基地返還計画 返還と新基地のリンク放棄すべき
政府は、3月22日に新米軍基地建設のための辺野古沿岸の公有水面埋め立てを沖縄県に申請したのに続き、嘉手納以南の基地返還計画の決定に向けた米側との調整を本格化させた。本稿執筆時点では普天間基地を含め返還時期が具体的に明記されるかどうかは不明だが、辺野古新基地建設問題が大きな曲がり角に立ち至っていることは確かだ。
「パッケージ論」の名で知られたように、06年の在日米軍再編日米合意で海兵隊のグアム移転・普天間の辺野古移設・嘉手納以南返還はセットとされた。しかし、11年に14年の移設目標が断念されたのに続き、12年の日米合意ではパッケージ論が公式に放棄された。ところが今回、小野寺防衛相が「移設を進めることで嘉手納から南のかなりの基地が返還される」と語ったように、辺野古新基地建設と嘉手納以南返還とのリンクが公然と復活している。
少し思い出してみると、12年合意でも普天間返還と県内移設とのリンク自体は動いていない。パッケージ計画が断念された最大の背景はひとえに米側の事情、すなわち財政難であり、グアムの米軍施設建設計画の遅れだった。そこで米側は、日本の国外グアムの基地増強資金を日本が負担するという枠組みは維持したまま、海兵隊移転計画を手直しするとともに、96年SACO合意によれば遅くとも03年には返還されていたはずの普天間の補修費用70億円を日本に出させるという挙に出た。新基地が手に入らなければ普天間を使い続け、危険なオスプレイも飛ばす。どうせ費用は日本に請求すればいいのだという、居直り強盗に等しい論理だ。
誰にも予定を知らされることなくオスプレイが全国を低空飛行訓練で飛び回ることを唯々諾々(いいだくだく)と認める政府が、「主権回復」を祝うというのはたちの悪い冗談にしか聞こえない。だが、もともと「天皇メッセージ」に明らかなごとく沖縄の米軍占領継続は日本側も望んでいたことであり、主権回復は沖縄の回復へのワンステップだったのではなく、沖縄切り捨てとセットだったわけで、今度は切り捨ての対象がオスプレイの飛行ルートや訓練拠点のある地域に広がったということだ。
新たな基地返還計画なるものは、「日本を取り戻す」と豪語する安倍政権の「主権」をめぐる倒錯ぶりをあらためてあらわにするだろう。新基地建設断念・普天間早期返還こそが、本来あるべきワンセットなのだ。