原題:『リターナー(Returner)』
監督:山崎貴
脚本:山崎貴/平田研也
撮影:柴崎幸三/佐光朗
出演:金城武/鈴木杏/岸谷五朗/樹木希林/高橋昌也/岡元夕起子
2002年/日本
演出の拙さをカバーする多大な「引用」について
山崎貴監督が得意とするVFXを駆使した映像表現の上手さは改めて言うまでもなく、『E.T.』(スティーヴン・スピルバーグ監督 1982年)や『マトリックス』(ウォシャウスキー兄弟 1999年)などのSF作品を「引用」しながら、主人公のミヤモトとミリの、それぞれ友人と弟を亡くした過去をダブらせるストーリー構成は悪くはないのであるが、思ったほど感動しない。
それは例えば、周囲にバレないように職員を人質にとってミヤモトとミリが宇宙開発研究所に侵入し、その職員を縛ってミリがカメラ目線で職員に「ごめんね、おじさん」と言い(写真左)、この場合、次のカットは職員の顔のアップでなければならないのだが、何故かカメラはそのまま右にパンしてしまい、縛られている職員を映し出す(写真右)。これではミリは観客に語りかけているように見えてしまい、演出として失敗してしまっているのであるが、もしも監督自身が演出の拙さを自覚しており、作品の中程で退屈しているであろうおじさんの観客に向かって鈴木杏に「ごめんね、おじさん」と言わせているのだとしたら、なかなか斬新な演出ではある。