反物質の消滅[編集]
反物質がどうしてわれわれの住む宇宙では殆ど存在していないのかは、長い間、物理学の大きな疑問の一つであったが、最近その疑問への回答が部分的ではあるが得られつつある。初期宇宙においての超高温のカオス状態の中で、クオークから陽子や中性子が出来、中間子が生まれ、それぞれの反粒子との衝突で光子(電磁波・ガンマ線)に変換されたり再び対生成されていた頃にすべては起こったと考えられている。
従来、物質と反物質は鏡のように性質が逆なだけでその寿命を全く同じだと考えられてきた(CP対称性)。だが近年、粒子群の中で「物質と反物質の寿命がほんの少しだけ違う」というものが出てきた。最初はK中間子と反K中間子である。そして、B中間子もはっきりと反B中間子とでは寿命が違うことが確認された。日本の高エネルギー加速器研究機構[6]のBelle検出器[7]による発見である。「反物質の寿命がわずかに短かった」(CP対称性の破れ)。これにより、初期宇宙の混沌の一瞬の間の「物質と反物質の対生成と対消滅」において、ほんのわずかな可能性だが反物質だけが消滅し物質だけが取り残されるケースがあり、無限に近いほどの回数の生成・消滅の果てに、「やがて宇宙は物質だけで構成されるようになった」と説明できる。もちろん多種さまざまな粒子群の中のわずか2つの事例であるが、他の粒子での同様の現象の発見やそもそもの寿命のずれの発生機序が解明されれば、この謎は遠からずすべてが解明されると期待されている。
将来の利用法[編集]
反物質は粒子加速器を使う核融合実験の際に、微量ずつ発生しては、発生の次の瞬間には対消滅で消え去っている事が観測データから確認されているが石油やウランなどと異なり自然には殆ど存在せず、そのため反物質を得るには一から生成する必要がある。
ただし、反物質を生成するのに必要なエネルギーは、反物質を燃料として消費するときに得られるエネルギーよりも大きいため、結局は損をする。これは、水素を燃料として使うために水を電気分解した後、再び燃料電池として電気に戻して消費するサイクルに似ている。ただ、エネルギー密度だけを考えれば非常に高密度であるので遠い将来の宇宙開発のような特殊な用途での利用が想像されている。反物質は物質に触れると爆発的な対消滅を起こすので貯蔵や取り扱いには工夫が必要になる。
反物質は、周囲の物質と対消滅を行うことにより自身の質量の200%をエネルギーに転換できるので、宇宙開発上課題となっている燃料の質量を劇的に軽量化できる。NASAは反物質動力の推進機関に関心を示している。宇宙機のエンジンとして比べれば、核分裂では核燃料の質量のおよそ千分の一、核融合ではおよそ百分の一がエネルギーに転換されるのに対し、反物質を燃料として使えばその大部分がエネルギーに転換される。例えば100kgの深宇宙探査機を50年間加速させるのに必要な反物質燃料は100μgで良い[8]。一方、化学燃料によって得るエネルギーはその質量のおよそ一億分の一相当にすぎず、1グラムの反物質の対消滅によるエネルギーは、スペースシャトルの外部燃料タンク23個分に相当する。
反物質
反物質(はんぶっしつ、英: antimatter)は、質量とスピンが全く同じで、構成する素粒子の電荷などが全く逆の性質を持つ反粒子によって組成される物質。例えば、電子はマイナスの電荷を持つが、反電子(陽電子)はプラスの電荷を持つ。中性子と反中性子は電荷を持たないが、中性子はクォーク、反中性子は反クォークから構成されている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8D%E7%89%A9%E8%B3%AA
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD
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Melody Kramer for National Geographic News
最終更新:8月29日(木)13時57分
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115番元素が確定、周期表に追加へ
ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 8月29日(木)13時57分配信
元素周期表。 (Peridoic Table Courtesy of Tomacco/Getty Images)
アクチニウムからジルコニウムまで、元素の名前をすべて覚えたら、いちど元素周期表に戻ってみよう。まもなくそこに、きわめて重い新元素が追加されるようだ。
新元素にまだ正式な名前はなく、その原子番号115を表すラテン語とギリシャ語から暫定的に「ウンウンペンチウム」と呼ばれている。
高校の化学を忘れてしまった人のために、簡単におさらいしよう。元素の原子番号は、その原子核の中にある陽子の個数を表す。
自然界で最も重い元素はウランで、陽子の数は92個。しかし、それより重く、陽子数の多い元素を原子核融合によって作りだすことも可能だ。
人工の115番元素は、ロシア、ドゥブナ合同原子核研究所のチームが10年ほど前に初めて生成した。そして先ごろ、スウェーデンのルンド大学のチームが、ドイツの重イオン研究所において、ロシアの実験を再現することに成功したと発表した。
115番元素は、「国際純正・応用化学連合(IUPAC)」の委員会が正式な元素名を決定し次第、元素周期表の114番フレロビウムと116番リバモリウムの間に追加される。
ナショナル ジオグラフィックでは、ユタ州ソルトレイクシティにあるウェストミンスター大学の化学教授ポール・フッカー(Paul Hooker)氏に取材し、周期表に加わる新元素について話を聞いた。
◆115番元素は10年前にロシアの研究所が生成していたようですが、今までその発見が広く知られていなかったのはなぜでしょう?
新たな元素を発見したら、それを確認しなければなりません。2つの異なる研究所が確認して初めて、(IUPACが)周期表への追加を検討するのです。今回、第二の研究所が同じ実験を再現したことで、115番元素は正式な新元素とみなされるようになりました。
◆具体的に、ロシアやスウェーデンのチームはどのような実験を行ったのですか?
現在の新元素の作り方は、ある元素のビームを別の元素に照射し、それらが衝突するとどうなるかを試すというものです。
今回の実験で用いられたのはアメリシウムですが、これは不安定な放射性元素だというのがちょっとおもしろいですね。実験では、アメリシウム原子よりはるかに軽いカルシウム原子を、数週間あるいは数カ月にわたってアメリシウムに照射しました。ほとんどのカルシウム原子は跳ね返りましたが、ときどき衝突し、カルシウム原子は跳ね返らずにアメリシウム原子とくっつきました。このとき、より多くの陽子を原子核にもつ短命の原子ができますが、これを中心とするのが新元素115番です。
◆この原子は1秒ともたずに崩壊したそうですが、それほど短時間しか存在しないのに、それが新元素だとどうしてわかったのでしょうか?
崩壊生成物の観測によってです。115番元素が、アルファ粒子の放出によって崩壊している明らかな兆候を観測するのです。このような兆候が十分に観測されれば、おそらく新たな元素を生成したといえるのです。
◆新しい元素は誰にでも作れるのですか?
いいえ。カルシウム原子は空気中では照射できないので、大きな真空の部屋が必要になります。専用の装置もたくさん必要です。この種の実験を行える研究施設は多くありません。このような実験に関心をもつのは、「物質はどうやってまとまった状態を保っているのか」というような、大きな謎の解明に取り組む研究者だけです。
◆ごく短時間で崩壊し、しかも明らかに自然界に存在しない新元素を、わざわざ作りだす意味は?
学生ともよくこの話をするのですが、「それがそこにあるから」というのが私の答えです。ごく短時間で崩壊してしまうのですから、不安定な新元素に何かの使い道があるわけではありません。しかしそこから、原子をまとまった状態に保つ力についての知見が得られ、ひいては宇宙がまとまった状態を保っている仕組みについて、より多くのことがわかるのです。
◆人工的に作りだせる元素の数には限界がありますか?
元素の安定性は、原子核中の陽子の数が90を超えると限界を迎えます。したがって、今後さらなる元素が発見される可能性はありますが、陽子の数が1000個にまで達することは絶対にないでしょう。あまりに不安定すぎます。
Melody Kramer for National Geographic News
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