爪の先まで神経細やか

物語の連鎖
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作品(2)-2

2006年05月12日 | 作品2
 フー・ノウズ フー・ケアーズ

Chapter 2


 そして、二人の距離は離れている。心の問題は、もっと遠くに分かたれている。部屋で、彼女の留学先の場所に、地図の表面にピンを刺した。

 彼は、ひとり今日も部屋で、頼まれたイラストを描いている。音楽を小さくかけていたが、集中が途切れ、消してしまった。
 創刊したばかりの雑誌に、実際は、どうでも良い空間を埋めるための仕事。才能の浪費。だが、浪費することも重要かもしれない。とくに彼女のいない空白を埋める身にとって。

 その頃、学生時代の友人に誘われる。ひとりになったことを心配して、女性を近づけるためのセッティング。彼は、久し振りに身奇麗な格好をして、出掛けた。その店に思ったより早く着く。その為め、さきに飲みはじめていた。
 そこで、ある思いを動揺させる事件。ある若者が財布を拾った。その落ちている財布を、背中を向けている客に、「落としませんでしたか?」と言っているようだ。彼の席から、少し遠いので細かい言葉のやり取りは分からない。だが、きかれた男性は、首を振っている。それで、拾った持ち主は、自分の席に戻っていった。その席には、屈強な若者が、4人ほどいた。彼らは、財布を開き、中味を点検している。そして、彼は、そこまで見て、自分のお酒と、今日のこれから起こりうる出来事を予想して、思いを巡らす。
 そこへ、ある男性があたりをきょろきょろ見回している。なにかを完全に探している人の様子。そして、見つからず、店員に何事か話しかけている。その言葉は、「この辺に落ちていませんでしたか?」と言っているように見える。
 だが、その男性はあきらめて店を出る。真実を知っている優二。だが、なにも行動にうつさなかった自分の不甲斐なさを見つめる。正義と保身。

 そこで、心にいくばくかの振動を残したまま。友人と女性2人が入ってくる。彼は、今日は上手く行きそうもないな、と既にゲームを投げてしまっている。

 段々と、4人の気持ちが打ち解け始めてきたとき、お酒の力もおおいに借りたが。そこで、当然の話題として、現在の仕事について話が移行する。
 彼の絵についての話は、はじめのうちは興味を呼び起こすらしいが、徐々に組織に留まっていない男性として見られているように、優二に疎外感を与え始める。

 結論として、会計を終え、彼は気持ちの整理のつかぬまま家路に向かう。共同生活の難しさ。2人の天才画家の理想の破局にまで、酔った頭は思考を続けるよう追い求めてきた。

 彼は、家に着き、それでも今日会った女性のワンピース姿をキャンバスに刻印するようむなしい努力をはじめる。もっと、真実に近づきたい。真理を掴みたいという気持ちを原動力にして。

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