原子力発電(げんしりょくはつでん)とは、原子核反応時に出るエネルギーを利用した発電、あるいはその方法。
利点
現行の原子力発電には以下の利点が挙げられる。
- 安定した電力供給が可能
- 発電時に 地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を排出しない
- 使用する燃料が極端に少なくて済む
- 燃料の中東依存度を減らすことが出来る
- 核燃料サイクル等によるウラン238の有効利用や海水からのウラン採取が実現すれば、燃料は非常に豊富
- 経済性が高い
- 再処理により準国産エネルギーを実現できる
- 技術力があることがアピールできる
- 酸素を必要としない
問題点
現行の原子力発電には以下の問題点が指摘されている。
- 重大事故は周辺環境に多大な被害を与え、その影響は地球規模に及ぶ
- 毒性が強く、放射性物質である核廃棄物を作り出す
- 高レベル放射性廃棄物の最終処分地が決定していない
- 地殻中のウラン235のみの利用を考えた場合、資源がそれほど豊富なわけではない
- ウラン資源の可採埋蔵量に由来する資源枯渇問題
- 軍事転用の制約に関わる国際社会への配慮
- 起動停止の所要時間が長い(通常停止)
- 炉の特性上、通常は負荷追従運転を行わない
- 火力発電所と比べ、施設建設に多大なコストがかかる
- 地質学的側面から、立地場所が限定される
- 電気利用者・電力会社と施設周辺に住む住民との利益・不利益が相応でない可能性がある
- 発電施設および核廃棄物へのテロの危険
- 将来の原子力発電を担ってくれる若手技術者が減少傾向にある
- 原子力発電所の新規建設数が減少していることからメーカーの原子力部門における技術の継承が困難となってきている
放射性廃棄物の存在
原子力発電所から出る放射性廃棄物の場合、原子炉の使用済み燃料棒や、作業員が使用した衣服(→放射線防護服)やこれの除染に用いた水など、放射性物質漏出事故等で汚染された土壌など多岐に渡る。また、耐用年数に達して、廃炉となった原子炉そのものもこれに当たる。
軍事分野では、同様の廃棄物として、核兵器製造過程で生じた廃棄物や、耐用年数を過ぎ廃棄処分となった核兵器、耐用年数を過ぎ廃艦処分となった原子力潜水艦などがある。
原子力施設や核兵器関連施設以外にも、医療分野や民間産業分野、農業分野などでも放射性物質を使用する場合があるので、放射性廃棄物は存在する。
放射性廃棄物の処理
現時点では、地下深くに埋蔵・保管する方法(地層処分)などが考えられている。特に問題となる高レベル放射性廃棄物については、ドイツでは既に地下の岩塩層や廃鉱跡地に埋設処理することで具体的な検討を実施中である。日本では、地震や火山噴火等に耐える強固な施設でなくてはならず、地下水にも汚染がないよう地下300mの箇所に多重バリアを引いて処理する手法が提示されているが、場所の選定からして大変であり、候補地の目途すら立たない状況にある。
過去には、海底深度の深い海溝などに、ドラム缶に詰めた放射性廃棄物を船上から投棄した国もあった。
放射性廃棄物の問題
放射性廃棄物の問題は、扱っている対象が放射能を持つ放射性物質であるという事実である。 放射性物質の中には、半減期が極めて長いものも存在する。
誤解されていることがあるが、半減期の2倍の時間が経過すると放射性物質が消滅するわけではない。 たとえば半減期が約12年であるトリチウムの場合を考える。トリチウムの量は12年後に50%、24年後に25%、36年後に12.5%、48年後に6.25%、60年後に3.125%、72年後に1.5125%、84年後に0.75625%、という様に減っていき、同時にトリチウムが崩壊して出来るヘリウム3が生成されていく。 トリチウムの崩壊後に出来るヘリウム3は安定だが、これが崩壊後も放射性元素だった場合は、当然ながら、この物質も個別の半減期で崩壊していくことになる。
したがって、半減期が長い物質や、なかなか安定元素に到達しない放射性元素の場合、崩壊が終わって安定するまでには、人類の時間の感覚からすると永遠に等しい時間がかかる。
現時点では、これを無害化することは不可能であり、長期間に渡り厳重な管理下に置く必要がある。 しかし残念ながら、放射性廃棄物・原料等のずさんな管理、不法な投棄などにより、土壌汚染や人畜への被害などの事故が既に報告されている。
http://www9.plala.or.jp/hirakawa-nen-h/denki.html