旅にしあれば

人生の長い旅、お気に入りの歌でも口ずさみながら、
気ままに歩くとしましょうか…

今回の旅で読んだ本~幽霊座

2022-06-04 19:06:00 | 図書館はどこですか



今回の旅行中に持ち出しで読めた唯一の本が、「幽霊座/横溝正史著」です。
往きの船内で三分の二ほど読み終えていました。その後別のもう一冊は三分の一
ほどで頓挫、続きを読めるのは少し先になるやもしれません。

幽霊座には表題作の中編一編と、『鴉(からす)』『トランプ台上の首』の
二編の短編が収録されています。いずれも横溝さんの代表作、有名作品、
あるいは映像化作品でないこともあり、金田一ものではありますが、現在
読むことが困難な作品でないかと思われます。

代表作でないから内容がお粗末かというと決してそうではなく、金田一ワールド、
横溝ワールドが全開、読み始めると止まらなくなる面白さなんですよねえ。
たとえば最近読んだ「名探偵に甘美なる死を」や「だから殺せなかった」などの
現在的で論理的にカチッと筋道を立てられた推理小説とでは、無論今となっては
見劣りする部分もあります。現在とは時代背景などが違いすぎるのでもちろん
単純には比較できないけど、筋立ての脇が甘いというか、展開がもたつき気味で
スピード感に欠けるというのか、一言で言うと「古さ」を隠し切れないのです。

それでもその世界観にすぐさまどっぷり浸かってしまい、ページをめくる手が
とまらなくなり夢中で読ませるのは、金田一が醸し出す魅力だし、それを
操る横溝さんの力量、技量なんでしょうか。

一見人付き合いが悪そうで外部との交流の少なそうな金田一ですが、意外に
そうでもなく、歌舞伎界を舞台に事件が勃発する『幽霊座』では、その登場人物
(歌舞伎俳優ら)と以前から面識があり、梨園とも付き合いがあって顔が効く
意外な一面も見せています。

一部の有名作品以外、現在は入手困難になっている金田一ものです。上記の
三作品も、そのまま埋もれ、忘れ去られるのは、いずれも惜しい作品です。
最近「横溝コレクション」として、長いこと廃刊だった作品群が様々な切り口で
まとめられ、シリーズ化され蘇っていますが、この一連の流れで、金田一ものも
すべて復刻してくれたらいいんですけどね。それまで待ちきれない方々は、
一部の図書館には、おそらく地元市民から寄贈されたであろう旧角川文庫版の
横溝シリーズが、けっこうな数そろっているところもあるので、そこを探り
当てるのが、それまでのつなぎとして今考え得る手でしょうか。

最近も『仮面舞踏会』の草稿や『悪霊島』の創作ノートが新たに発見されるなど、
いまだに話題に事欠かない横溝さん、まだまだ楽しませてくれそうです。


*近年、「横溝正史生誕120年記念復刊」と称し、角川文庫版が復刻出版
 されているようで、「幽霊座」もついこの5月に発売されたばかりみたいです! 
 今回の再読は、別にこのタイミングを狙ったわけでなく、すごい偶然ですわ。
 836円とけっこういいお値段しますが、興味のある方には、またとない
 チャンスですよ。私の手元にない金田一ものも復刻されていて、買い足そうか
 検討中です。図書館への入庫を期待しますが、今のところ和歌山では
 その動きはないようですわ、残念ながら。


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