日々の戯れ

鈴柩の頼りない脳細胞に代わる記憶

鎮痛剤(分子模型)

2007-05-28 | 分子模型図鑑

今日は特別篇

昨日のサリチル酸からスピンオフして

解熱鎮痛剤について紹介しよう

 

日本でも柳の木が楊枝に使われていたように

世界各地で古くから

柳の木に沈痛作用があることは知られていた

 

19世紀はじめ

ヤナギの樹皮を煮て作った黄色の塊

柳の解熱沈痛成分にサリシンと名をつけた

 

サリシン

サリシン

この分子はサリチル酸の配糖体

すなわちサリチル酸が糖と化合したものである

写真の左半分がサリチル酸、右がブドウ糖

 

1838年イタリア人ピエリが

サリシンからサリチル酸の精製に成功

サリチル酸

サリチル酸

その針状の白い結晶が

人類が初めて手にした鎮痛剤だった

 

しかしサリチル酸は鎮痛作用と共に

フェノールの腐食性を合わせ持ち

胃に穴をあけて腹膜炎を起こすなどの

大きすぎる副作用を持っていた

 

ドイツのバイエル社は

アセチル酸の構造をちょっと変えることで

副作用を減らすことに成功した

世界で初めて合成された医薬品

アセチルサリチル酸である

彼らはそれをアスピリンという商標で販売する

アスピリン(アセチルサリチル酸)

アスピリン

アスピリンは現在でも使われている鎮痛剤だ

バファリンの優しさでない方の半分だ

アセチル化という改良では

サリチル酸の胃を荒らす副作用は

完全に無くすことはできなかったのだ

だから

バファリンの優しい半分は

胃を荒らさないための制酸剤である

 

その他にもサリチル酸を祖先にした

解熱鎮痛剤の改良は続いている

 

エテンザミド

エテンザミド

アスピリンのカルボキシル基の部分に

アミノ基をつけたもの

セデスナロンエースノーシンなどに配合されている

 

アセトアミノフェン

アセトアミノフェン

これもセデスノーシン

配合されている

 

イブプロフェン

イブプロフェン

お尻がずいぶん重そうになった鎮痛剤だが

イブAナロンエースに使われている

これら新しい薬は

鎮痛作用の強化ではなく

副作用の軽減を図っている

マイルドアスピリンといった所か

 

アスピリンの合成ができなければ

これらお馴染みの薬もなかったかと思うと

感慨深いものがある

 

ちなみにサリチル酸からは

もう一つ

サリチル酸メチルという薬品も生まれている

サリチル酸メチル

サリチル酸メチル

これも沈痛作用があり

シップや軟膏などに配合されている

サロンパスサロメチールトクホン

サロメチールなんか

サリチル酸メチル→サリチル酸メチール→ 

サリメチール→サロメチール ばんざーい

って名づけられたのが丸わかりだね

 

というわけで人間達は

ヤナギ様に足を向けて寝られないのである

コメント (2)
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