原題:『先輩と彼女』
監督:池田千尋
脚本:和田清人
出演:芳根京子/志尊淳/小島梨里杏/戸塚純貴/水谷果穂/渡辺真起子
2015年/日本
花火とチュッパチャプスをつなげる才能について
少女漫画を原作とした映画は多々あれど、本作は他のラブコメ映画とは決定的に違う。例えば、主人公の都築りかの憧れの先輩である美野原圭吾と花火を観に行った時、その「みの先輩」に杏子飴を買ってもらうのであるが、口にする前に落としてしまい、そんな時、みの先輩が好きな女性である卒業生の沖田葵が泣きながら2人のそばを通りすぎて、彼女を放っておくことができないみの先輩は葵と一緒に先に帰ってしまうのである。残されたりかの上で炸裂する花火のアップの次のカットは翌日の学校で、登校してきたりかの上からみの先輩と友人の矢田哲雄がお詫びとして大量のチュッパチャプスを降らせるのであるが、それはまるで一本の杏子飴から夢を見始めたりかの頭の上で幻想を伴った花火が夜空で散った後にチュッパチャプスと化してりかの頭の上に振ってきて、その「甘さ」がりかに現実を思い知らせるという意図があるように見える。
そこまで凝っていなくても、例えば、りかたちが所属している現代文化調査研究部で飼っている猫のタマの額に舞い落ちる桜の花びらがくっつく冒頭のシーンや、りかとみの先輩が一緒にボートに乗っている時に、眠っている先輩を見下ろす際の、背景の青空の中央に映るアップの芳根京子の顔など監督の演出の冴えを感じるのである。
芳根京子の好演も相俟って、映画作品としてのクオリティーは大ヒットしている『ヒロイン失格』(英勉監督 2015年)よりも高いと思うが、何故かそのような映像を撮った撮影者の名前が分からない。