すぎなみ民営化反対通信

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田中杉並区長「地域図書館全館指定管理は慎重に進める」答弁の核心は? 

2010年09月18日 | 杉並田中区政批判

 

 2010年杉並区議会第3回定例会が現在開会中です。9月13日の本会議録画中継によれば、当サイトが重視して批判し絶対反対を表明してきた杉並区立地域図書館12館の全館指定管理者制度実施に関して、田中区長は一般質問で要旨以下の通り答弁しています。

地域図書館全館指定管理に関する田中区長の答弁

 図書館が指定管理者制度を導入したことに関する見解をお尋ねでございますが、図書館は区民の生涯にわたる学習と自立を支える教育施設であり、地域を支える情報拠点として多くの区民に利用されている事実があります。こうした重要性にかんがみ、地域図書館全館を指定管理者制度で運営するということについては慎重に進める必要があると考えています。

 教育委員会において、第三者機関による評価・検証をするということでありますが、十分な運営期間、少なくとも一年程度の運営期間を確保したうえで評価・検証を行い、進めていただきたいと考えています。

 私からは以上であり、・・・教育長よりお答えします。

 

 ◆なお田中区長が「教育長から」とした井出教育長の答弁では、図書館問題、指定管理者制度導入問題に関しての答弁はただの一言もありませんでした。また井出教育長が「中央図書館長より」とした和田中央図書館長の答弁では一般的抽象的な図書館像論があるのみで、地域図書館全館指定管理者制度導入に関して具体的に触れるところはただの一言もありませんでした。ここでは図書館指定管理問題に関連する骨子のみ紹介します。

井出教育長 

(※師範館等に関する答弁はあったが図書館に関する答弁はないままに・・・)私からは以上であり、図書館については中央図書館長よりお答えします。

和田中央図書館長

 魅力ある図書館づくりについてお尋ねですが、情報化社会の進展と社会状況の変化による新たな区民ニーズ、区民の問題解決、レファレンス、IT化に伴うデータベースの整備の課題等の地域ニーズに応えてまいります。図書館協議会、利用者懇談会の意見を聞き、意見交換して進めていきます。時代ニーズ、区民ニーズに応える図書館づくりを進めてまいります。

  既に今年4月1日から、阿佐谷、成田(丸善株式会社・東急コミュニティ共同事業体)、高井戸、宮前(大新東ヒューマンサービス株式会社・株式会社協栄共同事業体)永福、方南(株式会社ヴィアックス)の6館で前記括弧内の各社による指定管理が実施されています。

 残る西荻、高円寺(区直営、常勤館)柿木(区直営、非常勤館)、下井草(区直営、株式会社図書館流通センター業務委託)、南荻窪、今川(区直営、丸善株式会社・東急コミュニティ共同事業体業務委託)の6館については、2011年度指定管理者制度実施が区=教育委員会によって決定されています。いずれも前山田区政のもとで昨年6月決定されました。

 この実施計画工程から行くと昨年の場合にならえば、区は今秋9月には公募し10月第一次審査、11月最終選定と区議会議決承認を終えて選定された指定管理者が契約社員等のスタッフ募集・採用と社内研修等の必要な準備を終えて4月実施に備えなくてはなりません。また既に実施ている指定管理館6館の運営について区の第三者機関を設置して評価・検証するのであれば今秋には第三者機関を設置しなければ間に合いません。

 このこれまでの経過を前提にしての区長答弁です。

田中区長答弁は、決定されている全館指定管理を「慎重に進める」ための「評価・検証」。指定管理者制度導入そのものの凍結や見直しの可能性を視野に入れた「評価・検証」ではない!

 さまざまな点で独断的な区政運営として多数の批判、非難を浴びていた山田区長の後任として区長職に就いた田中区長は、ソフトランディングで田中区政をスタートさせるために、意識的に自ら行おうとしている施策と前山田区政を区別し、前区政の諸施策に対しては最大限「批判」し「見直し」「検証」のポーズをとっています。所信表明や本会議答弁でも、たとえば、▲減税基金条例については、金利動向や経済情勢からして長期間基金を積み立て運用することについての不安や懸念、危惧の意見もあり、区議会での集中審議でも紛糾しており、区の世論を二分しかねないことから、基金の積み立てについては差し控え、新たな構想の策定のための議論の中で検討していきたい(田中区長)、▲区独自の教員養成施設としてのすぎなみ師範館については今期をもって教員養成を終了する(井出教育長)、等々です。

 これらの区側答弁については、真に、そうした制度的仕組みを改廃するものであるのかという点で疑問とすべき点が付きまとっており批判すべき大きな問題点があります。しかし、ここでは煩雑を避けるために、ひとまずこの問題点は措いて論を進めます。)

 さて、それでは杉並の地域図書館全館指定管理制度実施についての前掲の区長答弁は、この制度の導入・実施そのものを「見直し」たり、いったん新たな実施を「凍結」し「差し控える」ものでしょうか?気の早い議員や会派は「図書館全館指定管理にブレーキ」「中央図書館長の答弁からも、ブレーキがかかったことは間違いない」と区長答弁を積極的肯定的に《よいこと》として評価しています。とんでもない!田中区長は、前山田区政のもとで決定された2010年度・2011年度の地域図書館12館全館の指定管理者制度の導入・実施に対してブレーキをかけたのではなく、アクセルを緩めて速度調節し速度を少し落とすと言っているに過ぎません。

 田中区長は「慎重に進める」「・・・進めていただきたい」と言っているのです。地域図書館全館への指定管理者制度の導入について、図書館への制度適用・導入そのものに吟味・検討すべき問題点があるので、いったん「(進めることを)差し控える」と言っているわけではありません。

 制度導入、全館指定管理を行うことが前提となっています。そのために既に実施している6館の運営について少なくとも1年間程度の運営期間を通して「評価・検証」を行うと言っているに過ぎません。「評価・検証」の対象的課題領域には公立図書館に指定管理者制度を導入することの当非、適否、是非の問題は含まれていません。

 急いで、今年4月の先行6館に続いて来年4月に残る6館を指定管理者制度を導入するために、半年間の短い運営期間で「評価・検証」を行うのではなく、(指定管理が軌道にのるまでは)少なくとも一年間は運営期間を確保して(「確保」というコトバを田中区長は使っています・・・指定管理者企業にそれだけの期間を保障し確保してあげる、という意味です)、「評価・検証」を行ったうえで残る6館の指定管理者選定に資するようにするというのが、区長答弁の真意です。

 全館指定管理を拙速で進めるより、スピードを少し緩めて、既に実施中の指定管理者企業にたっぷり時間を与え、経営・運営上の軌道に乗ってから、残る6館の導入を進め全館指定管理に持っていく方が賢明で得策と考えているということです。なまじ残る6館への来年度導入を自己目的化して、そこから「評価・検証」を急くと、先行6館の運営実体が不慣れで整っていない状況でボロが出る可能性がある。それが制度導入そのものの当非の議論となり反対運動に再び火がついてしまっては後行6館も危うくなり、ひいては先行6館に制度導入したことそのものも覆されかねない。これが「慎重に進める」の本音です。田中区政は反対運動の再燃・爆発を恐れています。問題が噴出・露呈して第三者機関も黙過・弥縫できなくなり、組合も後に退けなくなり、二進も三進もいかなくなることこそ回避しなければならない。だから円滑に進め確実に導入するためには「急がばまわれ」「時間をかける」というのが核心です。

田中区長の「慎重に進める」算段によっても、図書館全館指定管理は必ず破たんする 

 

 私たちは次のように断言して差し支えないと思います。田中区長は、運営期間を少なくとも一年間確保することで指定管理を軌道にのせてから円滑に残る6館の導入という算段でいますが、指定管理者制度で図書館を運営することによる矛盾は、期間が長くなればなるほど大きくなり、どんなに隠ぺいしても隠ぺいしきれない矛盾として必ず破たんします。田中区長は「急いては事をし損じる」という判断にたったのでしょうが、急いでも、期間を延ばしても、《図書館指定管理のかかえる根本的な矛盾》は火を噴くのです。田中区政は図書館指定管理問題から、まるごと民営化施策から必ずほころびを見せます。

 

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