竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

葱買うて枯木の中を帰りけり 蕪村

2016-11-21 | 蕪村鑑賞
葱買うて枯木の中を帰りけり





町で買ったねぎをぶら下げて、葉の落ち尽くした冬木立の中を一人で帰ってきたことだよ。〔季語〕葱・枯木


枯木の中を通りながら、郊外の家へ帰って行く人。

そこには葱の煮える生活がある。

貧苦、借金、女房、子供、小さな借家。

冬空に凍える壁、洋燈、寂しい人生。

しかしまた何という沁々とした人生だろう。

古く、懐かしく、物の臭いの染みこんだ家。

赤い火の燃える炉辺。台所に働く妻。父の帰りを待つ子供。

そして葱の煮える生活!

この句の語る一つの詩情は、こうした人間生活の「侘び」を高調している。

それは人生を悲しく寂しみながら、同時にまた懐かしく愛しているのである。

芭蕉の俳句にも「侘び」がある。

だが蕪村のポエジイするものは、一層人間生活の中に直接実感した侘びであり、

特にこの句の如きはその代表的な名句である。

(萩原朔太郎「郷愁の詩人与謝蕪村」より)


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