日本の発展を阻む「逃げ切りメンタリティ」
国民の意思を反映したはずの「原発ゼロ政策」がいつのまにか骨抜きにされる、最も大切だったはずの原子力規制庁の「ノーリターン・ルール」がないがしろにされて原子力規制庁が実質的に経産省の傘下に入る、国会事故調があれほど第三者委員会と国会によるオープンな人事決定プロセスの必要性を訴えていたにも関わらず原子力規制委員会の人事が密室で決まる。これがこの国の体質だ。
結局のところ、この国の方向性を決めているのは、国民でも政治家でもなく、霞ヶ関のエリートたちと彼らと強く結びついた産業界の一部だということが良く分かる。代表的なのが、鉄鋼業・セメント・非鉄金属・造船・化学工業などの重厚長大産業、土木建築業、そして電力会社を含むエネルギー産業だ。
バブルの崩壊までの高度成長期はそれでも良かった。エネルギーを大量に消費する重厚長大産業、インフラを作る土木建築業、そしてそこに必要なエネルギーを提供するエネルギー産業が、日本のGNPを押上げ、雇用を確保してきたからだ。
しかし、今やそんな「エネルギー大量消費」型のビジネスは中国やインドにシフトしており、日本という国はこれまでとは違う新しい戦い方を見つけなければならない転機に来ているのだ。
ドイツにできた脱原発・エネルギー大量消費に頼らない経済発展は、日本にもできてしかるべきである。問題は、急激な変化を望まない企業と、彼らと強く結びついた霞ヶ関が痛みを伴う改革を嫌い、問題を先送りし続けている点にある。急激な変化は、主役の交代を意味する。変化の隙をついてソフトバンクやライブドアのような新参者が次の時代の主役になってしまうことは、なんとしてでも阻止ししたいのだ。
つまり、高度成長期の成功により日本という社会の中核を担う様になった重厚長大な大企業が、短期的な保身のために抵抗勢力となって日本の発展を阻んでいるという皮肉な結果になっているのだ。典型的な「逃げ切りメンタリティ」である。
そんなことを考えていたら、数多いジャーナリストの中でも私が最も信頼している神保哲生氏がまさにこの点をとても分かりやすく解説していたので、ぜひとも見ていただきたい。
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