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車体ホールド 直線①GPシーンより

(フルブレーキするロリス・カピロッシ選手とアンドレア・ドビチオーゾ選手。
 写真はMOTOGPのオフィシャルサイトから。この写真のURLはここ。)

いきなりですがMOTOGPのレースシーンから、その車体ホールドを見てみましょう。
究極の世界GPのライダー達は、個性的であると同時に、基本に実に忠実です。
状況が違うのでそのままフォームをコピーすることは意味がありませんが、彼らが何をしているかを見ることは、我々の公道ライディングに資することも多いのです。

写真はロリス・カピロッシ(65番)と、アンドレア・ドビチオーゾ(4番)のフルブレーキングシーン。
直線の終わり、右コーナー手前のブレーキングなので、両選手とも、右コーナーに向けたコーナリングフォームをとってブレーキングしています。
右側のドビチオーゾのマシン、後輪が浮いています。すさまじい減速Gです。
左側のカピロッシのマシンは、前輪と後輪の向きがわずかに揃っていません。ブレーキングで全く荷重が抜けた後輪を含む車体全体を外側に流しながらブレーキリリースを始めようとするまさにその瞬間です。

全力加速してきたバイクからフルブレーキングすれば、ライダーは前方に放り出されるような力を感じます。
下半身はステップ、タンクと膝や内腿、シートなどでバイクと触れていますが、上半身はハンドルを持つ腕だけしか触れていません。
普通にしていれば、ブレーキングとともにのしかかってくる上半身の荷重を全て腕2本で支えなければならないところです。
ところが、バイクではそれも許されないのです。
激しい減速Gで前のめりになっているバイクに上半身の体重を全てハンドルから荷重してしまうと、二つの悪いことがあります。
一つは、ただでさえ前のめりな状態がさらに進んでリヤタイヤが高く浮き、車体ごと前転しかねない状況になってしまうことです。そうなると前転しないようにブレーキを緩めざるを得ません。限界まで突っ込んでからブレーキするレースでは、ブレーキを予定外のところで緩めることはそのまま曲がりきれずにコースアウトしてしまうことを意味します。
もう一つは、ハンドルに体重がかかると、バイクのハンドルが自然に切れるステア機能を殺してしまうことです。
バイクのハンドルはFフォークと結ばれていて、ハンドルを右に切ればタイヤは右を、左に切れば左を向きます。
逆にタイヤが小さなギャップなどを越えてわずかに左右にゆれて直進状態に戻りたいとき、ハンドルが押さえ込まれていてはその動きができません。バイクのハンドルは、直進状態の時でも絶えず細かく左右に切れながらバランスして走っているのです。その動きを封じ込めることは、フロントタイヤの無用のホッピング(はね)を生んだり、車体全体の振動を生んだり、いろいろと弊害を生むのです。

上の写真、二人の両肘から手首の辺りをもう一度ご覧下さい。手首の角度、レバーにかかった指、いずれも荷重を受けて突っ張ってなどいない、リラックスした状態をキープしています。
正面からの写真なので分かりにくいのですが、二人とも丸められた背中、後ろに引かれた腰、コーナーに向けてフリーにした右ひざに対して後ろに引かれ、タンクに密着した左ひざなど、共通のフォームをしています。

そうです、二人とも下半身でがっちり車体をホールドし、上半身は背筋と腹筋で荷重を支え、強い減速での荷重をハンドルにかけないようにしているのです。


(フル加速するヴァレンティーノ・ロッシ選手とケイシー・ストーナー選手。
 同じくMOTOGPのオフィシャルサイトから。この写真のURLはここ。)

一方こちらはコーナーを脱出してフル加速していくヴァレンティーノ・ロッシ(46番)とケイシー・ストーナー(1番)。
ロッシのフロントが少し浮いています。このウイリーも持ち上がりすぎると後方宙返りしてしまうこともあり、(伊藤真一選手は昔、菅生でこれで転倒したことがあります)アクセルが開けられなくなってしまいます。
ライダーは重心を低く、車体前方から自分の荷重をリヤタイヤに掛けるように位置しています。
ここでも、ウイリーを防止しようとフロントにかぶさるように乗ってしまうと、素直なハンドリングを妨げ、また、荷重が不足してリヤタイヤのスライドを招き、加速の為のトラクションが抜けてしまうことになります。

2人とも強大なMOTOGPマシンの加速度に対してハンドルにしがみつくことなく下半身で全身をがっちりホールドし、上半身はフリーな状態で前に伏せています。

究極の速さを求めて究極のマシンコントロールが要求される世界GPの世界。
そこでもライダー達は、下半身でマシンホールド、上半身はフリー、の原則をしっかり守っています。

それは速度域、荷重域が違えど、公道での安全を重視したライディングでもやはり鉄則といえます。

さて、記事も長くなってきました。
次回は公道での直進時のマシンホールドに関してお話いたします。

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