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「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

研究3 アファンの森の生き物調べ

2016-01-01 01:19:50 | 研究4 アファンの森の生き物調べ
長野県北部にあるアファンの森はC.W.ニコルさんが、荒廃する日本の里山の森をよみがえらせようと、一つのモデルとして管理をしている林です。私たちの研究室では2009年からこの林で動植物の調査を始めました。調査は経験的におこなわれている森林管理が生物にどういう影響をおよぼしているかという観点でおこなっています。また、生物調査とは別にアファンの森でおこなっている環境教育活動などにも参画しています。

森林管理が環境と地表植物におよぼす影響

アファンの森には落葉広葉樹林、人工林、草地などがあり、落葉広葉樹林にもササなどの下生えを残したものと、刈り取ったものがある。こうした管理の違いが気象や地表植物に与える影響を調べたところ、暗い林、明るい林、草地の順で温度が高く、湿度が低い傾向があった。また地表植物はこの順で種数も量も大きくなることが示された。またそれぞれの群落から土壌を採取して発芽実験をしたところ、草地では草地の植物が多かったが、森林には外部から持ち込まれる種子があった。なお林縁はとくに多様性が高いことがわかった。(嶋本祐子との共同研究)論文117

森林管理が花と訪花昆虫におよぼす影響

群落が明るくなると花が咲き、花があれば訪花昆虫が増えるはずなので、そのことを示すために、ルートを決めて訪花昆虫がいたら記録したところ、草地には非常に多くの花があり、多様な昆虫が利用していることが示されました。とくにヒヨドリバナ、メタカラコウ、サラシナチョウマなどには多くのチョウ、ハチ、アブ、ハエなどが訪問していた。森林では少なかったが、相対的にはハチが多く、森林固有の花と虫の組み合わせもあった。(嶋本祐子、野口なつ子との共同研究)

フクロウの食べ物




アファンの森にはフクロウがおり、人工巣で営巣することが知られている。その巣の底にたまった「小骨」を分析したところ、大半がネズミであることがわかった。ネズミは下顎から森にすむアカネズミ系と草地にすむハタネズミに区別できることがわかった。その数はハタネズミが7割ほどであり、「森のネズミ」は少なかった。このことはアファンのフクロウは草地や周辺の牧場で餌をとっており、本来のフクロウの食性とは違うことを意味している。(鈴木大志、加古菜圃子、佐野朝美との共同研究)

自動カメラによる哺乳類調べ

管理の行き届いた森と放置された森で哺乳類を比較したところ、全体では12種の哺乳類が確認され、ニホンザルとカモシカをのぞけば大体の地上生哺乳類が生息することが確認された(ただし齧歯類は識別困難)。398枚の有効ショットがあり、管理林のほうが多様性が高かった。しかし放置林は特定の種(タヌキ、イノシシなど)が高頻度で撮影された。(奥津憲人との共同研究)論文116


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