今日は特別篇
昨日のサリチル酸からスピンオフして
解熱鎮痛剤について紹介しよう
日本でも柳の木が楊枝に使われていたように
世界各地で古くから
柳の木に沈痛作用があることは知られていた
19世紀はじめ
ヤナギの樹皮を煮て作った黄色の塊
柳の解熱沈痛成分にサリシンと名をつけた
サリシン
この分子はサリチル酸の配糖体
すなわちサリチル酸が糖と化合したものである
写真の左半分がサリチル酸、右がブドウ糖
1838年イタリア人ピエリが
サリシンからサリチル酸の精製に成功
サリチル酸
その針状の白い結晶が
人類が初めて手にした鎮痛剤だった
しかしサリチル酸は鎮痛作用と共に
フェノールの腐食性を合わせ持ち
胃に穴をあけて腹膜炎を起こすなどの
大きすぎる副作用を持っていた
ドイツのバイエル社は
アセチル酸の構造をちょっと変えることで
副作用を減らすことに成功した
世界で初めて合成された医薬品
アセチルサリチル酸である
彼らはそれをアスピリンという商標で販売する
アスピリン(アセチルサリチル酸)
アスピリンは現在でも使われている鎮痛剤だ
バファリンの優しさでない方の半分だ
アセチル化という改良では
サリチル酸の胃を荒らす副作用は
完全に無くすことはできなかったのだ
だから
バファリンの優しい半分は
胃を荒らさないための制酸剤である
その他にもサリチル酸を祖先にした
解熱鎮痛剤の改良は続いている
エテンザミド
アスピリンのカルボキシル基の部分に
アミノ基をつけたもの
セデス、ナロンエース、ノーシンなどに配合されている
アセトアミノフェン
これもセデスやノーシンに
配合されている
イブプロフェン
お尻がずいぶん重そうになった鎮痛剤だが
イブA、ナロンエースに使われている
これら新しい薬は
鎮痛作用の強化ではなく
副作用の軽減を図っている
マイルドアスピリンといった所か
アスピリンの合成ができなければ
これらお馴染みの薬もなかったかと思うと
感慨深いものがある
ちなみにサリチル酸からは
もう一つ
サリチル酸メチルという薬品も生まれている
サリチル酸メチル
これも沈痛作用があり
シップや軟膏などに配合されている
サロンパス、サロメチール、トクホン
サロメチールなんか
サリチル酸メチル→サリチル酸メチール→
サリメチール→サロメチール ばんざーい
って名づけられたのが丸わかりだね
というわけで人間達は
ヤナギ様に足を向けて寝られないのである