原題:『Captives』
監督:アトム・エゴヤン
脚本:アトム・エゴヤン/デヴィッド・フレイザー
撮影:ポール・サロッシー
出演:ライアン・レイノルズ/ミレイユ・イーノス/スコット・スピードマン/ロザリオ・ドーソン
2014年/カナダ
少女の「物語」に捕らわれている人々について
作品の冒頭、雪原が映り、カメラが左にゆっくりとパンして止まると粉雪が舞い上がるシーンが素晴らしいのであるが、物語そのものは賛否両論というよりも否の方が圧倒的に多い。ここで考えなければならないことは原題の「Captives」の意味である。とりあえず「捕らわれた人々」と訳せるタイトルが指している相手は主人公のマシュー・レインの愛娘であるカサンドラ・レインのことであることは誰にでも分かるであろうし、複数形になっている理由も同じように誘拐されている子供たちの存在をほのめかしているはずである。
ところが錯綜した時系列からやがて判明することは、主犯のミカやアシスタントのヴィッキーが「少女の物語」に「捕らわれている」という事実であり、だからクルマの中で暮らしていたというニコール・ダンロップ捜査官の不幸な幼少時代の「物語」に興奮したミカはニコールを拉致し、さらには彼らと一緒に暮らしていたカサンドラも8年振りに出会った父親のマシューに靴ひもが一変したことと関連させて「トリック(trick)」と「ギミック(gimmick)」の違いを問うなど理解しがたい「物語」を語るのである。
だから本作で問題となることはミカのような特異な「性癖」を説得力を伴って描くことができるのかどうかなのであるが、チャレンジは評価するものの結果は微妙である。