原題:『A Most Violent Year』
監督:J・C・チャンダー
脚本:J・C・チャンダー
撮影:ブラッドフォード・ヤング
出演:オスカー・アイザック/ジェシカ・チャステイン/デイヴィッド・オイェロウォ
2014年/アメリカ
鮮血と漏斗する黒いオイルと白いハンカチが蠢く世界について
1981年のニューヨークにおいてオイル業界では新参者らしい主人公のアベル・モラレスは妻のアナと設立した「スタンダード・ヒーティング・オイル会社」の地盤を固めようと全財産を投資して土地を購入するも、彼の仕事を妨害しようとする何者かによって彼の石油輸送車が襲われたり、3つの重罪を含む10以上の訴訟を起こされたりし、融資を確約していた銀行から断られ、ついにはドライバーのジュリアンが襲って来た2人の暴漢に発砲して事件を起こし、営業の新入社員も襲われ、さらにはアナが脱税していたことを知りアベルは絶体絶命に追いやられる。
それでも商売に対して誠心誠意を心掛け、決して自身にも周囲にも拳銃を所持することを許さず、犯罪に手を染めることをしないアベルは当初、全くの被害者のように見えるのであるが、営業の仕事にして欲しいというジュリアンの要望に応えることをせず、彼を窮地に追い込み、3人の新人たちには相手の目を見て時間をかけて説得するように促し、結局はアナが脱税でため込んだ資金を土地買収に使うことを決めたアベルを見ていると、彼が目指す「誠実さ(the most right thing)」は独りよがりで、アベルが手を汚さない分、周囲の人間がその代償を支払う羽目になっていることが分かり、だんだんとアベル・モラレスがマイケル・コルレオーネに見えてくる。