撮影地点を手前に移せたことで、草が邪魔にならず
表情をとらえることができるようになった
しかし近くなりすぎたのが災いし
せっかくの雪景色をうまく活かせていないのではと気づくのは
少しあとになってからだった
【雪見食も悪くないな~ 2021.11.12撮影】
横溝正史少年小説コレクションの第一巻「怪獣男爵」を読み終えました。
内容としては、先に想像したとおり、推理小説というよりも冒険小説と
言っていいもので、横溝さんの一般向け作品と同じような隠微なムードを求めると
拍子抜けはします。あえて言うなら、怪奇色がやや残っている程度ですかね。
収録作は表題作に加え、「大迷宮」「黄金の指紋」の三作品で、金田一耕助が
登場するのは後記の二作のみ、いずれも敵役が怪獣男爵ということで、
そのくくりでの一括収録のようです。
編集者日下三蔵氏の解説によると、横溝さんの少年ものは角川文庫版へ
収録の際に改編が行われ、探偵役がほぼすべて金田一耕助へと改められた
そうです。なので私の手元にある当時の文庫本も、たぶん多くは金田一ものと
なっているはずです。今回のシリーズは、原則初版本を下地に編まれたもので、
原形に近い形ですべて読めるのは相当に画期的なことだそうで、横溝ファン、
特に少年向け小説愛好家には願ってもないシリーズとなるでしょう。
ブームの頃、私も含め、横溝ファン=金田一ファンみたいな感じでしたから、
その変更は致し方ない気もする反面、かなりの暴挙ではありますよねえ。
由利・三津木推しからは抗議の声が上らなかったのでしょうか? あった
のでしょうけど、かき消されてしまったのかもしれません。
それにしても、なぜ横溝版少年小説は江戸川乱歩の少年探偵団シリーズほど
知られる存在でなかったのでしょうか。乱歩版は、探偵団(小林少年)+
明智小五郎+怪人二十面相の三点セットが完全無欠だったことが、人気を
高めたひとつでしょう。それ故にワンパターンの印象が強いのも事実ですが…。
横溝版は、探偵役や敵役が固定できなかったこと、少年探偵団に匹敵するような
少年らから憧憬される組織を生み出せなかったことなどが、乱歩版に比べ
人気や知名度が劣った大きな原因であったと想像します。二十面相はともかく、
怪獣男爵なんて誰も知りませんよね。なんとか髭男(←この方、いまだに
正式名がわかっていない)と間違われかねません。そうすると、探偵役を
すべて人気の金田一に統一した角川の処置も、無理やりながらうなずける気も。
そのあたり、第一巻の解説には記載がありませんが二巻以降で触れられて
いるかもしれませんし、私自身もさらに読み進めることで、原因や理由を
探求してみたいと思います。
この冬一連の作業を続けてきた菜園で、ようやく今日収穫までこぎ着けたのが
コマツナ(小松菜)です。プランターひとつ分で炒め物料理に2回使えそうな
分量ですから、出来としてはまずまずでしょう。しかし時間がかかった~。
次は同時に種まきしたチンゲンサイの番ですが、収穫までまだ一週間以上は
かかる見込みです。徐々に日照時間が長くなりつつある我が家の庭、しかし
気温の低い日がしばらく続くとの予報ですしねえ、ペースが上がりません。
とり忘れていたレモン2個を収穫しました。ナキちゃんに献上、風邪ひき予防に
たっぷりのビタミンC ! 熟成が進んでまっ黄色です。これくらいまで木におくのが
本来なのかどうか?
この前テレビ番組で見たレモンの収穫場面では、ある程度の大きさ(ティーカップ並)
まで育ったものからとってましたよ。その農家さんでは、色づきでなく、大きさで
判断しているようでした。
オミクロン株の猛威が収まりません。和歌山県でもついにまん延防止等重点措置
適用を申請することになります。これまでは新規感染者の周辺調査を徹底することで、
第5波に至るまでどうにかこうにか感染者を抑え踏みとどまっていた和歌山でしたが、
今回は爆発的感染者増に調査が追いつかず、この先歯止めが効かない恐れがあります。
そもそもマンボウにどれほど効果があるのかが不透明だし、その他の指示や措置も
チグハグ、ゴテゴテのように思えてならず、全国的に先が見通せない状況が
続きそうです。個人的な対処法としては、なるべく外出を控えるしか手段がなく、
まあそれにも限度はありますが、当分はアニメを見たり、本を読んで、できるだけ
屋内で過ごすしか手はなさそうです。
それでまたアニメの話題をひとつ。現在BSフジで「電脳コイル」をまとめて
再放映中で、「魔法少女特殊戦あすか」に引き続いてこの作品を一気見しようと
し始めていたところ、序盤アスペクト比変換の不手際があったとかで、今週末また
第一話から改めて放送が始まるようです。4:3→16:9への変換がまずかった
のでしょうか? 私も画像の歪みには気がついてはいましたが、「古い作品なので
仕方ないのかな」程度であまり気にせずに見てはいました。なにが幸いするか
わかりません、この再放映を見逃していた方には最初から鑑賞できるチャンス
ですよ、チェックされたらいかがでしょうか。
電脳~は、「プラネテス」などと同様、NHKで放映されたという理由だけで見た
アニメで、最初とっつくのに時間がかかった覚えがある作品です。理由としては、
そもそもその前後ほとんどアニメ自体を見ていなかったのと、番組内に登場する
「電脳空間」という概念になかなか馴染めなかったからです。パソコンや携帯電話
など今時のデジタル機器には乗り遅れていた私です、いっそはるか未来ならともかく、
このお話はごく近未来を舞台とした出来事で、日常生活のすぐ隣、身近な場所に
電脳空間が張り巡らされているという設定にすっかり混乱してしまったんですね。
これが架空のお話なのか現実世界なのか、境目がわからなくなったというか…
主人公の少女らは小学六年生という設定で、視聴ターゲットとしては小学校高学年
~中学生あたりがメインでしょうけど、それにしては物語がかなりディープで複雑
なんですよ。最初SF基調ながらギャグを交えた学園日常ものという軽い感じで
始まりつつ、回が進むにつれ闇の深さが増すんですよねえ。そして終盤、物語は
激しいうねりとなり、すべて解決したとき、少女らはひとまわりもふたまわりも
大人びているという、彼女らの成長物語だったことに気づきます。
私としては電脳~の視聴が途中で中断してしまったので、代わりに、保存してある
「少女終末旅行」を見始めました。もう何度見返しているでしょうか、今回も
あらためて傑作であることを再確認しつつ楽しんでいます。話が終わらなくなるので
ひとつだけ、旅の途中彼女らが遭遇する数少ない人物であるカナザワって、作家の
高橋源一郎さんに似てません? 思い過ごしも恋のうちでしょうか??
突出したものが見当たらない冬アニメの新作中では、「明日ちゃんのセーラー服」
「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」「その着せ替え人形は恋をする」「東京24区」
などが私的には横一線でしょうか。期待値が高すぎた「平家物語」はやや肩透かし、
このあとの巻き返しに期待です。
アニメを見てすべて解決するわけでないにせよ、滅入る気分が少しでも和らげられたら
と思います。
ここにきてけっこう時間に余裕が出てまいりました。2022年冬アニメを
ばっさばっさと切り捨て、視聴番組を減らしたことが大きい(それでもいい加減
たくさん見てますけど)のと、さすがにこれだけ新型コロナウィルスの新規感染者数が
増え続けている最中、考えうる自己防衛手段は、外出および人との接触機会を極力
避ける努力をし、引きこもるしかなさそうですしね。
それで、これまでストックした記録メディアからいくつかアニメ作品を見返すことが
今できていて、「幼女戦記」「宇宙よりも遠い場所」「魔法少女特殊戦あすか」と
続けざまに3作品を見倒しました。前2作品についてはこれまでも何度か紹介機会が
あったし、触れだすと際限なく話が止まらず前に進めないので、ここでは魔法~
に焦点を絞って話を進めます。
2019年放映の魔法~は、ブルーレイに残すか残さまいか迷った記憶があります。
理由の一つしては、このアニメがシリーズものだと錯覚したからで、なぜかって、
まず冒頭、これまでのあらすじが語られるところから作品が始まるからなんです。
前作が存在する場合、単体でこれだけ残すのはちょっとつらいんですよね。
『異世界から侵攻を受け、通常兵器が無効化され太刀打ちできない人類は、侵略を
快く思わない別の異世界からの支援で魔法少女を誕生、結集させ抵抗、激しい戦闘で
多くの同胞が命を散らせる中、残った5人の戦士(のちマジカル・ファイブと呼ばれる)
が奮戦、ラスボスを倒し、人類はかろうじて勝利をおさめ、世界に再び平和が戻る。
しかし、戦いに疲れ果てたリーダー格・あすかは一線を退き、普通の高校生に戻る…』
ところから引き続いて新たな物語が始まる出だしでした。このあらすじで描かれる
過去の戦闘シーンはその後もたびたびフラッシュバックされ挿入、切りとられた一部の
回想場面だけみてもかなり過酷な戦いだったことがうかがい知れるなど、ストーリーも
練られていて興味深く、てっきり第一期が存在するものだと思い込んだのです。
迷った別の負の理由としては、彼女らのコスチュームが奇抜すぎる点だったでしょうか。
主人公ラプチャー☆あすかはメイド服、コンビを組むウォーナース☆くるみはナース服
なんですよね! 魔法少女のいずれもが肉感的な美少女ぞろいで、不健全な男子である
わたくしなどは鼻の下を長くし喜びもしましょう。だがしかしですよ、それにつけても、
そこまで(主に)男性ファン向けサービスショットを入れなくてもいいと思うのです。
エロい演出がちょっと多すぎるような気がして、そんな視聴者迎合みえみえの作品は、
私としては逆に評価を下げるし、自己基準に抵触するように思えたんですね。
しかしその負を差し引いても保存したのは、設定やストーリーがおもしろかったのと、
バトルシーン、アクションが迫力満点だったからです。ダークでグロい魔法少女もの、
過激なバイオレンスシーンが多く、一般向けとは言い難く正視できないような悲惨な
場面もあります。原作者の深見真さんはよく見聞きするお名前だと思ったら、人気作
「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズなどで知られた方で、なるほどどうりで考証、
筋書きがしっかりしているはずです。なので、そこまで彼女らの衣装をおふざけにせず、
美少女ものを強調しなくても、十二分に楽しめるのではとも考えますが、一方相当
ヘビーで残虐な内容であることも間違いなく、学園における友人らとの束の間の息抜き、
はしゃぐ場面や麗しい容姿が、それを和らげ中和していることもまた事実でしょう。
今回番組のHPなどを確認して判明したのは、この作品がシリーズでなく、単体作品で
あったことです。これには驚きました。挿入部の出来事だけで十分2クール分くらいの
アニメ作品がつくれそうな興味深い設定、内容なのですから、もったいない気もします。
しかもこの作品でも敵との戦いは終結していない訳で、前後合わせると相当な分量となり、
シリーズ化してもいい気がします。なるほど、逆に単体作品だとすると、今更ながら
このアニメは構成がかなりしっかり練り込まれていたことを再認識します。劇場版
並みのテンポよさで、説明足らず気味に展開早く話が進み、また、「第一期を見ていたら
もっとこのあたり突っ込んだ話がわかるんだろうな」と思わせつつ、実は前作などなく、
それでも視聴者を置き去りにしない、計算ずくでプロットが仕上げられたのでしょう。
この作品が放映時どれくらい支持を集めたのかを私は知りません。しかし、「鬼滅の刃」の
ように国民に広く知れ渡ったわけでないのは違いなく、シリーズ化されたり、劇場版が
つくられない限り、番宣を兼ねる再放映されることもまずなくて、そのまま一部のファン
以外には忘れ去られ消えてしまうアニメはごまんとあって、それがつくづく惜しいし、
この作品もそうしたひとつなのかもしれません。鬼滅や「呪術廻戦」のように幅広く
認知される突出した人気有名作品以外、多くが使い捨てられ、忘れ去られる現状を憂います。
戦いから退き、普通の学園生活に溶け込もうとするあすかは、異世界から非合法に手に入れた
魔法力を行使する闇の組織「バベル旅団」に対し、学友の危険を救ったのを契機に魔法少女に
復活、自衛隊特殊作戦部隊へと参加、再び過酷な戦闘へと身を投じることになります。
魔法少女らもめっぽう強いが敵の魔力もそれを凌駕するほど強烈で、味方陣営にも多大な
犠牲を出しながら、ギリギリ紙一重で繰り広げられる戦闘シーンはかなり激しく見ごたえが
あります。あすかの武器、コンパクトな刃物がかっこよく、それを指で勢いよくグルグル回す
シーンにしびれますが、よい子は真似しないほうがいいでしょう。私がもし同じアクションを
しようとすると、指が何本あっても足りなさそうです。
改めて最終話を見ると、今度の新たな敵との戦いは始まったばかりであることが示唆されて
いますし、原作(マンガ?)もまだ先があるようなので、続編・第二期制作を心待ちに
したいと思います。見逃した方は、そのタイミングでの第一期の再放映も期待しましょう。
度重なる誤報、訂正してお詫び申し上げます。
月刊誌版のJAF Mateがまたまた届けられたことに一番驚いてるのが当の本人です。
今度の今度こそ、月刊誌版としては最後になるんでしょうねえ?? 自信をなくします。
なるほど、学校でテスト結果が悪かったはずですわ、この読解力、理解力のなさではねえ。
話を逸らす意味で、モンベルの会員誌OUTWARDが一足早く衣替えしたことに触れて
おきます。ふたまわりくらい大きな紙面に変更されたのです。内容には大きな変化はない
ようで、質感としては前のほうが良かった印象です。ただしこれは慣れの問題でしょう。
大判になったことで、表紙の表裏を目いっぱいに使い掲載される岩合光昭さんの写真が
迫力を増しました。モンベルは岩合さんの写真を使い続けるようだけど、JAFのほうは
季刊誌になったらどうするんだろう?
パンフレット関連掲載ついでです、先日郵便局の窓口でもらってきたパンフも
載せておきましょう。今月17日から窓口やATMでの取り扱いが大きく変わった
お知らせで、ざっくり見て、そのいずれもが利用者の負担が増すものばかりです。
たとえば、これまで無料だった硬貨の取扱に料金がかかるようになります。
私は学生の頃小銭入れを持ち歩く習慣がなく、外出から戻った際にポケットで
じゃらじゃらしている小銭をそのまままとめてファンタの1リットル瓶に
投げ込んでいました。それがいっぱいになり郵便局窓口へ持ち込むと、機器が
自動で選別し集計、その額をそのまま普通預金にしていました(預金が目的
でなかったけど、両替だけだとさすがに気が引けたので…)。そういうことも
できなくなりますね。最近は現金でやりとりする機会がめっぽう減ったので、
小銭もあまり増えません。時代の流れと言えばそれまでなんですがね。
駅やショッピングセンターなどに設置のATMでは、時間帯や曜日により手数料が
発生するようで、これまでのように気楽に利用できなくなります。経費削減が
主目的とはいえ世知辛いですよねえ。
柏書房から出ている復刻シリーズ「横溝正史少年小説コレクション 日下三蔵編」を
まとめて5冊お借りしました。貸出期間内にすべてを読み切るのは困難だと思いつつ、
それでも全5巻借りたのは、表紙絵をまとめて写真に収めてみたかった私の身勝手なエゴと、
もしかしたら図書館などの公共施設が閉鎖される可能性を先読みしたからです。コロナ禍で
ひっ迫する保健所などの業務応援に職員が派遣されることで、その他の緊急性のない施設は
一時的に閉鎖があり得るかもと考え、多めに借りておこうとしたのですね。この先、
そういう緊迫した事態にならないことを祈りたいのですが、オミクロン株の感染力は
予想以上に強力で、社会生活が滞らないかを心配しますよね(和歌山県では、橋本市の
図書館が閉鎖されたと、今日のニュースで流れていました)。
ところがこのシリーズ、実は全部で7巻あるようで、発売前なのかここにはまだ配布されて
おらず、そろっていないみたいです。残りはまた別の機会ということで…
巻末の編集者の解説によると、1,2巻は金田一耕助登場もの、3巻が由利先生もの、
4~6巻は三津木俊介もの、そして7巻にはその他ノンシリーズものが収録されている
ようです。
前に述べたように、乱歩の少年探偵団シリーズ同様、横溝さんによる少年向け小説も
あまり期待しないほうがいいかもしれません。小学校高学年~せいぜい高校生くらい
までが読者対象だと思われ、常々大人向けの横溝作品に親しんでいる身には、残虐な
描写は控えめで、艶っぽい話もほぼ皆無でしょうから、比べるとかなり物足りなく
感じるはずです。なにも、特別スプラッターなものを好むわけではないにしてもね。
推理小説というよりは、冒険小説的な筋書きのものがほとんどでないでしょうか。
私も横溝版少年向けをいくつか所蔵していて、3,4冊だと思っていたら、並べてみると
計7冊ありました。表題だけだと、一致しているのは「迷宮の扉」と「夜光怪人」の
2巻だけですね。タイトル作以外にもそれぞれに数種類ずつ同時収録作品があるので、
すり合わせてみると、おそらくはすべて新編コレクションに包括されるはずです。
さあ、さっそく「怪獣男爵」から読み始めてみましょう。もしかしたらいずれまた、読後の
感想などお伝えすることになりますか。
次に図書館でお借りしたのは「だから殺せなかった 一本木透(いっぽんぎ とおる)著」
です。朝日新聞紙上の書評欄で見かけ、読んでみたいと思ったのがきっかけでした。
このところ、「日本沈没」「ボーン・コレクター」と立て続けに、作者の取材能力の
すごさに唸りっぱなしで、このだから~でも舞台となる新聞社内の状況が事細かに描写され、
その精緻さにまず驚きます。ただし、一本木さんは元々新聞記者だったそうなので専門家、
それくらいの知識量は当然と言えば当然でしょうか。ご本人?がそのまま一本木透名義で
主役というのも意表を突きますよね。
劇場型犯罪(連続殺人事件)の犯人が大手新聞社へ投稿、犯人に指名された一人の記者が
続く犯罪を阻止するべく犯人と論戦、心理戦を繰り広げるスリリングな展開の推理小説です。
登場人物の過去と現在が交差、新聞報道をめぐる生々しい手法、裏事情がリアルに再現され、
読み手を飽きさせず、とてもおもしろく読めました。
真犯人は、ある人物に濡れ衣を着せて自分を蚊帳の外に置く決着を目論みますが、惜しむ
なくはその手口がかなり大胆すぎて無理があり、警察やマスコミもいったんは騙されても、
アリバイなどを念入りに調べると、その人物が犯人でないことを割と早く見破られるのでは
ないかと思いました。また、犯人と紙面上で対峙した記者が、最終局面で突然名探偵で
あるかの如く豹変し推理を披露、真犯人を追い詰めるのが唐突すぎて、ちょっと違和感が
ありましたかね。しかしこれらの批評はやや重箱の隅を楊枝でほじくる感じでしょうか、
気にはなりましたが全体の評価を大きく落とすものではなかったです。
事件が解決を見た後も、新事実が発覚、二転三転さらに物語を動かして、読者の興味を
最後まで衰えさせない工夫も心地よく、余韻を持たせた締めくくり方もいいと思いました。
(ブログ記事「非色」から引き続いて始まります)
ところで、有吉さんと言えば、2021年12月4日付け朝日新聞土曜別刷り版be内の
コラム「歴史のダイヤグラム」に、そのお姿の写真が掲載されていました。1974年
(昭和49年)の参院選に立候補した紀平悌子氏(写真左から2人目)を応援演説する
有吉さん(同3人目)がそれです。
この応援のいきさつは、小説「複合汚染」の冒頭に延々と挿入されているエピソードで、
実際に写真(画像)でそのシーンを見られたことに、私としては少々興奮気味でした。
複合~出だしを飾る、この演説へ繰り出す羽目になる前後の丁々発止なやりとりが大変
おもしろく、一連の流れの中には若き日の菅直人氏(まさかのちに総理大臣になるとは、
有吉さんもびっくりでしょうけど)まで登場するなど、とても興味深いお話が展開されます。
この街頭演説中に気分が悪くなったこと(頭痛を発症)をきっかけに、環境問題への関心を
深めていくことになり、このあと本題へ続くのはいいとして、スリリングな選挙運動の話題は
雲散霧消し、ついに最後まで小説の中には再登場しないのが、残念と言えば残念なんですよね。
歴史~は政治学者の原武史さん(相当な鉄道マニアでもあるみたいです)が歴史上の出来事を
鉄道と絡ませながら読み解いていくコラムで、鉄道にも歴史にも詳しくない私には、ちんぷん
かんぷんなまま終わることもありますが、独特の視点から解説される裏歴史的なエピソードは
多くが意表を突く形で再現、構成されておりとても興味深く、拝読するのが楽しみな記事です。
朝日読者でない方でも、特に鉄道好きのお方は、これまでの連載が「歴史のダイヤグラム」
として本になってまとめられているので、書店などで目を通されることをお勧めします。
今回の記事に有吉さんが出てきたのは、複合~内で、彼女が東京の東側と西側で雰囲気が
違うことに気づいたくだりがあるからで、杉並区(西側)では演説の手応えを感じたのに、
江東区(東側)では「誰も私の小説を読んでいないのではないか」と疑うくらい反応が鈍い
ことを悟ったのです。原さんは、これを地上駅と地下駅の多さの違いが原因だろうとし、
東京の東側は地上駅が少なく、駅前広場のような公共空間がないために演説は駅から少し
離れた地点で行うことになり、これが関係していたと思われると分析されました。広場や
ロータリーのない地下駅は、人々を集める公共空間になりにくく、地上の駅前に相当する
ような空間があればいいのにと、コラムは結ばれています。
今回図書館でお借りしたのは、「非色(ひしょく) 有吉佐和子著」です。NHKニュース
(関西ローカル?)で紹介されていたのが読みたくなったきっかけで、この本は20年くらい
絶版だったのが、昨秋復刻されるや話題になっているという放送内容でした。ここ数年、
アメリカを中心にBLM(ブラック・ライブズ・マター)運動が活発化し、日本にもその熱気が
伝わったことが記憶に冷めない中、遡ること60年近くも前に、人種や肌の色の違いによる
差別問題をテーマに鋭く切り込んだ小説が存在していたことが判明、時を経て発掘された
ことに、ある種の驚きと共に人々の関心を寄せ、取りざたされているようなのです。
戦後の混乱期、東京~ニューヨークを舞台に、黒人兵と結婚しハーフの親となった日本人
女性を主人公としてドラマが展開し、差別や偏見、貧困などと立ち向かいながらたくましく
生き抜く姿が描かれます。テーマが重いだけに、目を背けたくなるような描写や場面が
多々あって、けっして楽しいばかりの筋書きではなく、読み手側も暗たんたる心持ちに
押しつぶされそうになりながら、それでもページをめくる手を止めさせず一気呵成に
読ませてしまうのは、暗さを吹き飛ばさんばかりに物語自体がおもしろいからで、
これは、有吉さんのストーリーテラーぶりとその圧倒的な筆力の賜物なのでしょう。
主人公は黒人社会で暮らすことで差別される側でありながら、当時アメリカで黒人よりも
さらに蔑まれていた存在を、知らず内に自分も差別していることに気づき(差別の連鎖)、
また差別は肌の色だけでなく、使うもの使われるものの差で生まれるのではないかと考えたり
(現代で言う格差社会)、人種のるつぼニューヨークで現実と向き合い、様々な辛苦を
乗り越える過程で彼女自身も成長し、やがてワシントンに植えられた桜がすでに変質し、
日本におけるそれとはまるで別物であることに気づいたことで、夫は黒人で黒人の血を引く
子を持つ自分もすでに黒人ではないかと悟り、これまで以上にアメリカ社会に溶け込む
決意を固めます。有吉さんの小説に登場する女性は有吉さん自身が乗り移ったかのように
総じてタフである一方、男性はダメンズとされることがたいていで、生活能力の乏しい
私などは穴があったら入りたいのです。
この小説が描かれた時代背景と比べると、現在は一見差別問題の多くが解決しているように
見えるだけで、実はそれは表層的に過ぎず、本質は何も変わっていないことは、先のBLM
運動などを例に挙げるまでもないことでしょう。格差は広がるばかりですしね。公害問題、
高齢化社会、そして差別問題等々、有吉さんが捉える視点は非常に鋭く、また、恒久的な
課題であることがよくわかります。
和歌山の郷土作家である有吉さん、同じく、漫画家の田村由美さんも和歌山市出身だと
最近知り、これまで以上に親しみを感じています。とても人気があるお方のようで、現在
「ミステリと言う勿れ(なかれ)」を原作とするドラマが放映中のようです。私が見ている
アニメ作品では「7SEEDS」ですかね。今のところ第二期までが放映され、第三期を
心待ちにしているところです。
話が予想以上に長引きましたので、以下は「歴史のダイヤグラム」の表題で、
次の記事へ引き継いで掲載します。