活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

サラリーマン合気道

2009-02-09 01:52:03 | 活字の海(読了編)
著者:箭内道彦(やないみちひこ) 幻冬舎刊 
   2008年9月10日初版刊行  低下1500円(税別)

サブタイトル:「流される」から遠くに行ける

帯コピー:相手の力を利用すれば実力以上の仕事ができる!
     気鋭のクリエイティブディレクターが挫折と失敗から
     編み出した45の仕事術

帯コピー(裏):自分の弱点を生かす逆転の発想術


最初に、言い切ってしまおう。
本書の白眉は、「はじめに」と「あとがき」にある。
ここに、本書のエッセンスのほぼ全てが凝縮されている。

では、そこだけ読めばよいのか?という疑問には、NOと答えざるを
得ないのだが。

なら、全然凝縮されていないじゃないか?と怒る無かれ。
ご指摘を受けて、先の表現を少し見直すとするならば、本書は
「はじめに」と「あとがき」を読んで、初めて読了したことになる。
とでも言い直そう。

それくらい、この短い二つのセンテンスに篭められた意味は大きい。

以下に、そのエッセンスを紹介しよう。

 「はじめに」から

  『サラリーマン合気道』。
  自分ひとりで思いつくことなんてあまりにも小さい。
  目の前の相手と向き合ってそこから生み出せばいい。
  そのことに気がついて僕は少し楽になりました。
  流されるからこそ遠くに行けるのだと。


 「あとがき」から

  自分ひとりで思いつくことなんてあまりにも小さい。
  だって天才でも手品師でもないんだから。
  相手と向き合って初めてそこから生み出せばいい。
  そのことに気がついて、少しでも楽になってもらえたら
  幸せです。
  ひとりでも多くの人に。

  『サラリーマン合気道』。
  やりたいことなんて何もない。
  僕たちは、流されるから遠くに行けるのです。

  がんじがらめになって自滅し続けたあのころの自分へ。



本編は、著者も「あとがき」で語っているとおり、文字通り著者が
これまでの人生で培っていた処世術であり、言わばツールである。

ツールは、所詮ツール。
字を書く道具に、鉛筆、筆、インクペン、その他数え切れない種類が
存在するように、そして、それらを適材適所で用いればよいように。

日常の筆記具として何が好みかは千差万別のように、これら処世に
関する著者が紹介したツールも、どう取り込んでいくかは読者が
自分で判断すればよいということ。

もっと言えば、普段はシャーペンを使っていても、とっておきの
時には万年筆を用いるという風に、著者のツールも使い分けていく
必要があるということ。

こう考えていくと、著者が主張する「自由に流される」という意味も、
その時々のシーケンスにおいて何がもっとも適しているかをきちんと
自分なりに判断していくべしという、確固たる信念が有ってのこと
だと、よく分かる。

そのあたりを弁えずに、上辺に表れたツールのイメージだけを見て
分かった気になることは、とても危険である。


だが、本書の凄いところは、こうした内容をごく平易な語り口で、
まるで静かな飲み屋で先輩とサシで飲んでいるときに、ふとした
きっかけから話題が広がった時に話してくれるかのような雰囲気で
伝えてくれることである。

その、決して上から大上段に覆いかぶさるような目線ではなく、
自分の失敗や後悔をも曝け出しながらも話してくれる諸処のツールは、
どれも濃い内容を持っている。

もう、Hのトンボ鉛筆から、パーカーのソリッドゴールドの超高級
万年筆までの(これは、チープ~高価という意味ではなく、その書き味
においての多様性と捕らえてほしいが)バリエーションが揃っている
感じである。

上述したように、ツールであることをきちんと認識して読めば、絶対に
これをやらねば、という変な先入観に拘束されることもないし、逆に
いつか自分もこの手を使ってやろうというワクワク感に充たされながら
読み進められること、請け合いである。

仕事が煮詰まって、現実逃避したくなったとき。
そこまでいかなくても、少し今の仕事の進め方に行き詰まりを感じたとき。

ふとその存在を思い出し、読み返したくなる。

僕にとって、そういった本を格納する本棚に、本書は格納された。

本書を紹介してくれたMixiの日記のオーナーに、感謝を。


(この稿、了)


付記
著者の箭内さんが発行するフリーペーパー「風とロック」。
読んでみたくなって検索してみたが…。
和歌山には、タワーレコードは無く、入手不可と判明。とほほ。
仕方が無い。週末に、大阪に出張ってみよう。


サラリーマン合気道―「流される」から遠くに行ける
箭内 道彦
幻冬舎

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