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聖地巡礼-バイクライディングin北海道-
ステア特性と補正6 低速での切れ込み(続)

写真はモトGPオフィシャルサイトより。モテギでのクリス・バーミューレンと、ケーシー・ストーナー。二人の上体の使い方の違いに注目。この写真のコーナーではスズキの方が回頭性がいいのではないだろうか。ストーナーは上体全部をイン側後輪よりにできるだけ位置させているがバーミューレンの頭部はステアリングヘッドの上にある。GP選手の繊細で大胆な上体による荷重コントロールはそのままコピーしても無意味だが、ライディングのヒントに満ちている。
低速での切れ込み対策、その続きです。
症状3の対策についてです。症状3とは、
では、参りましょう。
★対策5 上体の位置を変え、ハンドリングを補正していく。
対策1~4をすべて行ったうえでも、低速でのハンドルの切れ込みがすべての場合にゼロになるわけではありません。
また、同じバイクでも、その状況毎に違った挙動を示すのは当然ですし、二つとして全く同じコーナーはないのですから、バイクの挙動が常に違うのは、いわば当然なのです。
後に項を改めて述べますが、バイクのリーンの仕方次第でも、オーバーステアやアンダーステアが出たり、弱まったりします。
コーナーの進入から旋回、脱出まで、場面が変わるとステア特性も変わっているのです。
そうしたステア特性の変化を、乗り手の姿勢の変化で相殺する―つまり、ステアと特性を補正していく方法論の一つを今日はお話します。
具体的に、例えば左の回りこんだカーブ。
減速からバンクして旋回状態に落ち着き、定速で回っていく状態になっているのに、ハンドルが左に切れ込んでくる。
すでにバンクも安定しているのですから、ここはフロントは変な主張をせずにニュートラルにただ転がっていてほしい場面です。
ここでアクセルを開き、加速状態にして荷重をリヤに移せば、切れ込みはかなり消えるはずです。
しかし、毎回そんなふうに加速していく状態を作れるとも限りませんし、なにしろ定常円旋回ではちゃんとバランスするのが本来なのですから、なんとか切れ込みが消えるバランスを探したいものですよね。
ニーグリップを決めても切れ込みが消えない場合、上体の位置をいろいろに変えてみることで切れ込みが軽減するポイントを探すことができるはずです。

〈切れ込みに対して、車体を立てる対処(右)と、身体を立てる対処(左)がある。〉
ハンドルが切れ込むということは、カーブに対してバンクしすぎているのかもしれません。
ニーグリップをしっかりしても切れ込みが消えないときには、そのまま車体を少し立てて見るのも一つの手ですね。
するとライダーの上体が内側に入り、バイクを比較的立てたリーンインのフォームになりますね。
傾けて曲がる力(キャンバースラスト)を減少させた分、舵角で曲がる力の比重が高くなるわけで、そうするとさっき切れ込みと感じた舵角が、有効で自然な舵角に近づく、というわけですね。
これは上体だけをイン側に入れる場合もありますし、着座位置自体を若干イン側に直すことで行うこともできます。お尻をずらす目途はだいたいリヤタイヤの幅を考えて、そのエッジの上に体の重心が来る程度。最近のタイヤは幅が15cm~20㎝くらいありますから、握りこぶし一つ分くらいずらすことになります。
これは以前の記事に書いた、「最近の太いタイヤでは、若干内側に座った方が本来のリーンウィズのバランスになる」ということなんですが(詳しくはこちらを御参照下さい)、旋回時の無理や無駄を省いて、乗っていて自然な感覚が得られるようにしようと思うと、ライダーが動いた方がいい場合もあるんですね。
さて、上体の位置を変えることで、もう一つ有効なのが、意外なことに、今とは全く逆に上体を起こしてリーンアウトにしてしまうという手なんです。
これは、車体をリーンウィズのバランスよりも倒しこんで旋回半径を小さくして小回りしてしまおうという極低速時のリーンアウトとは違いますので、試すときにはちょっと注意が必要です。
ポイントは、バイクのバンク角はそのままで。上体を外側に逃がして旋回力を弱めてやる、ということです。
コーナリング中に旋回力を弱めるなんて、普通はしないのですが、重心位置をちょっと外側へ運ぶことによってフロントの切れ込みに対する復元力を強めてやる…、結果、切れ込みを軽減させてフロントタイヤにかかるストレスを減らす、というのが狙いです。
本来はこんなふうなことはしません。あくまでバランスが崩れているときの補正用の技術です。例えばタイヤの磨耗、空気圧の減少などで、ハンドリングが本来のバランスを崩すときがあります。そんなときに切れ込みの違和感を軽減するための対症療法に過ぎないことを覚えておく必要があります。
まあ、理屈でいろいろ言うよりも、バイクの上で実際に少しずつ上体の位置を変えてみて、ハンドリングが自然に感じる位置を探してみる。上体の預け方によってバイクのハンドリングが微妙に変化すること、つまり、ライダーの体重の預け方次第でバイクの旋回中のステア特性もコントロールできることを実感することに意義があると思います。


(ロサイルサーキット、ナイトセッションでのメルコ・メランドリとバレンティーノ・ロッシ。出典は、モトGPオフィシャルサイト。高速コーナーで二人とも体のオフセットは小さく、タイヤを「縦につぶして」コーナリングしていく。上体位置がバイクのハンドリングの違いと、二人の戦略の違いを物語る。この写真では、マルコのカワサキの方がフロントに負荷をかけたコーナリングに見える。もちろん切れ込みの補正などとは縁遠い世界の、しかしハンドリングの調整としては本質的には同じの、上体を使ったバランスコントロール。)
その他、
着座位置を思い切り前にすると、切れ込みが軽くなることもあります。
これもその状態のままフルバンクに持ち込もうとするとさすがにフロントの仕事量が多すぎてスリップダウンの危険も増えてきますから、ほどほどにしつつ試してみてください。
時速30㎞程度の低速域以外では、お薦めしない方法です。
逆に10~15Rくらいのヘヤピンカーブなどでは、この前に座って余りバンクさせずにゆっくり回るコーナリングが、安心感があっていい場合もあると思います。
とても半径が小さいコーナーは、「コーナリング!」の気持ちでいくよりも、街角の左折の長いバージョンや、Uターンの少しだけ半径が大きくて楽なバージョンくらいの気持ちに切り替えて、完全に速度を殺してくるくるとゆっくり通過する、そんな気持ちの方が、峠道全体としては楽しめるのではないでしょうか。
ただし、定常円旋回でどうしてもニュートラルが出ないのは、乗り方でこじっているかバイクのバランスが崩れているかのどちらかです。
タイヤの空気圧や磨耗でもバランスは崩れますので、チェックしておくことが必要でしょう。
(「ライテク記事 インデックスⅡ」へ。)
(「ライテク記事 インデックスⅠ」へ。)
(ブログトップページへ。)
低速での切れ込み対策、その続きです。
症状3の対策についてです。症状3とは、
【3】回りこんだ長いカーブをゆっくり走りぬけようとするときに、フロントタイヤが内側に切れ込んでくる感じで、切れ込まないようにハンドルを内側から押し続けていないといけない。ということでした。対策1~4まで、基本的なことについては前回の記事に書きましたので、今回は「上体の位置を変え、ハンドリングを補正していく。」についてです。
では、参りましょう。
★対策5 上体の位置を変え、ハンドリングを補正していく。
対策1~4をすべて行ったうえでも、低速でのハンドルの切れ込みがすべての場合にゼロになるわけではありません。
また、同じバイクでも、その状況毎に違った挙動を示すのは当然ですし、二つとして全く同じコーナーはないのですから、バイクの挙動が常に違うのは、いわば当然なのです。
後に項を改めて述べますが、バイクのリーンの仕方次第でも、オーバーステアやアンダーステアが出たり、弱まったりします。
コーナーの進入から旋回、脱出まで、場面が変わるとステア特性も変わっているのです。
そうしたステア特性の変化を、乗り手の姿勢の変化で相殺する―つまり、ステアと特性を補正していく方法論の一つを今日はお話します。
具体的に、例えば左の回りこんだカーブ。
減速からバンクして旋回状態に落ち着き、定速で回っていく状態になっているのに、ハンドルが左に切れ込んでくる。
すでにバンクも安定しているのですから、ここはフロントは変な主張をせずにニュートラルにただ転がっていてほしい場面です。
ここでアクセルを開き、加速状態にして荷重をリヤに移せば、切れ込みはかなり消えるはずです。
しかし、毎回そんなふうに加速していく状態を作れるとも限りませんし、なにしろ定常円旋回ではちゃんとバランスするのが本来なのですから、なんとか切れ込みが消えるバランスを探したいものですよね。
ニーグリップを決めても切れ込みが消えない場合、上体の位置をいろいろに変えてみることで切れ込みが軽減するポイントを探すことができるはずです。

〈切れ込みに対して、車体を立てる対処(右)と、身体を立てる対処(左)がある。〉
ハンドルが切れ込むということは、カーブに対してバンクしすぎているのかもしれません。
ニーグリップをしっかりしても切れ込みが消えないときには、そのまま車体を少し立てて見るのも一つの手ですね。
するとライダーの上体が内側に入り、バイクを比較的立てたリーンインのフォームになりますね。
傾けて曲がる力(キャンバースラスト)を減少させた分、舵角で曲がる力の比重が高くなるわけで、そうするとさっき切れ込みと感じた舵角が、有効で自然な舵角に近づく、というわけですね。
これは上体だけをイン側に入れる場合もありますし、着座位置自体を若干イン側に直すことで行うこともできます。お尻をずらす目途はだいたいリヤタイヤの幅を考えて、そのエッジの上に体の重心が来る程度。最近のタイヤは幅が15cm~20㎝くらいありますから、握りこぶし一つ分くらいずらすことになります。
これは以前の記事に書いた、「最近の太いタイヤでは、若干内側に座った方が本来のリーンウィズのバランスになる」ということなんですが(詳しくはこちらを御参照下さい)、旋回時の無理や無駄を省いて、乗っていて自然な感覚が得られるようにしようと思うと、ライダーが動いた方がいい場合もあるんですね。
さて、上体の位置を変えることで、もう一つ有効なのが、意外なことに、今とは全く逆に上体を起こしてリーンアウトにしてしまうという手なんです。
これは、車体をリーンウィズのバランスよりも倒しこんで旋回半径を小さくして小回りしてしまおうという極低速時のリーンアウトとは違いますので、試すときにはちょっと注意が必要です。
ポイントは、バイクのバンク角はそのままで。上体を外側に逃がして旋回力を弱めてやる、ということです。
コーナリング中に旋回力を弱めるなんて、普通はしないのですが、重心位置をちょっと外側へ運ぶことによってフロントの切れ込みに対する復元力を強めてやる…、結果、切れ込みを軽減させてフロントタイヤにかかるストレスを減らす、というのが狙いです。
本来はこんなふうなことはしません。あくまでバランスが崩れているときの補正用の技術です。例えばタイヤの磨耗、空気圧の減少などで、ハンドリングが本来のバランスを崩すときがあります。そんなときに切れ込みの違和感を軽減するための対症療法に過ぎないことを覚えておく必要があります。
まあ、理屈でいろいろ言うよりも、バイクの上で実際に少しずつ上体の位置を変えてみて、ハンドリングが自然に感じる位置を探してみる。上体の預け方によってバイクのハンドリングが微妙に変化すること、つまり、ライダーの体重の預け方次第でバイクの旋回中のステア特性もコントロールできることを実感することに意義があると思います。


(ロサイルサーキット、ナイトセッションでのメルコ・メランドリとバレンティーノ・ロッシ。出典は、モトGPオフィシャルサイト。高速コーナーで二人とも体のオフセットは小さく、タイヤを「縦につぶして」コーナリングしていく。上体位置がバイクのハンドリングの違いと、二人の戦略の違いを物語る。この写真では、マルコのカワサキの方がフロントに負荷をかけたコーナリングに見える。もちろん切れ込みの補正などとは縁遠い世界の、しかしハンドリングの調整としては本質的には同じの、上体を使ったバランスコントロール。)
その他、
着座位置を思い切り前にすると、切れ込みが軽くなることもあります。
これもその状態のままフルバンクに持ち込もうとするとさすがにフロントの仕事量が多すぎてスリップダウンの危険も増えてきますから、ほどほどにしつつ試してみてください。
時速30㎞程度の低速域以外では、お薦めしない方法です。
逆に10~15Rくらいのヘヤピンカーブなどでは、この前に座って余りバンクさせずにゆっくり回るコーナリングが、安心感があっていい場合もあると思います。
とても半径が小さいコーナーは、「コーナリング!」の気持ちでいくよりも、街角の左折の長いバージョンや、Uターンの少しだけ半径が大きくて楽なバージョンくらいの気持ちに切り替えて、完全に速度を殺してくるくるとゆっくり通過する、そんな気持ちの方が、峠道全体としては楽しめるのではないでしょうか。
ただし、定常円旋回でどうしてもニュートラルが出ないのは、乗り方でこじっているかバイクのバランスが崩れているかのどちらかです。
タイヤの空気圧や磨耗でもバランスは崩れますので、チェックしておくことが必要でしょう。
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