルソンやハリソン・フォードがいたなどと言うのである。ニコルソンとデ・ニーロを「アメリカン・ニューシネマ」の中で観ている者としては、いやいや、ハリソン・フォードの前にロバート・デ・ニーロがいるでしょう、というツッコミを入れたい衝動に駆られるが、意外なことにフォードの方がデ・ニーロよりも1歳上なのであり、年齢の順番としては間違っていないのである。
 その主人公を演じているアン・ハサウェイは綾瀬はるかと天海祐希を足したような感じになっていて、要するに日本においては完璧な女優である。自分をデ・ニーロに置き換えて一抹の希望を胸に観賞している高齢者が続出しているそうである。
 唐突にジュールズとベン・ホイッテカーの間で「サヨナラ」という言葉が飛び出して、どうしてなのか考えていたら作品冒頭とラストでベンが太極拳をしていることが理由のように思える。まだまだ日本と中国の違いが西洋人には分からないらしい。


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『GAMBA ガンバと仲間たち』

2015-10-19 22:06:16 | goo映画レビュー

原題:『GAMBA ガンバと仲間たち』
監督:河村友宏/小森啓裕
脚本:古沢良太
出演:梶裕貴/神田沙也加/高木渉/矢島晶子/高戸靖広/藤原啓治/大塚明夫/野沢雅子/野村萬斎
2015年/日本

「友情」「努力」「勝利」のつまらなさについて

 主人公で町ネズミのガンバがワインのラベルを見て海の存在を知るところは『進撃の巨人』(樋口真嗣監督 2015年)と似ているが、そんな町ネズミが船乗りネズミのボスのヨイショと差しで戦うことになり、圧倒的に不利な状況の中でヨイショの足にしがみ付くことでヨイショを倒し一目置かれることになる。それはクライマックスにおいて白イタチのノロイの体にガンバと仲間たち全員でしがみ付くことでノロイを倒し、さらにノロイと共に海底に沈んでいくガンバを救いにシオジが潜っていき、ガンバの手に「しがみ付き」引き上げるところまで続き、これは正に漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』が編集方針として掲げるキーワード「友情」「努力」「勝利」の3つを体現しておるのであるが、そのような物語が面白いかどうかはまた別の話なのである。
 個人的にはガンバのキャラクターデザインはテレビアニメ『ガンバの冒険』のずんぐりむっくりの方が愛嬌があると思ったが、それよりも驚いたことはエンディングテーマ「ぼくらが旅に出る理由」を倍賞千恵子がカバーしていることで、以前、小沢健二が童話のようなものを書いていたことに違和感があったのだが、これで元々そのような素質があることが分かった次第である。


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『バクマン。』

2015-10-18 00:32:38 | goo映画レビュー

原題:『バクマン。』
監督:大根仁
脚本:大根仁
撮影:宮本亘
出演:佐藤健/神木隆之介/小松菜奈/山田孝之/染谷将太/宮藤官九郎/リリー・フランキー
2015年/日本

「キーワード」を裏切るリアリティについて

 主人公の真城最高と高木秋人の2人が漫画家として関わることになる漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』が編集方針として掲げるキーワードは「友情」「努力」「勝利」の3つなのであるが、現実は、過労が祟って真城は入院するはめになり、それでも真城に作品を描かせる原動力は仲間たちよりも若き天才漫画家である新妻エイジの存在であり、結局は一度だけ読者アンケートで一位になったものの、その後は新妻の作品を超えることはなく連載が打ち切られてしまい、さらには憧れのクラスメイトだった亜豆美保にもフラれてしまい、ことごとくキーワードを裏切るリアリティが、思い切った映像表現とは裏腹に説得力をもたせていると思う。
 残念なことは大根監督と書くと「大根役者」のような意味に取られかねず、名前で損をしてしまっているところである。


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『図書館戦争 The Last Mission』

2015-10-17 00:19:28 | goo映画レビュー

原題:『図書館戦争 THE LAST MISSION』
監督:佐藤信介
脚本:野木亜紀子
撮影:河津太郎
出演:岡田准一/榮倉奈々/田中圭/福士蒼汰/松坂桃李/栗山千明/土屋太鳳/石坂浩二
2015年/日本

恋愛の「道具」と化した図書について

 『図書館戦争 革命のつばさ』(浜名孝行監督 2012年)、『図書館戦争』(佐藤信介監督 2013年)と観てきながらなかなかストーリーを理解できず、今度こそと思って本作を観てみたが、やっぱりよく分からなかった。
 作品冒頭で主人公の笠原郁が、検閲実行部隊である「メディア良化隊」の銃弾が飛び交う中を決死の覚悟で取りに行った本は『砂漠のカナ』というタイトルの子供向けの作品で、確かに子供たちは喜んで奪い合うようにして読んでいるのであるが、命を賭けてまで守るほどの本なのかどうか疑問が残る。
 後半は茨城県近代美術館で催される『芸術の祭典』で展示される『図書館法規要覧』を巡る特殊部隊タスクフォースの「図書隊」と「良化隊」の攻防がメインとなるが、表現の自由をテーマとした美術館の特別展において『図書館法規要覧』が展示されるということは既に図書館は廃止されたというメッセージのように見えてしまう。つまり少なくとも20年前に観ていたらまだリアリティーを感じることができたのかもしれない。


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『人生スイッチ』

2015-10-16 00:15:21 | goo映画レビュー

原題:『Relatos Salvajes』 英題:『Wild Tales(野蛮な話)
監督:ダミアン・ジフロン
脚本:ダミアン・ジフロン
撮影:ハビエル・フリア
出演:エリカ・リバス/レオナルド・スバラーリャ/リカルド・ダリン/フリエタ・ジルベルベルグ
2014年/アルゼンチン・スペイン

「暴力と復讐」というテーマにそぐわないラストシーンについて

 本作は暴力と復讐をテーマにした6つの短編のオムニバス作品であるが、前半の「おかえし(パステルナーク)」、「おもてなし(ネズミたち)」、「エンスト(一番の強者)」は完全に頭のおかしくなった登場人物が巻き起こす物語で、最後に自分の両親の家に飛行機を突っ込ませたパステルナークや、相手のクルマのボンネットに挙がって大便を垂れるマリオなど全く共感できないが、後半の「ヒーローになるために(爆弾魔)」、「愚息(提案)」、「HAPPY WEDDING(死が2人を分かつまで)」はまだ共感できる部分はある。しかし「HAPPY WEDDING」のラストはテーマに即して観るならばどうしても却って違和感が残り、余りにも悲惨なストーリーが続いたために最後は無理やり丸くおさめたような印象ではあるが、全体的には非常に上手くできている。


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『内村さまぁ~ず THE MOVIE エンジェル』

2015-10-15 00:23:40 | goo映画レビュー

原題:『内村さまぁ〜ず THE MOVIE エンジェル』
監督:工藤浩之
脚本:森ハヤシ/たかはC
撮影:青木芳行
出演:内村光良/三村マサカズ/大竹一樹/藤原令子/久保田悠来/笑福亭鶴瓶
2015年/日本

「パーツモデル」のお笑い芸人について

 映画の作り方は、お笑い芸人が試みるような、例えば『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』(佐久間宣行監督 2013年)の劇団ひとりのアドリブで構成させるように、本作においては三村マサカズが他のお笑い芸人のアドリブにツッコミを入れて成立させているのではあるが、『ゴッドタン』ほどの斬新さは無く、意外と普通のコメディー作品になっている。
 だからストーリーの説明はネタバレを避けるためにも書かないでおくが、お笑い芸人が映画史上最多の56人が出演しているらしい。そうなると出演していながら頭髪しか映っていないふかわりょうが一番オイシイのではないかとさえ思うが、「本体」が映っていないが故に誰にも気づかれず本当にオイシイのかどうかは分からない。


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『ブロークン・フラワーズ』

2015-10-14 00:01:08 | goo映画レビュー

原題:『Broken Flowers』
監督:ジム・ジャームッシュ
脚本:ジム・ジャームッシュ
撮影:フレデリック・エルムス
出演:ビル・マーレイ/ジュリー・デルピー/ジェフリー・ライト/シャロン・ストーン/ジェシカ・ラング
2005年/アメリカ

ワンカットの威力の違いについて

 映画批評家の蓮實重彦に言わせれば『岸辺の旅』(黒沢清監督 2015年)はゾンビのメロドラマであると同時にゾンビのロードムービーでもある。それならば本作の主人公のドン・ジョンストンが自身に身に覚えのない19歳の「隠し子」の存在が書かれた差出人不明のピンク色の手紙に端を発して、ジョンストンが過去に交際していた女性たちを訪ねる旅に出るロードムービーと比較してみるのも面白いのではないだろうか。
 ストーリーそのものはジョンストンが冴えない中年男というおかげで、真実がはっきりしないまま淡々と進行していく。誰が手紙を送りつけてきたのか分からないまま、ジョンストンは自分を訪ねてきた息子のように見えるヒッチハイクをしている青年に声をかけてサンドイッチとコーヒーを買って与えるのであるが、ジョンストンが自分の息子であるかどうか確かめようとすると青年は走って逃げてしまう。彼は本当の息子ではないから逃げたのか、あるいは恥ずかしがって逃げたのか理由がよく分からないのであるが、その青年と入れ替わるようにクルマに乗ってきた青年がジョンストンを凝視しながら行ってしまう。

 この時、ジョンストンは気づくのである。一体誰が自分の本当の息子なのか、あるいはローラ、ドーラ、カルメン、ペニーの誰が嘘をついているのであろうかという以前に、そもそもピンク色の手紙は本物なのだろうか。隣人のウィンストンか、それとも出て行った恋人のシェリーの悪戯ではないのか。つまり真実を追求すればするほど逃げていく真実は混沌としてきて訳が分からなくなってきたジョンストンはその場に立ちつくすしかないのであり、車窓の青年のワンカットだけでジョンストンのみならず、観客も「真相の迷宮」に誘い込まれてしまうのである。これは『欲望(Blowup)』(ミケランジェロ・アントニオーニ監督 1967年)と同じテーマの「変奏」である。
 第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の監督賞止まりの『岸辺の旅』と第58回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で審査員特別グランプリを獲得した本作との大きな違いはこのようなワンカットだけで観る者に与える驚きの有無なのである。ちなみに上の写真の青年を演じているのはホーマー・マーレイ(Homer Murray)でジョンストンを演じたビル・マーレイの実の息子(だと思う)を起用しているところが洒落ている。


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『岸辺の旅』

2015-10-13 23:47:43 | goo映画レビュー

原題:『岸辺の旅』
監督:黒沢清
脚本:黒沢清/宇治田隆史
撮影:芦澤明子
出演:深津絵里/浅野忠信/小松政夫/村岡希美/奥貫薫/柄本明/蒼井優
2015年/日本・フランス

「清」が「明」になれない原因について 

 『GONIN サーガ』(石井隆監督 2015年)をとりあえず一流の「B級作品」とするならば、冒頭から風によってカーテンが舞う本作は、そのような言葉があるかどうかはともかく一流の「A級作品」と言えるであろう。実際に、その後の無駄の無いカットや生のオーケストラの使い方など非の打ち所がないのであるが、技巧に勝ちすぎているのではないかということを論じる前に気になったことを書いておきたい。
 『文学界』11月号で黒沢清監督と映画批評家の蓮實重彦が「幽霊が演じるメロドラマ カンヌ受賞作『岸辺の旅』をめぐって」というお題で対談をしている。蓮實は作品の冒頭から「滂沱の涙」を流したと告白しているのであるが、それは膨大な作品を観続けてきた蓮實だからこそできる「技」であって、私のような一般人には内面を喪失しているゾンビが主人公の作品に共感して「滂沱の涙」など流せない。分かりやすく言い換えるならば本作に感動するためには『サザエさん』を見ながらオナニーが出来るくらいの鋭い感性が要求されるのである。ただ、新聞販売所を経営している島影に再会するシーンにおいて主人公の優介が瑞希を「実母です」と紹介して完全に2人にスル―されてしまったギャグがスベる場面は面白いと思った(その後、DVDで確認したら「うちの妻です」だった)。
 対談で黒沢が「恥ずかしい話、二時間を超えて(128分)しまったんですね。」と「懺悔」したことに対して、蓮實は「黒沢清監督作としてはまれにみる長さなんですよね。『アカルイミライ』(03)の日本版が一時間五十数分、それよりももう少し長い。ただし、ダレた印象は全くなく、長いとは一瞬も思いませんでした。」(p.21)と語っているのであるが、これはおかしな話である。「(前略)これは声を大にして言わなきゃいけないんだけど、一本の映画を撮るにあたって上映時間が二時間を超えてはならないというのは、踏み越えてはならない決定的な線だと思っているんです(笑)。」(『映画時評 2012-2014』講談社 2015.7.8 p.252)と述べているのだから、蓮實は教え子の黒沢を叱責しなければならないはずなのである。黒沢はそのことを知っているから「恥ずかしい話」として告白しているはずなのであるが、蓮實は「それよりももう少し長い」と言い換え2時間を超えていることを曖昧にしてしまっている。さらに蓮實が「間違っても見損なってはならぬ」(同書 p.142)と絶賛している『ニシノユキヒコの恋と冒険』(井口奈己監督 2014年)を黒沢は見損なっており、『ニシノユキヒコの恋と冒険』に関して、「贅沢な不満を書かせてもらえば、それは二時間を超える上映時間にかかわる問題だ。すべてが一一〇分で語られていたなら、もっと見ていたいという余韻を断ちきる途方もない傑作が誕生していたはずだからである。」(同書 p.144)と指摘しているのだが、『ニシノユキヒコの恋と冒険』は二時間を2分ほど超えただけで、『岸辺の旅』の8分超えに比べれば良心的であるにも関わらずこの言いざまで、それならば上映時間が2時間を超えることと作品の質は是々非々の問題でしかないではないのか。このように蓮實の批評は他人の作品には細かい点にも容赦がないのに、教え子たちの作品に対しては異常に甘く、蓮實重彦の映画批評が信用しきれない原因であり、その気分次第、観方次第の批評が災いして「清」は「明」のような大衆性を得られなかったのではないだろうか。(続く)


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『GONIN サーガ』

2015-10-12 00:17:54 | goo映画レビュー

原題:『GONIN サーガ』
監督:石井隆
脚本:石井隆
撮影:佐々木原保志/山本圭昭
出演:東出昌大/桐谷健太/安藤政信/柄本佑/土屋アンナ/竹中直人/根津甚八

死ぬに死にきれない男たちの未練がましさについて

 五誠会3代目で芸能事務所社長の式根誠司と百合香の結婚披露宴が開かれているクラブの床下には暴力団五誠会系大越組の若頭だった久松茂の息子の久松勇人、同じ大越組の組長だった大越康正の息子の大越大輔、神奈川県警の警官で19年前に起こった事件で父親を亡くしていた森澤慶一と元グラビアアイドルの菊池麻美が潜んで急襲の機会を窺っており、五誠会2代目会長の式根隆誠の登場に合わせてステージの背後のスクリーンを切り裂いて勇人が現れて銃撃戦が始まる。
 この時、注目すべきは切り裂かれたスクリーンのなびき方である。明らかに風ではなく角につけた糸を引っ張ってなびいているスクリーンを見て私たちは本作がB級作品であることに気づくべきであろう。だから屋上から落下した明神が生きていても、もちろん氷頭要も万代樹木彦でさえ生きていてもおかしいことはなく、寧ろ、一人でも多く殺すまで死ぬに死にきれない男たちの未練がましさをちあきなおみの「紅い花」と森田童子の「ラスト・ワルツ」と共に噛みしめるべきなのであろうが、それならば『GONIN』(1995年)のラストで、観光バスの後方の席に座っていた三屋純一が抱えていた骨壺らしきものは誰のものだったのだろうか?
 竹中直人を初め、テリー伊藤や土屋アンナなど何よりも眼光の鋭さを優先にキャスティングされているとしか思えない。


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