活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

イトカワ上空決戦! 60億Kmを旅して-「はやぶさ」の帰還、そして新たなる旅立ち-(その4)

2010-07-22 02:35:19 | 自然の海
                ※ イトカワ上空のはやぶさ
                  (TOP画像提供:JAXA)


日時:平成22年7月8日(木) 午後4時~5時
場所:NEC関西支社(大阪市OBP内)
講座タイトル:NECソリューション公開講座 in 関西2010
       「『はやぶさ』の帰還、そして新たな旅立ち」
話者:小笠原雅弘(日本電気航空宇宙システム株式会社 
                   宇宙・情報システム事業部)

サブタイトル:
 2010年6月13日、深夜。
 ウルル・カタジュの上空を二条の流れ星が西から東へ流れた。
 一個は途中で爆発を繰り返しながら砂漠の闇に消えていった。
 そして小さな輝きだけが残った。
 60億Kmもの旅をして「はやぶさ」が届けてくれたものは…



■イトカワ上空決戦!

2005年11月20日26秒。

はやぶさは、最初のタッチダウンミッションを敢行する。

眼下に煌いて道標となってくれるのは、先に投下したターゲット
マーカー。
そこには、88万人の署名が無言の指向性灯台となって、
はやぶさを見つめている。

何度も無重力室にて行われた実験の成果を遺憾なく発揮し、
マーカーはきちんとイトカワ表面に固定している。

(画像提供:JAXA)

そのマーカーの輝きを本体下部のモニターで捉えつつ、
3cm/sにて降下していくはやぶさ。
(マーカー射出前は、12cm/S。
 その後、減速してホバリングに近い加速度となっている)


そして…。
そのトラブルは、起こった。

途中で姿勢制御をロストしたはやぶさは、イトカワに不時着。
…というよりも。
元より、安定した着陸機構など持ち得ないはやぶさである。
その実態は、転倒に近い。

そして。
その極低重力により20mほどバウンドした後に、イトカワ表面にて
小バウンドを繰り返し、やがて静止した。

グラフは、はやぶさ搭載の近距離レーザ距離計の計測値を示した
 もの(提供:JAXA
)。

 スライドの大画面でこのグラフが紹介され、氏が時間の経緯に沿って
 はやぶさの状況を解説していただいたときは、まるで当時のはやぶさの
 動きが目に見えるようであり、痛々しかった!)
  ※ コメント等は、ブログ主が追記

その時の状況は、後日になって分析されたはやぶさの様々な計測データ
によって、その方向や姿勢も含め、ほぼ正確に同定されている。



(画像提供:JAXA)

氏が、講演会の中で「ワンワン座り」と称したスタイルである。

((C)ビクターミュージックエンタテインメント株式会社
                  (及びビクター株式会社))


表現は可愛いが、はやぶさにとってはこの上ない脅威である。

何せ。
太陽に向いた方角では、イトカワの表面温度は約100度にも
達するのだ。

その表面に居続けることが、精密機器の塊であるはやぶさにとって
なんともないはずが無い。

しかも。
このとき。
はやぶさに何が起こっているのかを正確に把握し、理解している
ものは、JAXAもメーカーも含めて誰一人居なかった。

着地時の姿勢により、アンテナが地球を指向していない方向を
向いてしまっていたため、地球でははやぶさの状況が把握出来な
かったためである。

その間。
はやぶさは、その自律プログラムに則って化学スラスタを噴射し、
体制を立て直そうとする。

但し。
化学スラスタは、自律制御では一度に15msしか噴射しない
仕様となっており、それでは流石にイトカワから離脱するには
推力が足りない。
(地上からのコマンドによる離陸時には、連続噴射を行う)

そもそも。
はやぶさには、自分がイトカワ表面に軟着陸しているという認識
すら無い訳であるから。


結局。
状況が掴めないままに、緊急離脱コマンドを地球から送信。
ロウゲインアンテナでそれをキャッチしたはやぶさは、何とか
スラスタ噴射によってイトカワから離脱したものの、大きく
イトカワから距離を開けてしまう結果となった。

その後。
内部処理上のコリュージョン(競合)や、地上との通信状況の
悪化によって、はやぶさはセーフモードに入ってしまい。

地球との通信が回復し、はやぶさの状況が分かってきたのは
三日後のこと。

その時。
はやぶさは、何とイトカワから100Kmも離れた空間を漂って
いた。

誰もが。
はやぶさの状況を慮りながら。
これ以上無理はさせられないのでは?という思いと。
サンプルリターンのリトライを行いたい、という思いと。

両者の狭間で答えを出しあぐねていた時。

川口プロマネの

 「もう一回、やるぞ!」

の一声を受けて、ミッションの再挑戦が為されたことは、
有名な話である。


そして。
11月26日。
2回目のタッチダウン。

そこでのシーケンスは、正常だった(筈)である。

但し、試料採取用ペレット(弾丸)の射出が不明確なために、
サンプル回収カプセル内への試料収集はどこまで出来たのかは、
まだ分からない。

但し。
氏の解説によれば。

最初の不時着時には、はやぶさがイトカワ表面で二度のバウンドを
繰り返し、最後もかなり小刻みに動きながらやっと静止したために。

その際に舞いあがったであろう砂粒等のサンプルが格納されている
可能性の高い、カプセルA室への期待度は高いらしい。

#2度目のタッチダウンの際の試料は、B室に格納されている。
 現在、相模原のキュレーションルームにて開封されたのはこの
 B室のみである。
 今後の調査を、期待したい。


(この稿、続く)





見えてきた 太陽系の起源と進化 (別冊日経サイエンス 167)
日経サイエンス編集部
日本経済新聞出版社

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