50歳のフランス滞在記

早期退職してパリへ。さまざまなフランス、そこに写る日本・・・日々新たな出会い。

フランス文学、お熱いのは外国!?

2008-02-09 04:46:31 | 映画・演劇・文学
フランス文学というくらいですから、当然、その研究もフランスが本場。だから、フランスへ留学する学生や研究者の人たちが多いわけですよね。でも、フランス文学研究の分野でも、国際化が進行。フランス人作家の研究者は、今や、ブラジル人だったり、中国人、日本人、アメリカ人、イギリス人だったりする・・・フランス文学研究の世界も国際色豊かになっているそうです。


7日のフィガロ紙、文学欄の第一面です。「バルザック、プルースト・・・フランスの偉大な作家たちに夢中な外国人たち」・・・地図の日本のところにはネルヴァル、中国とブラジルにユゴー、アメリカにはプルースト、ユイスマンス、フロベール、そしてイギリスにはランボー、ヴェルレーヌ、フロベール。こうした作家の優れた研究者がそれぞれの国にいる、ということを表示しているのでしょうね。では、具体的には・・・


中面です。「外国の研究者・愛好家が、フランスの偉大なる作家たちを輝かせている」・・・なぜフランス文学を愛する外国人が多いのか。「イギリスならシェークスピア、イタリアならダンテ、スペインはセルバンテス、ドイツはゲーテ。すぐこうした名前は出てくるが、次は、と問われると、探すのが大変だ。それが、フランスだと、逆に誰をいうべきか迷ってしまうほど多くの偉大な作家がいる。まるで劇場の入り口に殺到した人をどういう順番で入場させるか迷ってしまうのと同じような贅沢な悩みだ」・・・偉大な作家が星の数ほど。その豊穣さが多くの外国人をとりこにする理由のひとつのようです。

もうひとつの理由は、多くの言語に訳された上に、それぞれの国で子供向けの本にも採用されていること。小さい頃に感動した本がその後の読書傾向を決めてしまうこともありますよね。例に出すには気が引けますが、私も小学生のときに読んだ『三銃士』、『ああ無情』、『十五少年漂流記』がフランス文学との出会いでした。

さて、具体的にといっても、アメリカやイギリスなどのフランス文学研究者は、いまいち私の興味の埒外ですので、日本の研究者に絞ってご紹介しましょう。日本でのフランス文学研究は、成果が優れているためか、携わる人数が多いためか、多くのスペースを取って紹介されています(たぶん、いや、きっと、前者です)。

ユゴーの研究者として、中国の二人、イギリス、ブラジル、ルクセンブルクそれぞれ一人の研究者ともに紹介されているのが、稲垣直樹氏。スタンダール研究では、粕谷雄一氏。霧生和夫氏はバルザックの『人間喜劇』の研究。水野尚氏はネルヴァル研究。こうした方々のお名前が紹介されていますが、それ以外に日本でのフランス文学熱を語る事例がいくつか紹介されています。

上記の日本の研究者の方々も、また他の国の研究者たちもいわゆる有名な作家を研究対象にしていますが、もちろん、そうしたよく人口に膾炙した名前だけが研究対象になっているわけではない。例えば、ロートレアモン。南米ウルグアイで生まれ、『マルドロールの歌』一巻を残して24年という短い人生を終えた19世紀の作家。生まれ故郷のウルグアイやイタリアにもその研究者はいるが、特筆すべきは、日本。『マルドロールの歌』はすでに7回も出版されており、この作品を研究テーマにしている人が15人ほどもいる。フランスですら辛うじて10人いるかいないかだというのに! しかも、ロートレアモンが住んだピレネーの麓の街、タルブ(Tarbes)でシンポジウムが開かれた際には、フランス語を全く話せないにもかかわらず数人の日本人がロートレアモンの住んでいた家を見るために参加した。それほど、その思いは強い―――。

また、日本で注目されるのが、“la Societe japonaise de langue et litterature francaise”、略してSJLLF、つまり「日本フランス語フランス文学会」。「日本におけるフランス語・フランス文学の進歩発展とその普及のために1962年に設立」された学術団体で、現会長の塩川徹也氏をはじめ研究者、学生、愛好家など会員数は2,000人・・・それほどフランス語やフランス文学を研究したり愛好している人が日本では多い!

しかるに、残念ながら、本国フランスでは、文学を専攻しようという学生は減少し(ここ15年間で28%減)、多くの高校が次々と文学コースを廃止している・・・記事の最後はこう締めくくられています。

ところが、残念ながら、お褒め頂いた日本でも、フランス文学を専攻する学生やフランス語を第二外国語に選択する学生が減り、フランス文学の講座を廃止する大学が増えている。また、フランス文学専攻といっても、好きなのはフランスであって、文学には興味のない学生も増えている・・・このブログも最後には、こう付け加えざるをえないようです。

文学研究、さて、その明日は・・・

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