「本当はこの現実しかない、言い換えればメタロジックなんてものはないんだから」(佐々木敦著『ニッポンの思想』244ページより浅田彰の発言を抜粋)
というわけで6月26日に藝大に浅田彰がやってくるのだけれども、誰か藝大生でこの達観の人に向かって、「現実はひとつだなんて、僕はそうは思いません。僕は見ました、別の世界を。幻だったのかもしれませんが......」とか、そのくらいのことを言ってのける奴はいないのかね。「しかし僕は黒瀬陽平さんの『カオスラウンジ』を体験して、『モダニズムのハードコア』という浅田さんたちの理念こそが幻であったのだという結論に至りました」とか言って、いきなりカオスラウンジの宣言文を読み上げて、「MAD的な生成力というのは、浅田さん的な終わりの美学こそを終わらせるものなんです」とか言って、しまいには「ここまで来てもなお浅田さんは、荒唐無稽なファンタジーやMAD的な生成力に一度も振り切れることなく、自然主義的リアリズムとの「ズレ」程度の操作で、現実の過剰さに手が届くと思い込んでいるのではないでしょうか」と挑発する。「僕たちはいまや普通に複数の現実を生きているんです。浅田さんはそのことを分かっていない」と、そのくらいのことを言ってしまえる奴はいないのか。