明るいときに見えないものが暗闇では見える。

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【鍵泥棒のメソッド(2012)】

2012年09月29日 | 映画



『運命じゃない人』『アフタースクール』『鍵泥棒のメソッド』と、内田けんじ監督ってのは本当に職人なんだと思う。

綿密に計算され尽くした脚本、完璧なシチュエーション、完璧な伏線、完璧な小道具、二転三転四転する完璧などんでん返し。そしてそれを演じるにぴったりな完璧なキャスティングと、こんなにキッチリ面白く仕上がっている映画は他に観たことがない。

作品全体が人への愛と皮肉にあふれており、一癖も二癖もあるステキに不器用な登場人物達は、そんな完璧に練られた脚本の中コロコロ楽しく転がっていき、悪人でさえも最後は愛すべき人に変わってしまう。あいかわらずなんとも隙がなく面白い内田マジック。良くできた小説を読み終えたような後味がともて心地良い。


と、褒めすぎなのだけとその逆少し思うところがある。余計なイチャモンであることは承知の上なのだけど、このようにお話が完璧すぎるがため作品としての“遊び”がちょっと少なく感じる。“遊び”ってのは“ハンドルの遊び”とかの余白とかのことね。観客の想像で埋めるべき行間というか作品の答えがたったひとつに限られており、たどり着くところは観客皆同じ。この『鍵泥棒のメソッド』で言えば、最後にあの二人はどうなるのかな?的な想像をふくらませて楽しめる脚本後のお話でさえ決定されてしまっている気がする。レールの敷かれすぎ感っていうかそういうの。

個人的には『運命じゃない人』が一番好きで、これが完成品なだけに二番煎じ感も否めない。これは私個人的な問題なので甘んじて批判は受けます。

つまり内田けんじ監督はいつも完璧なコメディを作る職人さんであり芸術家肌の監督さんではなさそう、ということ。ただし間違いなくうなるほど「上手い」作品だしその上手さは芸術的なので、これは「内田けんじ監督作品」というジャンルとして楽しむのがよろしそう。次回は少しヒネりやブレイクスルー感も欲しいかも。


また今期はオリジナルの脚本にこだわる稀有な監督二人のガチンコ勝負だったりして(内田けんじ監督『鍵泥棒』、西川美和監督『夢売るふたり』)そこも面白い。『夢売るふたり』も観なきゃな。


P.S.
にしても、もう香川照之さんなしでは日本の映画はでけんのじゃろうか。。

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2 コメント

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Unknown (azami)
2012-09-29 21:35:43
ごぶさたしてます~。
私も「アフタースクール」より「運命じゃない人」のほうが好きでして、今回は観賞見送りかなぁと思ってます。

「夢売るふたり」は宣伝みるだけで「うわぁ無理だ~~」と拒否反応がでております(^^;
そしてなぜか監督さんが宣伝出てるのにちょくちょく遭遇してます。ひぃ。
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Re: Unknown (takakuss)
2012-09-30 01:49:40
あざみさん いらっしゃい。

『運命じゃない人』の親分さんで全部種明かしのくだりが超好きです。
ボクは『アフタースクール』よりも『鍵泥棒』のが内田監督らしいと思いましたので、『運命じゃない人』好きなら観て損はないですよ。ヒロスエがいい演技してます。

『夢売るふたり』はちょっと食指が伸びないでいますが、西川節は邦画会には貴重で好きなのでDVDでは必ず観たいと思ってます。サダヲだよりになってないといいんですがw
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