活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

そして、企業の矜持 60億Kmを旅して-「はやぶさ」の帰還、そして新たなる旅立ち-(その10)<完>

2010-08-14 12:41:33 | 自然の海
                  ※ はやぶさ2の飛行想像図
                  (TOP画像提供:JAXA


日時:平成22年7月8日(木) 午後4時~5時
場所:NEC関西支社(大阪市OBP内)
講座タイトル:NECソリューション公開講座 in 関西2010
       「『はやぶさ』の帰還、そして新たな旅立ち」
話者:小笠原雅弘(日本電気航空宇宙システム株式会社 
                   宇宙・情報システム事業部)

サブタイトル:
 2010年6月13日、深夜。
 ウルル・カタジュの上空を二条の流れ星が西から東へ流れた。
 一個は途中で爆発を繰り返しながら砂漠の闇に消えていった。
 そして小さな輝きだけが残った。
 60億Kmもの旅をして「はやぶさ」が届けてくれたものは…



■はやぶさプライムメーカとしての誇りと、宣伝効果

氏の講演も。
ようやく、終盤である。

話は、はやぶさの地球帰還時の模様に差し掛かる。

あの。
6月13日の夜。

時系列に沿って、はやぶさの最期が語られていく。

大気圏突入3時間前 高度6万キロで、カプセルを分離。
直径40cm。重さ約17Kgのコンテナを射出したはやぶさの
本体は、大きく傾斜して姿勢を崩す。

その角度は、40度にも及ぶ。

それは、単なる反動に過ぎないのだけれど。

あたかも。
はやぶさ自身が。
これで、ようやく全ての責務を果たすことが出来た、と。
体中から力が抜けて、崩れ落ちようとするかのよう…。


氏の講演では、語られることが無かったけれど。
ここであの、「ラストショット」が撮影されることとなる。


本来、コンテナを射出したはやぶさは。
もうアクティブなミッションは、全て完了。

この後は、その大気圏突入軌道が今後の飛行体の軌道分析のサンプル
データとして活用されるという、受動的なミッションのみ。

…にも関わらず。

川口PMをはじめとする関係者は。

 「はやぶさに、故郷の地球を一目見せてあげたい」

その思いから。

残ったキセノンガスの中和器(イオン源かな?)からの噴出による
姿勢変更によって。

はやぶさ下部に設置された航法カメラを使って、何とか彼の目に
地球を映し出そうとする。

このあたりの顛末は、JAXAではやぶさの姿勢軌道制御系の担当を
されていた橋本 樹明氏のコラムに詳述
されている。

そして。
幾度目かの、もう時間切れ寸前の最終トライで。
ようやくその瞳に映された地球。


(※ 画像提供:JAXA)


あまりにも多く語られた、この写真について。
ここで、これ以上の言は重ねない。

ただ。
多くの人が。

補正し、スミアを除いてカラー化した画像よりも。

この、はやぶさのモノクロアイで見たままの映像が美しいと語った
ことは、本当に嬉しく思う。

(補正してくださったAMICAサイエンスチームの横田さんのお仕事を
 云々するものでは、決してありません。
 これは、純粋に好みの問題なので…。失礼しました)



話を、氏の講演に戻そう。

22:46 高度600Km オーストラリア大陸へ到達
   51 高度200Km 大気圏突入
      突入角は、12度。
   52 高度090Km 隆盛として発光開始
      高度070Km 最大光度に到達
      そして、ばらばらになってはやぶさからカプセルが
      飛び出してきた!
      高度050Km 本体は溶融。
      カプセルは、ダークフライトへ。
      高度005Km パラシュート展開~着地


スライドを用いて、その顛末が語られる。

この。
はやぶさの物語をNECのホームページで特集として取り上げた
ところ。

アクセスサイトは、空前のヒット率を示したという。
(「おかえりなさい、『はやぶさ』 -7年間の旅の軌跡-」


通常。
企業の宣伝のためのサイトに、これほどまでにアクセスが集中する
ことはそうそう無いそうで。

少なくとも、NECとしては空前のヒットにより、望外の宣伝効果を
得られたこととなった。

確かに。
企業のHPを”敢えて”目的なしに訪問することなど、僕も滅多に
やらない。

大抵が、サポートや新製品に関する情報を求めてのことである。

そこに。
目的達成のための満足感はあっても、感動というキーワードがタグ
付けされることは、あまり無いのではないか。

ところが。
このNECのはやぶさHPからは、技術者の仕事に賭ける情熱と、
困難に立ち向かう闘志、そして達成感が溢れ出してくる。

企業にしてみれば、この上ないイメージ向上効果を得られたのでは
ないだろうか。
もちろん、その感覚は人に寄りけりだろうが…。

効果の程は、この講演会の客層を見てもよく分かる。

普段は、タウンミーティング等で見かける面々は、如何にもな
宇宙クラスタが多いのだけれど。

スーツにネクタイのビジネスマンが、このホール一杯を占めて
いるのだ。

もちろんそれは、NECのソリューションフェアの会場で行われて
いる講演会だからではあるが。

一昔前なら、この講演会にビジネスマンが集まること自体、まず
考えられなかったのではないか。

(実際。
 はやぶさ打ち上げ前に行われたJAXAのはやぶさに関する
 講演会では、数人しか観客が集まらなかったという話も
 聞いたことがある)


費用対効果の問題は、もちろんあるけれど。
少なくとも、NECははやぶさの帰還を最大限に活用した。
(無論、良い意味でね)

それは、言えると思うのだ。



■終章~未来への出港


この後、氏の講演は。

小惑星1999JU3を目指す、はやぶさ2に言及。

衝突体によるクレーター形成による内部物質調査等の特徴が
語られた後は。

直径50mの、大型ソーラーセイラーによる木星調査ミッション
へと。

今、飛んでいるイカロスが、直径14mであるから。

その差し渡しの大きさは、推して知るべしである。

この帆に、μ20イオンエンジンを搭載して実施される(かも知れない)
木星探査。

更に、2019年には水星探査の計画も、と。


夢は、果てしなく広がっていく。

正に、太陽系大航海時代の幕開けである。


そこに、NECはJAXAのパートナーとして、しっかりとサポートを
していくのだという主張が籠められた、よい講演だった。


講演の締めくくりは。

NECのHPで視聴できるNEC OnlineTV「7年間の宇宙の旅を
終えて。絆が生んだ奇跡の旅『HAYABUSA』」
を、スクリーン上映の
サービス付き。

いつもは、3インチ程のスケールでしか見れないこのドラマを、大画面で
観ることが出来て。

とても幸せな気分で、僕はこの講演会場を後にした。


(この稿、了)


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