滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

11月に公共交通のメッセとシンポジウム開催

2009-08-02 17:13:16 | 交通
日曜日の今日、ベルンは雨です。晴れたら電車でアルプスに高山植物を見に行こうと思っていましたが、予定中止になりました。で、ブログに向かっています。

スイスは日本とはまた違った意味で公共交通の天国です。地方分散型というか、全国に面的に公共交通網があるのと、地方でもそれなりに接続が良いのが魅力で、ヨーロッパの中でもスイス人の鉄道利用距離はダントツです。

そんなスイスの首都ベルンの見本市会場で、11月11~14日に公共交通のメッセと国際シンポジウム「スイストラフィック」が初開催されます。11日のシンポジウムでは、スイスやEUの公共交通のトップで活躍する経営者や政治家、行政代表者が、2030年の鉄道とバスをテーマに講演します。国際といいながら、言語がドイツ語とフランス語だけなのは残念ですが。また、メッセでは、ヨーロッパ中から、バス、鉄道、インフラ設備技術などの140社の展示が予定されています。

★スイストラフィックの案内(英語・ドイツ語・フランス語)http://www.suissetraffic.ch/desktopdefault.aspx/tabid-711/771_read-2034/


ちなみに同じベルンの見本市会場で、11月26~29日には、毎年恒例の「住宅建設・エネルギーメッセ」も開催されます。こちらはミネルギーやパッシブハウスといったヨーロッパの今の省エネルギー住宅とその建材や設備の傾向を手軽に把握できる、小規模ながら見ごたえのあるメッセです。
http://www.hausbaumesse.ch(ドイツ語・フランス語)

私は11月は講演旅行で日本に行っておりスイスには居ませんが、この季節にヨーロッパに滞在予定がある日本の環境関係者の方々には、ベルンにも足を伸ばしてみられることをお勧めします。

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バーゼルの木質発電・地域暖房センター

2009-08-01 16:47:09 | 再生可能エネルギー

スイスでもスイカと花火のシーズン、真っ盛りです。そんな折にやや季節外れな話題かもしれませんが、今日は20089月にオープンしたバーゼルの木質チップによる地域暖房・発電センターを紹介しましょう。

バーゼル木質発電所㈱は、木チップを燃料として熱と電力の供給を行っています。同社の株主は、北西スイスの森林所有者からなるラウリカ森林木材㈱、バーゼル・シュタット州の水道・エネルギー会社IWB、そしてバーゼル・ランド州のエネルギー会社EBLです。特にIWB社は、州の進歩的なエネルギー政策を受けて、90%を再生可能エネルギー源による電力供給を行っている会社として有名です。

この設備の何が珍しいかというと、木質チップ燃焼装置を既存のゴミ焼却場の建物の内部に組み込んでいる点です。スイスではすべてのゴミ焼却場で排熱利用が行われており、重要な再生可能エネルギー源になっています。同プロジェクトの立地場所に選ばれたゴミ焼却場でも、ゴミ発電と排熱による地域暖房網への熱供給を行ってきました。

そこに既にある発電設備や熱回収設備、地域暖房への熱供給回路、さらには高性能な煙突や敷地に接続する貨物列車の線路、そして運営に携わる人材までを、新しい木質バイオマス設備で共用することで、高価な設備コストを節約しています。

運転を開始してから20095月末までの一年目には、5万トンのチップを利用し、約5500世帯に熱と電力を供給しています。チップから作られる電気は、2008年度にスタートした再生可能電力への固定価格買取制度を利用して、kWhあたり0.180.27フランという値段で電力供給会社に買い取られています。

中央ヨーロッパではこの制度が、木質発電・暖房センターの経済的な運営の大前提となっています。この制度については、下記の櫻井啓一郎さんのサイトに詳しくありますのでご参照下さい。

http://ksakurai.nwr.jp/R/slides/WhyFIT/

また設備の実現に際しては、バーゼル・シュタット州から1160万フランの補助金が出ています。この補助金の財源は、同州の電力に上乗せされている再生可能エネルギーへの補助金税です。(これについては、拙著「サステイナブル・スイス」に詳しく紹介しています。)

燃料の安定供給のためにバーゼル木質発電所では、ラウリカ森林木材㈱を通して、持続可能な林業が営まれている140の森林所有者と10年間の燃料供給契約を交わしています。このようにして地元の森林には間伐材や端材による長期的な収入が保証されましたまた。

ちなみに、ナマゴミや間伐材といったバイオマスは限りある資源なので、設備間での資源の奪い合いや、遠くからの資源輸送を避けるためにも、大型バイオマス設備の実現においては、地域や地域間の総合的なエネルギー供給計画に基いて実現されることが重要だと思います。

また皆さんと訪ねてみたい施設が1つ増えました!

バーゼル木質発電所の2009年度経営レポート

http://www.iwb.ch/media/Holzkraftwerk/Dokumente/Halbjahresbericht_0905.pdf

設備の概要図

http://www.iwb.ch/de/bauundplanung.php


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