SUPER FLAT 2

非ファルス的にもっこりするものを肯定せよ!(神の性的不器用あるいはその性的悪戯に由来するもの達について)

伝わらないメッセージ

2005年09月24日 | Weblog
 かつてアート系コミュニケーション・サイト『創楽』のマスターでもあった現代美術作家の増山士郎氏が、今月10月号の『美術手帖』誌に掲載された自分の個展『パーキィパーティ』展(ベルリン)に関する報告記事(P142)に対して憤慨している。
 増山氏によれば、そのインスタレーション作品のコンセプトは、あくまでも「オープニングパーティが社交場と化している美術業界の慣習を風刺する」ことであり、けっして「現代人の孤独を取り上げている」わけではないとしている。そして、そのような誤解はある程度仕方ないとはいえ作家本人にとっては辛いことだ、と自分のブログに記している。
 増山氏のインスタレーションの特徴は、自分の仕掛けたパロデックな「罠」に嵌った人々を、その現場の「外」から覗き込んでいやらしく笑ってみせるところにある。しかしこれまでの作品にしてもそうなのだが、増山氏はいつも「外」で笑っている自分自身が、そのまた「外の外」で笑われているということに気が付いていない。そのような意味で、中村達也氏の「だから罠をしかけているつもりの増山氏が、美術というフィールドの中で、罠にかけたつもりが、かかっている状態なのでは…」というブログでの指摘はまったく正しいと思われる。
 増山氏はただちに「デカルト劇場」(ダニエル・デネット)から出なくてはならないのだ。現在陥っている不毛で単純なメタ・ゲームから逃れるには、まず「メッセージは正しく伝わるかどうか分からない」ということを認めたうえで、社会空間におけるコミュニケーションあるいはネットワークの性質についてより深く考察してみることが必要だろう。でなければ増山氏自身がここで否定している「現代人の孤独」をそのまま自らパロディとして体現してしまうだけだ。

http://shiromasuyama.seesaa.net/