ゴタゴタ政治に脆い原発…海外紙
福島第1原発に新たに設けられた防潮堤。右側の建物は4号機のタービン建屋=6月30日(東京電力提供)
(共同通信)
-
(gooニュース・JAPANなニュース) 2011年07月12日 18時32分
英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今回も原発についてです。それから、被災した地元を元気づけたいと甲子園を目指す高校球児たちについて。「背筋をまっすぐに伸ばして、どこまでも丁寧な」球児たちが大人になった時、日本は原発を使い続けているのか。もしくは少しずつ段階的に減らしているのかを考えながらこのコラムを書いていたら、菅直人首相が国会で、原発依存を下げざるを得ないと発言。それを英語メディアは速報してきました。英語メディアはストレステストについて首相が謝ったかどうかなどより、日本がこれから原発をどうするのかをじっと注目している。そんな印象です。(gooニュース 加藤祐子)
○「ゴタゴタちらかった政治」
米紙『ニューヨーク・タイムズ』のマーティン・ファクラー東京特派員は6日付の「日本政府、原子力発電所の安全査定を計画」という記事で、ストレステスト実施について海江田万里経産相が立地地域の住民にさらなる安心感をもってもらうためだと述べたと説明。「そもそも定期検査のために休止中だったものの3月の震災以降、再稼働していない何十基もの原発について日本政府は、各地の首長に再開を許可してもらおうとしている。そしてこの間、地元合意の問題が事態の前面に出てきている」と。
>>続きを読む
○20年かけての脱原発と
カメラや記者を前にした民主国家の政治家としての振る舞いをわきまえない人については、コメントするのもバカバカしいです。東北放送が大きく取り上げて大臣辞任にまで至ったこの騒ぎについて、たとえば英BBCは「ただでさえ不人気な菅直人政権に対する圧力は強まるだろう」と松本龍復興相の辞任を伝えています。東京特派員のローランド・バーク記者はわざわざ松本氏の「B型だから」という不見識な釈明についても解説。「血液型のせいにするなど荒唐無稽に聞こえるかもしれないが、日本では血液型は性格に影響すると信じられている。B型の人はがさつな性格(abrasiveness)だと言われている。少なくとも松本氏については、その通りだったと言えるだろう」と。わあ、ありがたいなあ(私はB型です)。
BBCサイトの編集者は面白がってるのではないかと思うのですが、日本の政治家の失言集まで作成。「失言しやすい日本の政治家」という見出しで、麻生太郎、柳田稔、森喜朗、石原慎太郎の各氏が紹介されています。
こんなバカバカしい話題をくどくど書くつもりはありません。なんといったって、B型は短絡的だそうなので。なので、もっと大事な原発の話に移ります。
原発か否か、それが問題だ。この議論が今、日本以外でも繰り広げられています。7月3日付の英紙『フィナンシャル・タイムズ(FT)』は前原誠司前外相に取材し、今から20年の間に段階的に「脱原発」を実現するべきという発言を掲載しました。前原氏は6月末にも「今の民主党は少しポピュリズムに走りすぎている。私も日本が20年先に原発をなくすことは賛成だ。しかし、振り子が急激に脱原発に振れた時、皆さんの生活が一体どうなるか考えるのが本来の政治だ」と発言していたことが報道されています。
FTの取材に対して前原氏はさらに踏み込んで、電力の発電方法と使い方に革命的な転換が必要だと発言。原子炉の新設を止め、「もんじゅ」を諦めるべきだとも述べています。
これを受けてFTは、「菅首相の後任として有力視される前原氏によるこの発言は、日本が原発危機を機にエネルギー政策を大転換させるのではないかという期待感を高めるものと見られる」と書いています(それにしても前原氏は、『ワシントン・ポスト』をはじめ米英メディアの受けがいい)。
ところでこの同じFTは4月下旬に「原子力の時代終了ではなく、復活させるべき時」という社説を発表していました。「エネルギー市場にひどい不安定や電力不足を引き起こすリスクを伴わない形で、化石燃料や代替可能エネルギーでこの不足分を埋めるのは、当分は不可能だ。単純に言えば、われわれは多様なエネルギーな供給源を必要としていて、その中には原子力も含まれる」という主張でした。そして最新の技術を駆使して原発の安全性を確保していくべきだとも。
ひとつの新聞社の中に、社説があって、それとは少し異なる記者個人、デスク個人の意見がある。それは当たり前のことなので(むしろ全社的に意見統制をするようなメディアの方が不気味です)、同じFTの中でも記事ごと筆者ごとに少しずつ原発に対する姿勢が異なっているのを読み分けるのは、興味深いことです。
原発か否か、それが問題。日本の原発政策の転換点になるのかと注目されていたのが、九州電力の玄海原発です。佐賀県玄海町の岸本英雄・玄海町長は結局4日に、運転再開に同意。古川康・県知事も今のところ同意の姿勢を示しているとのこと(7日追記・岸本町長は7日、再稼働了承を撤回。古川知事は判断先送り)。
しかし、そもそも国のエネルギー政策の転換点となりかねない大きな判断を政府が自治体の首長に預けてしまったことを、2日付の米紙『ニューヨーク・タイムズ』は批判していました。
マーティン・ファクラー東京特派員は、「政治指導力の弱さという病のような問題を抱える国で、日本における原子力発電の未来を決定するかもしれない重要な決断は、ふだんは目立たない南の県の地元知事の役目になった」と皮肉っぽく書いています。「病のような問題を抱える」と訳したのは「plagues」という動詞。もとの名詞の「plague」は本来「ペスト」の意味で、転じて「災い」などの意味に。『ロミオとジュリエット』には「どちらの家も呪われろ」という意味で「A plague on both your houses」という有名な台詞があります。