思い出したくもない、悲しい思い出と共に。
ろくでもない、人生と、バラードと、カップ一杯のお酒と。
擦り切れた音の裏側に、アナログのスピーカーから挑発してくる影の音。
眠りたくとも眠らせない。
濡れたアスファルトの道で、吐いて、吐いて、涙がこぼれて。
安ホテルに、戻りたくても道が分からない。
どこにいても、どこにいなくても。
肉体も涙も思考も、相変わらずある。
耳から離れないあの音階も、今は思い出せない。
親の顔も、初恋のあの人の顔も。
オレはオカシクナッタノカ。
キチガイになったのか。
なのに、刺すような秋の夜風が、おれを正気にさせる。
子供。
イノセントな空間。
そこには入れない。
でっぷり太った大人には用はないのさ。
空間は、残されていない。