著者:徳渕真利子 メディアファクトリー刊 952円(税別)
初版刊行 : 2007年3月6日
入手版 : 2007年3月28日(第2刷)
表帯コピー : 22歳、職場のトップに!!
裏帯コピー : 新幹線が好き、
人に喜んでもらうのは、もっと好き
この本を読み終えた今、僕はとても反省をしている。
何についてかといえば、先日書いた書評(リッツ・カールトン
20の秘密(ミスティーク))についてである。
この中で、サービスの質について語った際に、居酒屋チェーン店
などでのおざなりな「いらっしゃいませ~」とリッツのそれとは
根本的に異なる、という類の話を原著で著者が紹介されていた
ものを、取り上げた。
そのときは自分としても、さも有りなんと、無批判にそのまま引用
していたのだが、この本を読了した後は考え方を見直さざるを
得なくなった。
著者は、東海道新幹線のパーサーである。
パーサーとは。
あの重たげなワゴンを押して車内を周り、座席で寛ぐ僕達にビールや
オツマミ、コーヒーにサンドイッチ、お弁当を運んできてくれる
仕事である。
それはそれで大変な仕事だと思うが、リッツ・カールトンの高付加
価値型サービスの話を読了した直後だけに、所謂マス向けサービスに
どこまでの期待をしてよいものやら、という思いも交錯しつつ、
手に取ったのが本書であった。
が、そこには、パーサーという仕事に真正面から向き合い、
自らが成し得るサービスとは何かを常に追い求める一人の人間の
姿があった。
その、彼女の頑張り度合いを計るメジャーとして、判りやすい
エピソードがある。
彼女は、株式会社ジェイアール東海パッセンジャーによる新幹線
パーサーのアルバイトに1年弱ほど従事した後に、同社へ正社員
として入社。
その僅か4ヵ月後には、車内販売ランキングでトップに躍り出る
ことになるのである。
しかも、車内平均売り上げからトリプルオーダー(つまりは、
人の三倍売っている!)というとてつもない業績を挙げて、
である。
まったく、貴方はかのシャー・アズナブルか?と言いたくなる
ような数字である。
なぜ、アルバイトからの経歴を含めても、1年半もこの仕事に
従事していない彼女が、それほどまでの好成績を上げることが
出来たのか?
その答えが本書で明示されている訳ではない。
当たり前のことを、当たり前に。
そう繰り返される彼女の言葉の中にこそ、その答えが潜んでいる。
例えば、パーサーの研修でも教えられるという接客の5S。
Study(学習)、Sincerity(誠実)、Smile(笑顔)、
Speedy(迅速)、Smartness(機転)
上記は、新幹線の乗務員全般に向けたものらしいが、パーサーには
これに加えて、更に5Aというものがある、という。
頭にくるな、慌てるな、焦るな、諦めるな、当てにするな
これら全てを『当たり前のように』こなしていった結果が、
先の成績を生み出す源泉だとすれば、そこには正にリッツの
従業員のそれとなんら変わらぬサービスマンとしての魂の
発露がそこにある。
元より、全ての従業員が同じテンションで仕事を行えている
のであれば、全員の売り上げが彼女と近似値となるとも言える
訳であり、その意味でも全従業員に均質に最上級のサービス
精神を求め、また従業員もそれに応えているリッツとは、
確かに組織の総和としてのサービスレベルは異なるのかもしれない。
それでも。
こうした高貴な(この言葉、ここで使うことは間違いでは無い
と思う)魂を有して業務に従事している方々が、マス向け
サービスの中にもいらっしゃると判った以上、冒頭に書いた
とおり、全てのマス向けサービス業の品質がおざなりなもの
とも取れる発言をそのまま引用したのは、大きな間違いだった
と深く反省し、お詫びする次第である。
その彼女も。
今でこそ、パーサーという仕事が自分にとって天職であり、
働く喜びを日々感じている様が、本書にも活き活きと記されて
いるが。
学校を出て最初の就職では、どうしても職場に馴染めず出社拒否
にまでなり、退職するという挫折を経験している。
元々、接客業が好きで、そうした専門学校まで行き、更には、
第一希望であるホテルに就職できた彼女でさえ、そうなのである。
その彼女が、今は水を得た魚のように働く喜びを享受出来ている
ということを。
もっと、真剣に僕達は考えないといけない。
それは何も、安易な転職を無責任に推奨するものではない。
が、しかし。
その一方で、自分に真摯に向き合うこと。
何が自分がしたいのかを真剣に考え、その実現に向けて時間を
投じることこそが、人生を楽しむ秘訣なのだ、ということ。
そうしたことを、常に脳裏において、かつ重くなり過ぎずに。
全ての、頑張る人へ。
Fight!
拓郎版ファイト!
こちらは本家版。
中島みゆき by ファイト (2007ライブ)
(この稿、了)
(付記)
僕は、どちらかといえば東京-大阪の往復は飛行機派だった。
でも、今度東京へ行くときには新幹線にしよう。
我ながら、単純だけれど(笑)。
山下達郎を思い出すタイトルは、ご愛嬌?(笑)
メディア・ファクトリーといえば、今までけらえいこさんの
漫画でくらいしか意識していなかったんだけれど、
こんなシリーズも手がけているのね。
でもって、しっかりCAも押さえているとは。
まあ戦略としては当然なんだけど。
やるなあ。メディア・ファクトリー。
初版刊行 : 2007年3月6日
入手版 : 2007年3月28日(第2刷)
表帯コピー : 22歳、職場のトップに!!
裏帯コピー : 新幹線が好き、
人に喜んでもらうのは、もっと好き
この本を読み終えた今、僕はとても反省をしている。
何についてかといえば、先日書いた書評(リッツ・カールトン
20の秘密(ミスティーク))についてである。
この中で、サービスの質について語った際に、居酒屋チェーン店
などでのおざなりな「いらっしゃいませ~」とリッツのそれとは
根本的に異なる、という類の話を原著で著者が紹介されていた
ものを、取り上げた。
そのときは自分としても、さも有りなんと、無批判にそのまま引用
していたのだが、この本を読了した後は考え方を見直さざるを
得なくなった。
著者は、東海道新幹線のパーサーである。
パーサーとは。
あの重たげなワゴンを押して車内を周り、座席で寛ぐ僕達にビールや
オツマミ、コーヒーにサンドイッチ、お弁当を運んできてくれる
仕事である。
それはそれで大変な仕事だと思うが、リッツ・カールトンの高付加
価値型サービスの話を読了した直後だけに、所謂マス向けサービスに
どこまでの期待をしてよいものやら、という思いも交錯しつつ、
手に取ったのが本書であった。
が、そこには、パーサーという仕事に真正面から向き合い、
自らが成し得るサービスとは何かを常に追い求める一人の人間の
姿があった。
その、彼女の頑張り度合いを計るメジャーとして、判りやすい
エピソードがある。
彼女は、株式会社ジェイアール東海パッセンジャーによる新幹線
パーサーのアルバイトに1年弱ほど従事した後に、同社へ正社員
として入社。
その僅か4ヵ月後には、車内販売ランキングでトップに躍り出る
ことになるのである。
しかも、車内平均売り上げからトリプルオーダー(つまりは、
人の三倍売っている!)というとてつもない業績を挙げて、
である。
まったく、貴方はかのシャー・アズナブルか?と言いたくなる
ような数字である。
なぜ、アルバイトからの経歴を含めても、1年半もこの仕事に
従事していない彼女が、それほどまでの好成績を上げることが
出来たのか?
その答えが本書で明示されている訳ではない。
当たり前のことを、当たり前に。
そう繰り返される彼女の言葉の中にこそ、その答えが潜んでいる。
例えば、パーサーの研修でも教えられるという接客の5S。
Study(学習)、Sincerity(誠実)、Smile(笑顔)、
Speedy(迅速)、Smartness(機転)
上記は、新幹線の乗務員全般に向けたものらしいが、パーサーには
これに加えて、更に5Aというものがある、という。
頭にくるな、慌てるな、焦るな、諦めるな、当てにするな
これら全てを『当たり前のように』こなしていった結果が、
先の成績を生み出す源泉だとすれば、そこには正にリッツの
従業員のそれとなんら変わらぬサービスマンとしての魂の
発露がそこにある。
元より、全ての従業員が同じテンションで仕事を行えている
のであれば、全員の売り上げが彼女と近似値となるとも言える
訳であり、その意味でも全従業員に均質に最上級のサービス
精神を求め、また従業員もそれに応えているリッツとは、
確かに組織の総和としてのサービスレベルは異なるのかもしれない。
それでも。
こうした高貴な(この言葉、ここで使うことは間違いでは無い
と思う)魂を有して業務に従事している方々が、マス向け
サービスの中にもいらっしゃると判った以上、冒頭に書いた
とおり、全てのマス向けサービス業の品質がおざなりなもの
とも取れる発言をそのまま引用したのは、大きな間違いだった
と深く反省し、お詫びする次第である。
その彼女も。
今でこそ、パーサーという仕事が自分にとって天職であり、
働く喜びを日々感じている様が、本書にも活き活きと記されて
いるが。
学校を出て最初の就職では、どうしても職場に馴染めず出社拒否
にまでなり、退職するという挫折を経験している。
元々、接客業が好きで、そうした専門学校まで行き、更には、
第一希望であるホテルに就職できた彼女でさえ、そうなのである。
その彼女が、今は水を得た魚のように働く喜びを享受出来ている
ということを。
もっと、真剣に僕達は考えないといけない。
それは何も、安易な転職を無責任に推奨するものではない。
が、しかし。
その一方で、自分に真摯に向き合うこと。
何が自分がしたいのかを真剣に考え、その実現に向けて時間を
投じることこそが、人生を楽しむ秘訣なのだ、ということ。
そうしたことを、常に脳裏において、かつ重くなり過ぎずに。
全ての、頑張る人へ。
Fight!
拓郎版ファイト!
こちらは本家版。
中島みゆき by ファイト (2007ライブ)
(この稿、了)
(付記)
僕は、どちらかといえば東京-大阪の往復は飛行機派だった。
でも、今度東京へ行くときには新幹線にしよう。
我ながら、単純だけれど(笑)。
山下達郎を思い出すタイトルは、ご愛嬌?(笑)
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メディア・ファクトリーといえば、今までけらえいこさんの
漫画でくらいしか意識していなかったんだけれど、
こんなシリーズも手がけているのね。
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でもって、しっかりCAも押さえているとは。
まあ戦略としては当然なんだけど。
やるなあ。メディア・ファクトリー。
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CAさんもいいですよね~。
でも、羽田-大阪間だと忙しくて、ゆっくり話しが出来る時間が無いことが残念です。
やはり、グアム行きの3時間くらい無いとねぇ。
>シャドー81さん
ははは。
珍しく先読みさせていただきましたか?
宜しければ、今度お貸ししますよ。
3倍の秘密?それはね…(んがんぐ)。
この本、数年前に某弁天の本屋で見つけて以来、買おう買おうと思ってそのままに。
MOLTAさんも書いているように、この本が出てから「XXガール」の本が増えましたね。
あの閉鎖的な中で人の3倍売り上げるのは驚異的。観察力がその要因の1つらしいけど・・・あっ、言わないでね。いつか読まないといけないから。
CAもプロ意識をもって働かれてますよ。
飛行機は60分勝負、がんばってください。
MOLTA氏なら、非常口付近のCAと向かい合う席をキープされていることと思います。