活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

宇宙を識るということ  60億Kmを旅して-「はやぶさ」の帰還、そして新たなる旅立ち-(その2)

2010-07-19 01:09:24 | 自然の海
                (TOP画像提供:JAXA)

日時:平成22年7月8日(木) 午後4時~5時
場所:NEC関西支社(大阪市OBP内)
講座タイトル:NECソリューション公開講座 in 関西2010
       「『はやぶさ』の帰還、そして新たな旅立ち」
話者:小笠原雅弘(日本電気航空宇宙システム株式会社 
                   宇宙・情報システム事業部)

サブタイトル:
 2010年6月13日、深夜。
 ウルル・カタジュの上空を二条の流れ星が西から東へ流れた。
 一個は途中で爆発を繰り返しながら砂漠の闇に消えていった。
 そして小さな輝きだけが残った。
 60億Kmもの旅をして「はやぶさ」が届けてくれたものは…



■宇宙を識るということ


少し出遅れてしまったために。
プロジェクターで紹介されている日本の衛星たちは、座席を探し
がてらチラ見したときの「おおすみ」から、
既に「あかつき」まで進んでしまっている。

ちなみに。
紹介された衛星達は、以下のとおり(の筈)。

 ・「おおすみ」
   言わずと知れた、国産第一号の人工衛星。
   バランシェ・ファティマにおけるクーンお姉さまのような
   存在と言えばよいだろうか。
   想定以上の高熱の影響による電池の電圧低下によって、
   打ち上げから僅か15時間程度で、その命の灯は消えた。
   (ちなみに、本来の電池寿命でも30時間程度ではある)

   もっとも。
   停波後も、機体は超楕円形の周回軌道を飛び続けた後に、
   2003年に大気圏に突入し、故郷へと還って来た。

   先日、その突入シーンを巻頭に持ってきたMMD「イト
   カワをねらえ!第二話」がニコニコ動画上で公開され、
   その着眼点の素晴らしさに、多くの衛星ファンを落涙させた。
【探査機はやぶさ】 「イトカワをねらえ!」第二話【MMD】


   JAXAのHP上に、当時開発に携わった井上浩三郎氏に
   よる開発~運用秘話が掲載
されており、興味深い。

 ・「すいせい」,「さきがけ」の双子っ娘
   ハレー彗星探査用として、欧米各国の探査機と伍して
   チャレンジした双子っ娘。
   その大きさも、ましてや装甲も、欧米のソレとは比較に
   ならない程のレベルでしかなかったが、立派に仕事を
   成し遂げてくれた健気な子である…。

   いかん。衛星萌図鑑のイメージから抜けられなくなって
   しまった(笑)。

   ちなみに、そのときの探査機群は、ハレー艦隊と称せ
   られている。
 
   なかなか、壮観な呼称ではないか。


 ・「ひてん
   本邦初の工学実験衛星として、MUSES-Aという
   本名を持つ。
   つまりは、やはりMUSESの名を冠する「はやぶさ」の
   直系のご先祖様である。
   (ちなみに、MUSES-Bは、美しい羽(アンテナ)を
    持つ電波天文衛星「はるか」である。)

   彼女のフライトは、「ひてんの舞い」という異名を持つ。
   それは、彼女の検証ミッションが、
      ① 自転制御
      ② スイングバイ制御
   という二つの航法に関わるものであり、かつそれを優美
   かつ見事に成功させたことに起因する。

   余話ではあるが。
   やはりJAXAのHPにある井上浩三郎氏のコラムにて、
   ひてんを共同開発したドイツはミュンヘン大学の研究者
   クラウディア・ケスラーさんが、内之浦の旅館にて女将
   に和服を着せていただき、喜んでひてんの舞いを舞った
   と記載されてもいる…。


と。
このまま思い入れのままに書き連ねていくと、全然話が進まないので。
以降は、はしょって筆を進めていく。

ようやくと、「かぐや」「きずな」の登場であるが。
この辺りから、やっとこちらも席についてじっくりとお話を
伺う体制が整ったところである。

(ただ、「ひてん」を紹介される際に、プロジェクターに
 ひてんの舞いと書かれてあったのは、着席のどさくさ時では 
 あったが、鮮烈に印象に残っている)

この。
「かぐや」と「きずな」のスライドにて。
NECがプライムメーカーとして、システムのまとめを担当した
という記載が為されてあった。

ちなみに、このプライムメーカーという言葉のもつ意味は。
いわば、特定の分野(この場合はシステム開発)における総主幹
(座長)という意である。

ただ、ここには問題も多くあり。

メーカー側の持つノウハウや仕様に関する決定権と、JAXA側の
それらとをどうリンクさせていくか?という点について軽く議論
された証跡が、こちらの議事録に残っている

(文科省宇宙開発委員会 平成15年第7回計画・評価部会議事録)


まあ、ここではそこまで踏み込んだ話とはならずに。
NECがその技術力を発揮して、衛星開発に貢献してきた軌跡を
トレースして紹介していただく形となっている。

そして。
最後に紹介されたのが、「あかつき」「IKAROS」そして
いぶき」である。

特に「あかつき」は。
金星観測を目的として、現在宇宙空間を飛行中であり。
今年12月に金星に到着後は、様々な観測を行う予定である。

その金星の大気は90気圧。炭酸ガス濃度は96%。
翻って地球を見てみれば。
大気は1気圧。炭酸ガス濃度は0.038%である。

現在、炭酸ガス濃度の上昇による地球温暖化が問題となっているが、
これはコンマ3桁目の数値の推移が取り沙汰されているのであって。

それから見れば、金星が如何に凄まじい環境であるかがよく分かる。
何せ、表面温度は500度という、鉛の融点をも上回る状況なので
あるから。

この金星は、遠い将来の温暖化が進展した地球を指し示す姿なのかも
知れず。
そうした意味で、金星の現状を調査することは地球そのものを理解
するために役に立つのだと。

そして。
「あかつき」が未来の地球像を観測するとすれば。
「いぶき」は現在のリアルな地球像を観測する衛星である。


「はやぶさ」の帰還後。
概ねの世間の反応は好意的なものだったが。

中には。
宇宙の彼方にある小惑星の岩片を拾ってくることに、
160億円もかける意義が分からない。
それだけの金があれば、どれだけ今困っている人々の生活に報いる
ことが出来るかを考えれば、これは壮大な無駄遣いだ。

そう主張する人々もいた。

確かに、今の食事に事欠く人々にとって、金星の大気の組成や
高温を保持するコンディションの秘密を知ることの意義を説く
ことは困難を極めるだろう。

それでも。
科学技術がその責を担うのが、目先の状況に特化するものではなく、
むしろ過去と将来に跨るものだとすれば。

ここまでの技術力をその掌中にした我々人類が。
1000年スパンで子孫に対して何を残しておけるのかという
ことを考える時。

宇宙を識(し)るということの意義も、少しは理解と賛同を
得られるのではないだろうか?


(この稿、続く)

宇宙について造詣を深める




宇宙を開く 産業を拓く 日本の宇宙産業 Vol.1 (日本の宇宙産業 vol. 1)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
日経BP出版センター

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