お月様は知っている
夜中路上でクラクションを鳴らされても退きもせず
泣きながら歩いていたことを
可愛いあの子が声掛けを待っているのを知っていても
一歩踏み込めないじれったさも
酒に背を押されないと勇気という名の勘違いも出せないことを
自分の何もかも腑に落ちず重たい店の扉を押してふらついて出ていったことを
ほんの一瞬の場面が遮り、後悔の波にのみ込まれて息もできないことを
なぜ涙が出るのかも思い出せないくらい遥かなる影を落としていることも
お月様はそっとのぞいている
知らないのは僕だけだ
街角の明かりも区別つけられないくせに
知らないと知っているような口ぶりをする
そんな僕にも微笑んでくれているのか呆れているのか
ぶつぶつと自問自答している姿さえも
お月様は知っている