活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

(改稿)仕事、ですから  60億Kmを旅して-「はやぶさ」の帰還、そして新たなる旅立ち-(その6)

2010-08-07 16:41:36 | 自然の海
              ※ JAXA 臼田宇宙空間観測所
                  (TOP画像提供:JAXA)


日時:平成22年7月8日(木) 午後4時~5時
場所:NEC関西支社(大阪市OBP内)
講座タイトル:NECソリューション公開講座 in 関西2010
       「『はやぶさ』の帰還、そして新たな旅立ち」
話者:小笠原雅弘(日本電気航空宇宙システム株式会社 
                   宇宙・情報システム事業部)

サブタイトル:
 2010年6月13日、深夜。
 ウルル・カタジュの上空を二条の流れ星が西から東へ流れた。
 一個は途中で爆発を繰り返しながら砂漠の闇に消えていった。
 そして小さな輝きだけが残った。
 60億Kmもの旅をして「はやぶさ」が届けてくれたものは…



■仕事、ですから

こうして。
イトカワに関する様々な新事実を突き止めることとなった、はやぶさ
ではあったが。

その一方、2年にも及ぶ旅路は、その小さな機体に深刻なトラブルを
引き起こしていた。

氏は。
使いたくないと言いながらも、”満身創痍”という言葉でもって
彼のコンディションを表現していたが…。


往路の旅路における、太陽フレアの影響。
姿勢制御の肝となるリアクションホイールの、相次ぐ故障。

そして。
イトカワへのタッチダウン直後のはやぶさに生じた、有象無象の
トラブル。

具体的には。
先のイトカワへの不時着の影響と思われる、化学燃料の全流出
(これは、化学スラスタが司る迅速な姿勢制御が不可能になった
ことを意味する)や、バッテリーの全放電、表面温度が100℃を
超えるイトカワの日照面への30分に及ぶ不時着の影響といった
様々な事象は。

既に様々なメディアで語られているため、ここで詳録はしない。



ただ。
この、トラブルに関して。
氏が今回の講演の中で紹介していただいた、とても印象的な
エピソードがあって。
初めての知見でもあったため、ここで紹介しておく。

それは。
氏が、はやぶさの運用班の方と交わした会話に関するもの。


この、運用班なる方々。
当初は、JAXAの臼田宇宙空間観測所の方々が対象と思って
いたが。

実際には、プライムメーカーであるNECの方も、運用業務に深く
関わっていたことが、NECの公式HPに連載中の『チーム「はやぶさ』
の挑戦 ~技術者が語り明かす~ 第4話 長い旅を支えし者たち」

にてはっきりと示されているため。

氏が会話を交わした方が、どの組織に属している方なのかを知る
術は無い。

が、氏の所属を考えれば、NECの中の人なのではないか、と思う。
となれば、必然的に上記にてリンクを張った、NECのHPに登場した
いずれかの方になるのかもしれない…。


前置きが長くなった。

話を、エピソードの紹介に戻そう。

はやぶさが行方不明となっていた2005年末から2006年初頭
にかけて。

彼を発見・救出すべく、必死の探索活動が続けられていた。

その運用班の方々も、はやぶさがいると思われるであろう方向の
虚空に向けて、日々彼に向けた信号送出を繰り返すという地道な
作業に勤しんでおられた。

音信不通となった状況から見て、ハイゲインはおろか、ローゲイン
アンテナでの通信も不可能と思われるため。

専ら、ローゲインアンテナで受信可能な1bit通信でのビーコン送出
作業である。

いつ報われるかも、分からない。
いや。
ひょとしたら。
もう返事はこないかもしれない作業を、ただ只管(ひたすら)に。

作業を繰り返しながら、自分達のやっていることがもう無駄でしか
ないのではないか?

そうした思いに運用班の方々が囚われていたとしても、不思議では
なかっただだろう。


後日。
氏が、その運用班の方にお話を伺う機会を得た際に。

かの足掛け7週間にも及ぶ、先の見えなかった状況での作業について、
どのような思いで日々行っておられたのか?と尋ねる機会があったそうな。

それに対する、運用班の人々の回答が奮っていた。



 「仕事、ですから。」



これを聞いて、皆さんはどのような印象をもたれただろうか?

ひょっとしたら。
そこに、ものすごくドライな割り切りを感じて、違和感を覚えた
人もいるかもしれないが…。


僕自身は。
この言葉を聴いた瞬間、思わず。

 (格好いいとは、こういうことさ)

という「紅の豚」のキャッチコピーを、脳内RTしてしまった次第
である。


そこには。
対象に対する余計な感情移入も、自らの作業に対する諦観や憐憫も
混在していない。

見事なまでの、割り切りである。


本来。
日々、声を掛け続ける対象に対して。
何らかの感情移入を持ったとしても、何らおかしくはない。

否。
持っていない訳が、無いのだ。


あの。
川口プロマネでさえ。
はやぶさの運用終了を間近に控えた、今年4月に。
彼を「君」と呼びかけ、その思いを縷々綴っているではないか。


それでも。
この、運用班の方は。
感情や感傷に押し流されることなく、自分の為すべき仕事を
きちんと定義し、そこに一切の雑念を違えず、その目的を完遂
させることに専心していた。


その努力の結果(成果といってもよい)が。
7週間もの音信不通を経て復活した、はやぶさとの交信だった
のである。

(この稿、続く)


(付記)

では。
はやぶさから返ってきた声とは、如何なるものなのか?
と思われた諸兄は。

以下を、ご照覧あれ。

[相模原キャンパス一般公開]はやぶさの声[小惑星探査機]







はやぶさ―不死身の探査機と宇宙研の物語 (幻冬舎新書)
吉田 武
幻冬舎

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« イトカワの秘密 60億Km... | トップ | 格好いいとは… 60億Kmを... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ご無沙汰です・・・ (南八尾電車区)
2010-08-07 17:59:48
 こんにちは。ご無沙汰です・・・
 ここのところ宇宙ネタが続いているご様子で、ブログ全体を眺めているだけで何だか宇宙空間に彷徨っているかのような錯覚に正直陥ったりもします(笑)

 記事最後に掲載されている動画、私も視聴させてもらいました。
 不規則に聞こえてくる「ピュピュッピュピュピュ…」という音───これこそが7週間を費やしてやっと消息を確認できた探査機「はやぶさ」からの信号だったんですね。

 それにしてもこの「はやぶさ」、数々のトラブルに見舞われながらも電波を出し続けてきたあたり、何だか満身創痍になりながらも最後の力を振り絞って自己の存在を主張し続けてきたような印象を受けるところです。

 今は持ち帰ったカプセル(採取容器)の、内容物の有無などが調べられているところのようですが、一つでも「イトカワ」から何かを持ち帰っていることを祈るばかりです。


P.S.
 まさぼんさまのブログサイトで「万九」合唱団員の抽選結果に関するお書き込みを拝見しました───「大阪8」クラスでのご当選、おめでとうございます《ご家族全員での当選との由で、何よりです》。
 余談ながら、私は今年、「大阪5」クラスにて受講許可が下りました。

 お互い、大阪城ホールを目指してがんばりましょう。
返信する
遅くなりました~ (MOLTA)
2010-08-14 12:50:53
コメント、ありがとうございます。
返信が遅くなり、申し訳ありません。

ようやく、このレポを書き上げることが出来てホッとしています。

拙ないブログですが、少しでも宇宙の風を感じていただければ、とても嬉しいです♪

ところで、南八尾電車区さんも万九当選されたんですね!

おめでとうございます♪

今年の12月は、皆で城ホールに集い、歌い上げましょう~。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

自然の海」カテゴリの最新記事