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聖地巡礼-バイクライディングin北海道-
タイヤとコーナリング<8>バイアスVSラジアル

(写真はgoo自動車&バイク バイク試乗レポート MVアグスタブルターレ フォトギャラリーより。)
さて、ここまでバイアスタイヤとラジアルタイヤの構造の違い、また、タイヤが発生する旋回力、特に「コーナリングフォース」におけるラジアルタイヤの優位性などをお話してきました。いかがでしたか?
いやあ、なんだか難しかったなあ。
でも、前回のお話だと、コーナリングに関しては、断然ラジアルの方が高性能だと言えそうですね。
それは間違いなくそうですね。
サイドウォールを短くしなやかに作れるラジアルタイヤは、コーナリングフォースを設計段階からコントロールしやすいように作られています。
ただ速くて限界が高いだけじゃなく、安全性にも寄与できるんです。
と、いいますと?
同じ速度でコーナリングしているとしても、ラジアルタイヤの方がコーナリングフォースを活かしやすい、ということは、バンクによるキャンバースラストに頼らなくていいことになります。例えばバイアスタイヤがキャンバースラスト7、コーナリングフォース3ぐらいの比率で走っていても、ラジアルならこれを6:4とか、場合によっては5:5くらいに出来るわけです。
すると何が起こるかと言いますと、ラジアルタイヤ装着車の方が、浅いバンク角で曲がれることになるのです。バンク角が浅いと、何かあったときの対応に有利になりますし、もうひと寝かしする余裕もあるわけで、安全上も好ましいといえますね。
じゃあ、ラジアルタイヤ、「うほうほ」ですね。
うほうほです。
新しいオンロードスポーツモデルのほとんどがラジアルタイヤを前提として設計されているのも、まさに必然といえるでしょう。
あ、でもちょっとま~った。
何ですか?ひげじい。
いやいやいや、ひげじいじゃないですから。
お便りの函崎さんの新しい愛車、モトグッツィV7クラシックは、新しいバイクなのにバイアス指定ですよ。それに今年の東京モーターショーで発表されたCB1100、あれもバイアスタイヤですよね。
V7もCBも、昔のバイアス時代へのノスタルジアだけで作られた、雰囲気バイクなんですか?樹生さん、結構誉めてたじゃないですか。

(写真URLはhttp://response.jp/article/img/2009/10/06/130442/219316.html)
「【東京モーターショー09】ホンダCB1100…コンセプトモデルを市販」
ふっふっふ…。
ただの後ろ向きバイクだとしたら、あの現実的でけちなヨーロッパユーザーの間でV7クラシックがそんなに人気が出ると思いますか?
バイアスには、バイアスのよさがあるんです。
ほほう、それは?
それは、「わかりやすさ」です。
バイアスタイヤは確かに限界点はラジアルに比べて低いですが、その分、限界が分かりやすいんです。
それはどうしてですか?
例えば、後輪が遠心力とパワーに負けてスリップする時のことを考えてみましょう。
構造上、バイアスはタイヤ全体でたわみやすく、ラジアルはサイドウォールが主にたわみを担当していて、トレッド部は硬い構造でしたね。
ラジアルはトレッ部の変形が少ないので、ゴム自体は柔らかくてグリップのいい物を使用可能です。
それはバイアスタイヤでは到底耐えられない横向きの力でもグリップし続けます。
しかし、グリップ力は無限ではないので、限界を超えて滑り出す時が来ます。
そのとき、バイアスよりも強い力に耐えていた分、グリップを失うときのエネルギー落差が大きい。つまり、一気にズバッとすべりやすいのです。
バイアスタイヤはタイヤ全体がたわんでいきますから、コーナリングフォースが高まってタイヤのたわみが過大になりだすと、一気に滑る前に徐々にパフォーマンスが落ちてきます。
このときにライダーは「そろそろこれ以上攻めては危ない」という情報を理屈でなく操作の実感として得やすいのです。
その情報伝達速度は確かにラジアルより遅く、少しボケたものとなっているのですが、それが人間の操作系の感覚と上手く合うのですね。
えっ、ちょっと待って下さい。それじゃ、ラジアルは危険だということですか?
いえ、ラジアルタイヤもいきなりブレークしてスリップダウンなんでことにならないように、その過渡特性のチューンアップは続けられています。限界点はかなり高いのですが、テストライダーたちはコーナー立ち上がりでブラックマークを安定して残していけるのですから、その分かりやすさも、相当高度です。
じゃあ、やっぱりラジアルの方がいいじゃないですか。
ええ、タイヤ単体としては、断然ラジアルのいいのです。
でも、一般のライダーが日常的に乗るのなら、限界点近くのコントロールはかなり難しいと言ってもいいと思います。
そして、一般のライダーの中にはそのグリップ力を当てにして、破綻したら自分ではコントロールできない領域まで速度(運動エネルギー)を上げてしまう人もいます。知らないうちに超高速域まで連れて行ってくれるのが最近のスーパースポーツです。
初めて限界を超えてしまったことを知ったのが超高速域だとしたら、生還率は低いと言わねばなりません。
バイアスはそこまでの超高性能はありません。しかし、一気にブレークしない、タイヤの限界を徐々にライダーに教えてくれるその特性は、命のリスクを冒してでもライバルよりも速く走らねばならない場合を除いて、ライダーにとって有用な特性と言えるわけです。
う~ん、でも、性能が高い方がいいと思いますが。

(出典はgoo自動車&バイク モトグッツィV7クラシック試乗レポート フォトギャラリーより。)
例えば、空の散歩をするとき、F15戦闘機とセスナ機と、両方選べるとしたら、どちらが気持ちいいと思いますか?
圧倒的に速く、すごいのはF15でしょう。でも、ひらひらと細かく舞ったり、景色を楽しんだり、ちょっと飛ばしたり、そんな遊びでは圧倒的にセスナの方が楽しいはずです。
どちらが好きかは、これは人によって違うでしょう。
F15を選ぶなら、その戦闘力を理解し、活かしていくような使い方をする人でなくてはならないし、セスナを選ぶなら、音速を越える性能を求めてはいけません。
ラジアルタイヤとバイアスタイヤも、総合性能では圧倒的にラジアルが勝っているとはいえ、バイアスならではのわかりやすさ、幅の狭さから来るバンキングの自然さ、人の波長とマッチするその性能は、十部に評価できると思います。
脱線ですが、それはまた、空冷エンジンと水冷エンジンの違いにも言えることです。熱的に安定し、エンジンを痛めにくいのも、性能が高いのももう圧倒的に水冷エンジンです。しかし、空冷エンジンには、人の感性とマッチする、捨てがたい魅力があります。それを「性能」と呼んでも、一向に差し支えないと思います。
ここで、もう一回、バイアス、ラジアルのそれぞれの特徴を簡単にまとめてもらえますか?
以前もやりましたが、再掲しますね。
まず、バイアスタイヤの特徴です。
そしてラジアルタイヤです。
さて、ここから、このタイヤの特性を活かしたライディングについて話して行きますと、今までの3倍くらいの連載になってしまいそうですので、今回はこの辺で。
次回、函崎さんのお手紙に改めて答えつつ、タイヤとコーナリングについて、ライディングの観点から概観します。
ライテクインデックスⅢへ。
さて、ここまでバイアスタイヤとラジアルタイヤの構造の違い、また、タイヤが発生する旋回力、特に「コーナリングフォース」におけるラジアルタイヤの優位性などをお話してきました。いかがでしたか?
いやあ、なんだか難しかったなあ。
でも、前回のお話だと、コーナリングに関しては、断然ラジアルの方が高性能だと言えそうですね。
それは間違いなくそうですね。
サイドウォールを短くしなやかに作れるラジアルタイヤは、コーナリングフォースを設計段階からコントロールしやすいように作られています。
ただ速くて限界が高いだけじゃなく、安全性にも寄与できるんです。
と、いいますと?
同じ速度でコーナリングしているとしても、ラジアルタイヤの方がコーナリングフォースを活かしやすい、ということは、バンクによるキャンバースラストに頼らなくていいことになります。例えばバイアスタイヤがキャンバースラスト7、コーナリングフォース3ぐらいの比率で走っていても、ラジアルならこれを6:4とか、場合によっては5:5くらいに出来るわけです。
すると何が起こるかと言いますと、ラジアルタイヤ装着車の方が、浅いバンク角で曲がれることになるのです。バンク角が浅いと、何かあったときの対応に有利になりますし、もうひと寝かしする余裕もあるわけで、安全上も好ましいといえますね。
じゃあ、ラジアルタイヤ、「うほうほ」ですね。
うほうほです。
新しいオンロードスポーツモデルのほとんどがラジアルタイヤを前提として設計されているのも、まさに必然といえるでしょう。
あ、でもちょっとま~った。
何ですか?ひげじい。
いやいやいや、ひげじいじゃないですから。
お便りの函崎さんの新しい愛車、モトグッツィV7クラシックは、新しいバイクなのにバイアス指定ですよ。それに今年の東京モーターショーで発表されたCB1100、あれもバイアスタイヤですよね。
V7もCBも、昔のバイアス時代へのノスタルジアだけで作られた、雰囲気バイクなんですか?樹生さん、結構誉めてたじゃないですか。

(写真URLはhttp://response.jp/article/img/2009/10/06/130442/219316.html)
「【東京モーターショー09】ホンダCB1100…コンセプトモデルを市販」
ふっふっふ…。
ただの後ろ向きバイクだとしたら、あの現実的でけちなヨーロッパユーザーの間でV7クラシックがそんなに人気が出ると思いますか?
バイアスには、バイアスのよさがあるんです。
ほほう、それは?
それは、「わかりやすさ」です。
バイアスタイヤは確かに限界点はラジアルに比べて低いですが、その分、限界が分かりやすいんです。
それはどうしてですか?
例えば、後輪が遠心力とパワーに負けてスリップする時のことを考えてみましょう。
構造上、バイアスはタイヤ全体でたわみやすく、ラジアルはサイドウォールが主にたわみを担当していて、トレッド部は硬い構造でしたね。
ラジアルはトレッ部の変形が少ないので、ゴム自体は柔らかくてグリップのいい物を使用可能です。
それはバイアスタイヤでは到底耐えられない横向きの力でもグリップし続けます。
しかし、グリップ力は無限ではないので、限界を超えて滑り出す時が来ます。
そのとき、バイアスよりも強い力に耐えていた分、グリップを失うときのエネルギー落差が大きい。つまり、一気にズバッとすべりやすいのです。
バイアスタイヤはタイヤ全体がたわんでいきますから、コーナリングフォースが高まってタイヤのたわみが過大になりだすと、一気に滑る前に徐々にパフォーマンスが落ちてきます。
このときにライダーは「そろそろこれ以上攻めては危ない」という情報を理屈でなく操作の実感として得やすいのです。
その情報伝達速度は確かにラジアルより遅く、少しボケたものとなっているのですが、それが人間の操作系の感覚と上手く合うのですね。
えっ、ちょっと待って下さい。それじゃ、ラジアルは危険だということですか?
いえ、ラジアルタイヤもいきなりブレークしてスリップダウンなんでことにならないように、その過渡特性のチューンアップは続けられています。限界点はかなり高いのですが、テストライダーたちはコーナー立ち上がりでブラックマークを安定して残していけるのですから、その分かりやすさも、相当高度です。
じゃあ、やっぱりラジアルの方がいいじゃないですか。
ええ、タイヤ単体としては、断然ラジアルのいいのです。
でも、一般のライダーが日常的に乗るのなら、限界点近くのコントロールはかなり難しいと言ってもいいと思います。
そして、一般のライダーの中にはそのグリップ力を当てにして、破綻したら自分ではコントロールできない領域まで速度(運動エネルギー)を上げてしまう人もいます。知らないうちに超高速域まで連れて行ってくれるのが最近のスーパースポーツです。
初めて限界を超えてしまったことを知ったのが超高速域だとしたら、生還率は低いと言わねばなりません。
バイアスはそこまでの超高性能はありません。しかし、一気にブレークしない、タイヤの限界を徐々にライダーに教えてくれるその特性は、命のリスクを冒してでもライバルよりも速く走らねばならない場合を除いて、ライダーにとって有用な特性と言えるわけです。
う~ん、でも、性能が高い方がいいと思いますが。

(出典はgoo自動車&バイク モトグッツィV7クラシック試乗レポート フォトギャラリーより。)
例えば、空の散歩をするとき、F15戦闘機とセスナ機と、両方選べるとしたら、どちらが気持ちいいと思いますか?
圧倒的に速く、すごいのはF15でしょう。でも、ひらひらと細かく舞ったり、景色を楽しんだり、ちょっと飛ばしたり、そんな遊びでは圧倒的にセスナの方が楽しいはずです。
どちらが好きかは、これは人によって違うでしょう。
F15を選ぶなら、その戦闘力を理解し、活かしていくような使い方をする人でなくてはならないし、セスナを選ぶなら、音速を越える性能を求めてはいけません。
ラジアルタイヤとバイアスタイヤも、総合性能では圧倒的にラジアルが勝っているとはいえ、バイアスならではのわかりやすさ、幅の狭さから来るバンキングの自然さ、人の波長とマッチするその性能は、十部に評価できると思います。
脱線ですが、それはまた、空冷エンジンと水冷エンジンの違いにも言えることです。熱的に安定し、エンジンを痛めにくいのも、性能が高いのももう圧倒的に水冷エンジンです。しかし、空冷エンジンには、人の感性とマッチする、捨てがたい魅力があります。それを「性能」と呼んでも、一向に差し支えないと思います。
ここで、もう一回、バイアス、ラジアルのそれぞれの特徴を簡単にまとめてもらえますか?
以前もやりましたが、再掲しますね。
まず、バイアスタイヤの特徴です。
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1 タイヤが全体としてしっかりさとしなやかさを兼ね持つように開発されており、穏やかな乗り味。タイヤの形の変化もしなやかでライダーに分かりやすい。
(一般的にはラジアルよりも乗り心地がいいと言われている。)
2 断面が円形に近いため、自然と外形が丸く出来ている。タイヤの幅と高さが同じ程度になる。そのため幅の広いタイヤは高さも高くなる。そのため、比較的細いタイヤに用いられる。(太いバイアスもある)
3 高速、高荷重に耐えるようにタイヤ強度を増そうとすると、タイヤ全体を硬く丈夫にしなければならず、重量が増す。また、タイヤ重量が増すと、ハンドリングが重くなる傾向がある。現在の時速270㎞以上(フラッグシップでは300㎞/h以上)の高速域での荷重変化に耐えられ、かつ低速域でも満足いく特性を作るのはかなり厳しい。
4 ラジアルよりも製作工程が少なく、安価に作れる。
そしてラジアルタイヤです。
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1 タイヤのトレッド部は剛性を高く、サイドウォール部はしなやかに出来ており、タイヤ各部が役割を分担することで、グリップ力、高荷重・高速性能など、多くの性能に優れている。
2 製造上、扁平で幅広、サイドウォールが長すぎないことが性能を発揮する上で必要。扁平率はバイアスが100から80程度なのに対して、70~50程度と、かなり扁平。
3 構造がシンプルで軽量に製作できる。軽さはハンドリング、サスペンション、加減速などに好影響を与える。
4 トレッド部のカーカス構造が硬く、釘の踏み抜きなどのパンクに対してバイアスよりも強い。
5 転がり抵抗も少ないので燃費もいい。タイヤ寿命にも有利。
6 弱点としては、製造コストがかさみ、値段が高い。トレッド部の硬さから、乗り心地はタイヤ全体で吸収するバイアスの方がいいと言われている。
さて、ここから、このタイヤの特性を活かしたライディングについて話して行きますと、今までの3倍くらいの連載になってしまいそうですので、今回はこの辺で。
次回、函崎さんのお手紙に改めて答えつつ、タイヤとコーナリングについて、ライディングの観点から概観します。
ライテクインデックスⅢへ。
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