活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

FAKARAVA タヒチ夢環礁

2009-07-19 00:32:54 | 活字の海(読了編)
著者:館石昭  水中造形センター刊 価格:2800円(税別)
平成17年4月10日 初版刊行(入手版も同じ)


昨晩は、飲み過ぎた。
人の洪水に満ちた、なんばの夜。
目まぐるしく移り変わるネオンサイン。
あらゆる音がシャッフルされ、渦巻きとなって辺りを包む。


そこにあるものは、全てが人工のもの。

人が、生きる営みの結果として生み出してきた全てのもの。
それに包まれる感覚は、安心と逼塞の奇妙なアンビバレンツ。


そんな夜に疲れた今日。
書棚から取り出してきたのが、この写真集。


FAKARAVA(ファカラバ)とは、タヒチにある珊瑚環礁の島。

島での生活は、空港が設けられ、生活設備がある程度整った
北部と、電気も電話も通じていない南部とに大別される。

北部では、それほど不自由を感じることもないが、南部と
なると話は変わってくる。


何も、ない。

この言葉が、本当に相応しいと思えてくるこの地には、
それでも人の手垢に塗れていないものが、満ちている。


観光地としては、近辺にあるランギロアに軍配を上げる
人も多いと聞く。


設備の充足は元より、旅のもう一つの醍醐味である、
人との触れ合いを楽しむ機会すら、ファカラヴァの南部では
稀となってしまう。


何せ、島の人口が約700名程度なのに対して、南部には
100人に満たない人しかいないというのだ。


もっとも。
別に、厭世家を気取らなくとも、そうした”何も無さ”を
心から味わい時だって有るさ。

きっと。
誰にでも。


写真集は、そんなファカラバの様子を、水中から、あるいは
地上から、丹念に追っていく。

空の、蒼。
海の、藍。

目に入るもの全てが、青を基調にしているかのような色彩。

それに、砂浜の白が美しく映える。


南部で暮らす人々は。
アーミッシュどころか、内バドゥイの人々にも似た生活レベルだ。

電話なんて、無い。
飲み水は、雨を貯めた物。
食べるものは、今日食べる魚を、その分だけ。

そんな生活を守り続ける彼らと。
この都会の喧騒の中に身を置いて生きていく僕達と。

無論。
どちらが幸せか?なんて問いは、意味を為さない。

幸せを計る物差しに、定量的なメジャーなんて付いていない
のだから。

ただ。
背負うものが少ない分だけ。
彼らの方が、より幸せに近づきやすいのでは?

ふと。
そんなことを思いながら、ページを繰る。


いつまでも。
この、美しい風景が、この地球に残っていてくれますように。

ページを閉じて、背もたれに背中を預けて目を閉じる。

頭の中には、先ほどの青。藍。青。



ああ。
また、海に還りたくなってきた。


(この稿、了)


(付記)
フランス領のため、欧米のリゾート客は多いらしいけれど。
日本人の旅行客も、ちゃんと行っているようだ。

以下に、紹介しよう。

Naoko&Masaharuさんの、ファカラヴァ島の休日。
(もっとも、お二人はタヒチ在住)


fwhp3127さんの、ファカラヴァ・フレンチポリネシア 。



どちらも、とても見やすく、美しいページです。




FAKARAVA―タヒチ夢環礁
Akira Tateishi
水中造形センター

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