スイスでもスイカと花火のシーズン、真っ盛りです。そんな折にやや季節外れな話題かもしれませんが、今日は2008年9月にオープンしたバーゼルの木質チップによる地域暖房・発電センターを紹介しましょう。
バーゼル木質発電所㈱は、木チップを燃料として熱と電力の供給を行っています。同社の株主は、北西スイスの森林所有者からなるラウリカ森林木材㈱、バーゼル・シュタット州の水道・エネルギー会社IWB、そしてバーゼル・ランド州のエネルギー会社EBLです。特にIWB社は、州の進歩的なエネルギー政策を受けて、90%を再生可能エネルギー源による電力供給を行っている会社として有名です。
この設備の何が珍しいかというと、木質チップ燃焼装置を既存のゴミ焼却場の建物の内部に組み込んでいる点です。スイスではすべてのゴミ焼却場で排熱利用が行われており、重要な再生可能エネルギー源になっています。同プロジェクトの立地場所に選ばれたゴミ焼却場でも、ゴミ発電と排熱による地域暖房網への熱供給を行ってきました。
そこに既にある発電設備や熱回収設備、地域暖房への熱供給回路、さらには高性能な煙突や敷地に接続する貨物列車の線路、そして運営に携わる人材までを、新しい木質バイオマス設備で共用することで、高価な設備コストを節約しています。
運転を開始してから2009年5月末までの一年目には、5万トンのチップを利用し、約5500世帯に熱と電力を供給しています。チップから作られる電気は、2008年度にスタートした再生可能電力への固定価格買取制度を利用して、kWhあたり0.18~0.27フランという値段で電力供給会社に買い取られています。
中央ヨーロッパではこの制度が、木質発電・暖房センターの経済的な運営の大前提となっています。この制度については、下記の櫻井啓一郎さんのサイトに詳しくありますのでご参照下さい。
http://ksakurai.nwr.jp/R/slides/WhyFIT/
また設備の実現に際しては、バーゼル・シュタット州から1160万フランの補助金が出ています。この補助金の財源は、同州の電力に上乗せされている再生可能エネルギーへの補助金税です。(これについては、拙著「サステイナブル・スイス」に詳しく紹介しています。)
燃料の安定供給のためにバーゼル木質発電所では、ラウリカ森林木材㈱を通して、持続可能な林業が営まれている140の森林所有者と10年間の燃料供給契約を交わしています。このようにして地元の森林には間伐材や端材による長期的な収入が保証されましたまた。
ちなみに、ナマゴミや間伐材といったバイオマスは限りある資源なので、設備間での資源の奪い合いや、遠くからの資源輸送を避けるためにも、大型バイオマス設備の実現においては、地域や地域間の総合的なエネルギー供給計画に基いて実現されることが重要だと思います。
また皆さんと訪ねてみたい施設が1つ増えました!
バーゼル木質発電所の2009年度経営レポート
http://www.iwb.ch/media/Holzkraftwerk/Dokumente/Halbjahresbericht_0905.pdf
設備の概要図
http://www.iwb.ch/de/bauundplanung.php