すぎなみ民営化反対通信

東京・杉並発。「一人が万人のために、万人がひとりのために」をモットーに本当のことを伝え、共に歩んでいきたいと思います

指定管理現場・図書館からみる公務員制度解体・「道州制」・民営化

2010年09月25日 | 杉並図書館指定管理をめぐって

 前回記事(9月22日)からの続きです。

現場から見える「公務員制度改革」と「新しい公共」の正体

地域図書館12館全館指定管理で何がどうなるか?

 既に6館が今年4月から実施されている杉並区の地域図書館12館全館指定管理者制度導入がそのまま区の決定通り全館で実施されると結局どうなるのでしょうか?杉並区の図書館事業はどうなるのでしょうか。山田宏前区長に変わって新たに区長となった田中良区長は、開会中の区議会本会議で「慎重に実施する」と答弁していますが、あらためて、この地域図書館全館指定管理で何がどうなるのかという問題の結論と意味についてはっきりさせる必要があります。これだけ取り出してみれば、杉並区という自治体、その図書館という一事業で起きている問題ですが、杉並区全体という単位、東京都という単位であるいは国という単位に置き換えてみて同様のことが行われたらどうなるかという発想で考えてみてください。実にとてつもなく構造的な大攻撃であることが一目瞭然です。とはいえ、ここではまず杉並区に即して整理して、そこから論を進めましょう。

(1)図書館の仕事をことごとく外注・民営に

  杉並区立の中央図書館を含む13館による図書館事業は、地域図書館12館全館が指定管理者制度による民間企業の運営に変わることで、図書館事業の行政的中枢機能を除いて全部、民営化される。

 中央図書館は既に窓口業務は業務委託している。つまり、杉並区は、区立図書館のうち中央図書館の一部の中央機能を除く図書館としての図書館の仕事(業務)はことごとく外注し、民営にするということです。

(2)民間各社による業務・運営と「公立」の有名無実化

 中央図書館の窓口業務と今年4月1日実施の6館の運営が、株式会社図書館流通センター(TRC)、丸善株式会社、株式会社ヴィアックス、大新東ヒューマンサービス株式会社という民間企業によって現在担われているように、全館指定管理では、各館ごとに図書館業務・図書館運営が別々の民間各社によって行われる

 それでも「TRC図書館」「丸善図書館」「ヴィアックス図書館」・・・というわけにはいかず、あくまで杉並区立図書館だからそれぞれに異なる業務主体・運営主体たる各社を指導監督する位置と役割は中央図書館が担うということで中央的機能だけが残る。ここで重要な点は、仕事としての図書館業務における指揮命令権は各館ごとに民間各社に専属するということ。中央図書館といえども業務上の直接の指揮命令権を各館で行われる業務に対して持っていないということ。

 中央図書館の「指導監督」は名ばかりで、図書・資料等の共通データーベースの中央的管理機能と標準的ノウハウの政策的な助言機能、館長会議の定期的開催の主宰機能があるだけ。たとえば館長会議でも、各館で起きている現場の問題を区(自治体)=中央図書館はほとんどつかめない。そもそも図書館の生の仕事(業務)は管理職がデスクワークだけでつかむことのできない、現場で首を突っ込まなければ決して理解も解決もできない。おまけに館長会議に出てくる各館館長は互いに競い合っている民間各社。各社が自分が管理・運営する図書館で起きたネガティヴな問題を隠ぺいし、「うまくいっていること」「いかに問題が起きていないか」しか報告しないのは目に見えている。区の中央図書館長を通しての行政上の「指導監督」も、せいぜい、事務的レベルの連絡や(個人情報漏出等の)事故があった場合に注意することができる程度の「名ばかり指導監督」に過ぎない。

 指定管理者制度実施によって、「区立図書館」という名称は残っても、その「区立」とは区が区の財政で建て、これまで区の財政で整備してきた図書・資料を保管している施設(イレモノ)で区が指定管理費を出しているという以上の意味はない。

(3)ボトムラインの超低賃金で激務を担う典型的な非正規職場

   全館指定管理で起きる最大の激変は、図書館で業務に従事する労働者の賃金等の労働条件の問題です。中央図書館で前記した中央的機能に携わる職員だけが常勤の公務員各地域図書館館長と業務主任の計2、3名が民間(指定管理者企業)の契約社員でしかも基本的に非常勤、スタッフはすべてパート、アルバイト。中央図書館も前記公務員職員を除いて、パート・アルバイト。

 各社が出している求人情報によれば、館長や業務主任でも月額10数万円~20数万円パート、アルバイトの一般スタッフは時給800円台、高い場合でも900円台。図書館の仕事で重要な専門性の意味を持っていた司書資格と司書としての図書館実務経験も、時給でプラス10円~20円程度の加算に過ぎない。

 指定管理者制度の実施によって、図書館は典型的な非正規職場となる。図書館の仕事に携わる従事者の90%程度が低賃金で、年金も医療保険もない、雇用契約期間が数年~1年の明日なき不安定雇用の状態強いられる。時給800円台~900円台のパート、アルバイトも細切れシフト制、週勤日数上限があり、給与月額は4、5万円~10万円以下だ。これで生きていけるというのでしょうか?文字通りのワーキングプア職場です。

  しかも何か問題が発生し、運営能力が不適格と評価されたり、企業が図書館ビジネスとは別のビジネス等で経営破たんした場合には、指定が解除、契約打ち切りによって、企業が切られ、その瞬間、労働者は職を失う。

(4)これまでの図書館の職員(公務員)はどうなる?

  これまで地域図書館で働いていた職員はどうなるのか?区は全館指定管理者制度導入の際に、「解雇ではなく異動」とし、実際に本庁や他施設・部署へ「異動」しました。組合との労使交渉や議会答弁でも「非常勤は雇い止めにはしない」と確認しました。今度区長になった田中良も区職全般にわたることですが「クビにはしない。解雇はしない」と言っているようです。では地域図書館全館指定管理に伴う職員(常勤・非常勤)の「異動」は、これまでも普通に行っている区役所内の何年かおきの異動とかわりがないものなのでしょうか?そうではありません。

 まず田中区長の「クビはきらない、解雇はしない」から。ハッキリさせるべきですが、2011年には国家公務員法改正が行われ2012年度には実施されます。地方公務員法改正も同時に連動して強行してきます。そこでは、「協約締結権」を付与する代わりに公務員の賃金等の労働条件も解雇も自由にできる仕組みに変わります。田中区長が「地域図書館全館指定管理者制度の実施は慎重に進める」と答弁し「少なくとも(既に今年4月実施の6館の)一年程度の運営期間を確保して評価・検証して進めていく」と答弁したことにはウラがあり、そのウラとは、この解雇自由化の公務員制度改革を前提にしているということです。導入を既に決定済みの残る6館の実施に際しては、《公務員の身分保障》付きの「異動」ではなく職員のいったん全員解雇が計算されているということではないでしょうか。田中区長は法律の改正、公務員制度改革を楯に「クビにはしない、解雇はしない」の確認を必ず反古にしてきます。

 そもそも区は「コストダウン(経費縮減)効果」を目的として図書館全館指定管理を決定しました。田中良も「最小経費」を第一に掲げています。図書館事業で指定管理者制度実施でコストダウンしても、「異動」では他事業他部署でその「異動」職員分の人件費がかかり、区のトータルコストでは節減とはならない。私たちの批判の論点は「経費節減にはならないではないか」ではなく、「『異動』は全館指定管理のための当座のペテン。これは全員解雇攻撃の始まりだ、絶対反対」ということでなくてはなりません。

 さらに「異動」させられる現場の職員の実際の想いと鬱々とした不安の問題があります。「解雇だ」「クビだ」と言わなくても辞めたくなるように仕向ける「異動」は事実上の「クビ」ということにほかなりません。

  図書館の仕事に苦労に耐えて使命感と意欲をもって長年専念してきた司書の職員にとってはその仕事を奪われる、辞めさせられるということです。「異動」部署は民間で言う「異業種」のようなものです。パッと頭や気持ちの切り替えが簡単にいくわけではない。

 ② 区の本庁等の他の部署で「不向き」と一方的に評価され、さらに図書館での仕事の大変さに対するまったくの無理解と過小評価から「図書館なら勤まるだろう」と図書館に「異動」で配置されてきた職員にとって、目が回るような忙しさと利用者接遇の大変さに何とか慣れてきたところでの「異動」は図書館激務からの「解放」になるか。自分を「不向き」と言って図書館に異動させた本庁等のどこかの部署に戻されて果たしてそこにその人の「居場所」「仕事場」があるか。これは職員が自分から嫌になって辞めるように仕向けているということではないのか。辞めざるを得ないように追い込むこと、仕向けることもほとんどクビきりと同じではないか。

 つまり全館指定管理とは、現職員の全員クビきり、全員解雇だということです。それでも図書館で働きたい職員は、指定管理者(民間企業)に契約社員やパート・アルバイトで採用されるしか道がないということです。

(5)図書館の労働組合は一分会まるごと消えてなくなる

 これまで杉並区役所には杉並区職員労働組合(杉並区職労)があり、中央図書館と地域図書館には杉並区職労の組合員で構成する図書館分会がありました。12地域図書館の指定管理・民営化でこの図書館分会がなくなってしまいます。正確にいえば中央図書館に数名の組合員からなる分会が残るか、それもなくなるかということですが、要するに杉並区立図書館という中央図書館も含めて13の職場から、労働組合が一瞬で消えるということです。図書館職場から憲法28条に基づく団結権の保障がなくなるということです。

 全館指定管理のもとでは、労使関係はすべて各館ごとの指定管理者企業=民間各社と杉並のその図書館に派遣・配置される労働者の関係となります。これらの企業=使用者は図書館ビジネスを看板にしていますが実体は図書館サービススタッフの人材派遣会社です。契約社員にもパート、アルバイトにも自ら労働組合をつくらない限り、労働条件等の交渉を行うすべもありません。しかも組合の結成等を採用時にあらかじめ禁圧しています。指定管理者制度、民営化=非正規化とは労働者を団結させない、労働者の団結権を認めないということにほかなりません。

(6)地域コミュニティ支える図書館の役割の解体

 公立無料の図書館が、地域社会で果たしている役割はとてつもなく大きいし、今日ますます重要になっています。図書館に行けば、読んでみたい本や新聞全紙があり、知りたい情報とその材料・資料があり、問題解決の手掛かりを得ることができ、それを手助けしてくれる職員がいる、だから地域コミュニティの大切な拠り所となり、人々の集う場所となっている・・・・。この図書館のかけがえのない役割は、ひとえに図書館の仕事に公務として従事してきた司書をはじめとする職員の連綿たる仕事の組織的な蓄積と継承、その努力によって築き上げられ、培われ、守り抜かれてきた財産です。指定管理者制度の実施、図書館民営化はこの図書館の社会的役割を根こそぎ解体するもの。《図書館がなくなる》、域住民は《図書館を失う、奪われる》ということです。

 社会経済情勢の激変と生活状態の変化、情報の死活性の中で図書館に対する人々の要求はますます大きくなり、図書館を支える職員の仕事はますます質的な変化、量的な拡大、献身的な多忙化に直面しています。この時代と社会、地域の要請に図書館が応えるためには、職員を増員し、図書館事業の質量充実のための財政を強化する以外に道はないはずです。

 「最小経費で最大効果、多様な質の高いサービス」という指定管理者制度・民営化は、根本的に図書館の社会的役割と時代の要請に逆行しており、公立・無料という図書館の制度原則に敵対し阻害する反対物です。核心は、図書館を支える労働者に、生きていけないような労働条件を強い、図書館の仕事に責任をとれない職場環境と勤務体系を強いることで、図書館を土台から解体していくところにあります。区が言うように「多様な質の高い」図書館事業は、指定管理者制度・民営化では絶対にもたらすことはできません。これまで図書館職員の献身的努力によってギリギリに維持されてきた図書館の水準から後退し、それどころか図書館が図書館ではなくなってしまいます。公務員が優秀で民間が駄目だということではまったくありません。労働者のせいではなく、民営化のせいです。

(7)外部評価制度(第三者機関)は指定管理がひきおこす何事も解決しない

 縷々上記した指定管理者制度実施がもたらす幾多の大問題を外部評価制度や第三者機関が解決できるはずがありません。当サイトの前々回9月21日付の記事で詳細にあきらかにしている通りです。

  外部評価制度や第三者機関は、指定管理者制度の実施・継続を前提にして、当該指定管理者企業の運営が「コスト面」や「サービス面」で適切かどうか、改善すべき点があるかどうか、評価・検証し、不適切な点があれば改善を、その企業には運営をゆだね続けることができないとすれば指定解除を区に対して報告し、別の指定管理者に切り替えるように勧告するだけです。図書館を図書館たらしめている労働者の労働条件等についてはまったく関与しないし、予め切り捨てています。

政財界が言ってきた「新時代の日本的経営」、「この国のかたち」、菅民主党政権の「新しい公共」「公務員制度改革」

 図書館全館指定管理とは、こうしてみると、そのものズバリでこの国の政財界がそこに向かおうとしている国家経営戦略であることがわかります。

 ◆公務員は全員いったん解雇するということ。

 ◆これまで「公務」「住民の福祉」として行ってきた役所の仕事は全部民間企業が行うということ。

 ◆労働者の9割は超低賃金で不安定雇用、年金も医療保険もない、労働基本権が奪われている非正規職にすること

 ◆労働組合はなくする、つくらせない、つぶすということ

 ◆これまで住民の福祉とされてきたものがことごとくきりすてられ、焼け野原状態になるということ

 「地域主権改革」と呼ぼうが「道州制」と言おうが、「新しい公共」と言おうが、政財界が突き進んでいる道の行き着く先は、こうした社会です。

 企業がこの大恐慌時代に国際競争に打ち勝って利潤をあげ、日本が資本主義として生き残るためには、今までの制度を全部破壊しリセットしてそういう社会システムに切り替える。公務員制度とか地方自治とか住民の福祉とか労働基本権といったものは邪魔になった。公務員の身分保障を取っ払い全員解雇で公務員制度をいったん廃止しないかぎり労働者の9割非正規化という企業の「生き残り戦略」は成り立たない。

 これが政財界や新自由主義者が「地域主権改革」「この国のかたち」「道州制」「新しい公共」「公務員制度改革」等と言っている攻撃の同じ核心です。その考え方があからさまに政策化されたのが、杉並区の地域図書館全館指定管理だということです。

正規・非正規の垣根を超える労働者の団結、分断を超える労働者と住民の団結で公務員制度解体・民営化・地域図書館全館指定管理を打ち破ろう

 参院選惨敗以来、零落はなはだしく見る影もないのが山田宏氏。山田宏のホームページは参院選以来まったく更新されず放置されたままです。ところでこの杉並区立図書館の地域図書館12館全館指定管理者制度導入はこの山田前区政によって決定されたものです。

  特徴的だったのは、ほとんどの主要施策をセンセーショナルに大量の事前宣伝で周知して、その物量で施策を強行してきた山田前区長は、この図書館指定管理については黙っていきなり決定し、一方的に強行し、区議会で6館指定管理者の指定が議決承認されるまでは一言も触れてこなかったことです。そのためには、職員の雇用、身分に直接関係するものでありながら、それまでの諸施策の場合とは違って、労働組合への事前のいかなる通知もなしに一方的に強行してきたことです。

 ◆ 思い当たる伏線は山田区長の「これまでの一部署、一職場といったものではなく、(民営化については)ワープ(時空超越)といった制度まるごと、事業まるごとの単位で実施を考える必要がある」という趣旨の答弁にありました。その具体化がいきなりの地域図書館12館全館の指定管理者制度導入でした。いきなり決定、そして事業者募集、選定、区議会議決にいたるまで区長としては図書館問題に言及することもありませんでした。山田区長が初めて図書館全館指定管理について言及したのは、区議会議決後の広報すぎなみでした。明らかに「黙って強行し、指定管理者制度を導入してしまうこと」を山田区長はねらって、そうしてきたとしか考えられません。

 田中区長は、「慎重に進める」「第三者機関では少なくとも一年程度の運営期間を確保して評価・検証していただきたい」と全館指定管理者制度実施を「慎重に進める」ことを議会答弁で強調しています。これは田中区政が山田区政の暴走としての地域図書館全館指定管理にブレーキをかけたものではありません。実施のスピードを少し遅くしアクセルを緩めて推進するものであることは、9月18日付の記事でお伝えしています。

 私たちは、山田前区長の手法と田中区長の手法には違いがあるが、地域図書館全館指定管理者制度実施の攻撃の大きさ、激しさ、それゆえに大反対運動が必至であるという同じ認識に立ったうえでの推進・強行の手法の問題としてこの問題を考えます。山田前区長の「ワープ(時空超越)」に端的に表現されている問題とは、まさにこの記事の前半(1)~(7)の全館指定管理で何がどうなるのかのすさまじさの問題です。

 

 総反撃、大反対運動の展望、それをこじあけるヒントは、この山田認識、田中認識の中にもあります。これだけのとてつもない大きさ、激しさの攻撃が、大反対を呼び起こさないなどということは絶対にあり得ないという認識であり確信です。「おかしい!」の声、「理不尽だ!」の怒り、「こんな低賃金でやってられるか!生きさせろ」の叫び、「私たち司書の仕事を何と思っているのか!」「図書館を守れ!の声はすべて正義の叫びであり、すべて大反対闘争の原点です。カギは、違いは留保し、絶対反対の一点で一致団結すること。正規・非正規の分断、労働者と住民(地域の労働者住民)の分断を打ち破り、のりこえる声をあげ、絶対反対の一点で一致し運動をおこすことです。

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正規・非正規の分断こえて図書館民営化と闘おう

2010年09月22日 | 杉並図書館指定管理をめぐって

 前回(9月21日)記事からの続きです。

  ・・・・ということで、指定管理者制度とその導入としての杉並区立地域図書館全館指定管理とは、そのもとで生きるために働かざるを得ない派遣・非正規労働者にとって、突き詰めて考えれば考えるほど、この世の中をひっくり返さない限り、人間として生かされない=明日が見えない、持って行き場のない苦しさのみが増していく現実だということです。

 そもそも杉並区の12地域図書館全館指定管理の攻撃のもとで、指定管理下の図書館で働いている労働者はパート・アルバイトがスタッフの8~9割であり、その時給は、日本社会の標準時給である1400円~1500円台の6割そこそこであり、東京都の場合の今年の最低賃金である時給821円(30円アップしても821円)そこそこです。

 それは指定管理者企業が使いまわし・使い捨てで雇用する非正規職に限りません。いま正規職・常勤職である公務員労働者も、いま公務員・非常勤職もそこに突き落とすのが、民営化であり指定管理者制度だということです。

図書館まるごと民営化=全館指定管理に絶対反対!非正規職撤廃、指定管理者制度廃止の声をあげよう

 

 ところで、図書館全館指定管理をめぐる区長答弁を受けて、杉並区職労執行委員会では、「(「10月をめどに検討委員会をつくり検証を開始する」と6月24日の組合大会で出した方針を変更し)半年先に延びた。図書館分会を中心に指定管理者制度導入に反撃しよう」という方針を確認したようです。

 6月24日の杉並区職労組合大会では「指定管理者制度導入に反対するなら、10月では遅すぎる、間に合わないのではないか」という批判が代議員から出された経過があります。組合としての検討委員会の発足を区長答弁に合わせて先延ばしするようでは、「執行部は第三者機関任せで本気で阻止・反対する気などないのではないか」と批判の声が上がって来るのは当然です。

 指定管理者制度=まるごと民営化とは労働者と家族にとってその賃金では食っていけない総非正規職化です。しかし労働者(人間)である私たちは生きていかねばならない、家族を養わなくてはならない。そこから出てくるのは「やられてたまるか」ということでしょう。絶対反対ということでしょう。これは一歩も譲れない。「上(組合ダラ幹)」から起きない以上、《下=現場》からの反乱あるのみではないでしょうか?職場末端から声をあげ討論を開始し、現場からの闘いで反対闘争をつくりだす必要があります。今から直ちに絶対反対で闘いを開始し、「半年間」を図書館全職場、区職労一丸となった絶対反対の総決起のためにフルに活用することこそが求められていることではないでしょうか。

 私たちは次のように考えます。そもそも田中区長答弁で、先行6図書館の指定管理の実施以来一年間の運営期間を「第三者機関の設置」で「評価・検証」するとして、今秋事業者募集を先送りせざるを得なかったのも、昨年夏以来の反対闘争があり、図書館現場の労働者、地域の労働者住民が声をあげたからにほかなりません。闘いはやむにやまれぬ想いで現場の職員と地域の労働者住民が反対の声をあげたところから始まったのです。「第三者機関」は図書館全館指定管理の強行のために設置されるということだけははっきりしています。「第三者機関による評価・検証」に幻惑されることなく、昨年を上回る絶対反対の声を図書館職場、区全職場、区の図書館利用者から一層大きく上げていくことこそが、残る6館導入を阻み、12館全館指定管理と指定管理者制度そのものを打ち破っていく総反撃の道です。

図書館職員の全員「異動」、これは全員解雇・不安定雇用化の攻撃だ

 カギは図書館職場から指定管理者制度絶対反対の声をあげることにあります。先行6図書館から職員が全員「異動」させられています。「異動」に際して区は組合に対して非常勤等は雇い止めはしないと言っていましたが、前山田区政下の一方的な「異動」と前区政から田中区政への「転換」で今後の不安定雇用に対する先行き不安は本当に大きい。その想いが非常勤職場にも常勤職場にも渦巻いています。

 「最小経費・最大効果」という田中区政の経営刷新の指針から言えば、指定管理者制度実施で図書館行政のコスト削減ができてもそれまで図書館で働いていた職員を本庁や出先の他部署に「異動」するだけでは区にとってはトータルコストで圧縮に資するということにはなりません。ここから身分保障つきの「異動」ではなく、経営方針の変更を理由とした解雇に切りかえ、再任用の場合には常勤は非常勤に、非常勤の場合には指定管理者企業への採用に転換してくる可能性、あるいはもっと言えば常勤・非常勤まとめて一気に非正規職に突き落とすという可能性はきわめて高いと言わざるを得ません。非正規職か失業かという攻撃が職員には加えられてくるのは時間の問題と思われます。いま声をあげることこそ重要です。

 ですから、この闘いで、まだ指定管理に移行していない6館、とりわけ西荻、高円寺、柿木の常勤・非常勤館の決起が重要なことは言を待ちません。

超低賃金・不安定雇用の非正規職の職場決起は指定管理者制度の根幹揺るがす反乱

 同時に声を大にして訴え呼びかけたい点があります。既に指定管理が実施されている先行6館非正規職の労働者の皆さん、未実施の現在直営・業務委託中の下井草、今川、南荻窪の3館非正規職の労働者の皆さんの苦闘と連帯し、ともに闘いに立ち上がろうということです。正規職も常勤職も非常勤職も「いかなる身分保障」もない民間並みの非正規職におかれる。このとき重要な点は、「非正規職になりたくない」「非正規職はゴメンだ」ということではなく、非正規職になっても非正規職と団結して非正規職撤廃、全員正規雇用にしろと要求して闘うぞ、ということではないでしょうか。同じ労働者なのだから。

 この点こそが重要です。《資本主義》はそうやって、労働者が食っても生きてもいけない「工場法以前に戻す」ことによって「《墓掘り人》を生みだしている」(マルクス「共産党宣言」)のです。

 そのように考えると非正規職の決起が持っている根源的な社会転覆的な力は大きいし、「非正規職が明日は我が身」の正規職が学ぶべき点ではないでしょうか。正規・非正規、常勤・非常勤、官・民という支配階級がつくった分断の「垣根」を打ち破りましょう。ともにスクラムを組みましょう。 

 

★集会案内 

◆11月7日、日比谷野外音楽堂に結集を

  -国鉄1047名不当解雇撤回、民営化・非正規化をゆるすな-

 全国全世界から民営化・非正規化と闘っている労働者がこの集会に集います。仔細は下記チラシで。

http://www.doro-chiba.org/pdf/1107bira.pdf

◆10月3日 首都圏青年労働者集

 たたかう労組青年部をつくろう。非正規雇用‐派遣法撤廃へ‐

 10月3日(日)午後1時~ 千葉商工会議所第1ホール(JR千葉駅から10分、京成千葉中央駅から8分)仔細は集会実行委員会事務局080-4154-5604にお問い合わせを。「労働組合運動に関心、意欲のある人なら誰でも参加できる青年労働者のための青年労働者の手による集会」です(集会案内のちらしより引用・掲載、紹介させていただきました)

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図書館全館指定管理と「第三者機関」はワンセットの攻撃だ

2010年09月21日 | 杉並図書館指定管理をめぐって

 前回記事(9月18日)からの続きです。

 前回記事でお伝えした通り、田中区長は「教育委員会においては今後、第三者機関による評価・検証を行うということですが、十分な運営期間、少なくとも一年程度の運営期間を確保したうえで、評価、検証を行い、進めていただきたい」と答弁しています。今回は、この第三者機関について述べます。

絶対反対!民営化で図書館業務は全員非正規職に。官製ワーキングプア生みだす指定管理者制度を撤廃せよ

 

 図書館指定管理者制度実施との関係で区・教育委員会が設置しようとしている「第三者機関」が、田中区長所信表明で明らかにされた「最小経費で最大効果、多様な質の高いサービス」の観点・基準・ポイントで「評価・検証」を行う機関となることは明らかです。

「第三者機関」(外部評価制度)の役割と正体

 (1) 図書館指定管理の場合、「第三者機関」が「評価・検証」の第一のポイントとする「最小経費」とは、指定管理者企業に区が払う指定管理費をいかに安くできるかということです。

 (2) 「第三者機関」が「評価・検証」の第二のポイントとする「最大効果、多様な質の高いサービス」とは中央図書館長答弁で触れられているような時代ニーズ、区民ニーズ、地域ニーズに応えるサービス提供をいかに行い得ているかということです。田中区長が前区政を評価し継承すべき点とした「五つ星のサービス」になっているかどうかという点です。

    区内の図書館全館には「めざせ五つ星区役所」のポスターがずっと貼られています。図書館に即して具体的に挙げれば、区民(利用者)の問題解決に役立つ資料・情報の収集と提供、レファレンス能力、IT時代に即応したデーターベースから区民(利用者)に対する接遇満足度にまでわたる質の高度化、利用者からの苦情が寄せられるようなことがない、利用者に喜ばれる満足感のある「魅力的な図書館」ということになります。

 (3) しかし、ここには、図書館でこれらの仕事に従事するのは労働者である、その労働者に支払われる賃金は指定管理者企業が区から受け取る指定管理費から企業の儲け(利潤)を差し引いて支払う、企業が自由に決められる額だという賃金の問題があります。労働条件という根本的な問題があるのです。

 区長や政策経営部、行革担当部が「最小経費(低コスト)最大効果(多様な質の高いサービス)」というとき、そこで都合よく無視・抹殺されているのは、このコストで生計を左右されるのは労働者であり、この「サービス」を「提供」するためにどんなに努力を払おうとも不可能に近い課題を求められるのも労働者だということです。

   とうてい暮らしていけないような低賃金。バラバラの細切れシフトで責任ある仕事を行うこと自体が難しい職場。そういう職場で押し寄せる「ニーズ」にきりきり舞いになり、それでも「笑顔」で「接客」対応・解決し、そこにちょっとしたミスや利用者が不満をおぼえるようなことでもあればクレームが寄せられる・・・、それが指定管理の図書館で働く労働者の状態です。

    まず最初に賃金の問題

 当サイトで繰り返しお伝えしたように、時給800円台、まれに高くても900円台の超低賃金、司書の場合でも加算は時給でプラス10円~20円に過ぎないという賃金の問題です。

 区は区が雇用している図書館職員の給与等にかける総人件費より指定管理の方が低コストになるから指定管理者制度を導入する。しかも「最小経費・最大効果」で企業選定を行う以上、応募事業者の間で競争原理が働いて、指定管理費は区にとって安値買い叩きとなる。

  安値で指定管理者に選定された企業は、そこから儲けを出すために、企業は企業で低コストを追求し、時給を安くし、シフト制、ローテーション制、勤務日数も勤務時間も細切れの労働力配置をとることで常勤を最小にしほとんどをパート、アルバイトとして雇用する。指定管理者制度のもとでの労働条件とは、時給800円そこそこの超低賃金、年金も医療保険もない、雇用契約も短期間で明日の保証のない不安定雇用の非正規職の使いまわし・使い捨てにほかなりません。

 この構造が指定管理者制度や業務委託、民営化・民間委託化には不可避です。企業は、「図書館ビジネス」と呼んで全国3000図書館、1館で10人の従事者としても、《3万人労働力市場》になる」という位置づけで参入しています。《3万人労働力市場》とはどういうことか?指定管理費として自治体から企業に支払われるカネのうち、図書館業務に現場で従事する労働者への給与を差し引いた額が企業の儲けです。図書館指定管理に手をあげる企業は、早い話、専らマージン(中間搾取)による「儲け」をねらっているのです。

 どうやって指定管理者企業は儲けを大きくするのか。

  ▲ 自治体は指定管理者企業に支払う指定管理費を積算する際に、施設の保守に関わる維持費、従事者に対する指揮・命令・指導・監督、人事管理に対する企業への対価とともに幹部と従事者に企業から払われる給与の標準的算定を積算します。普通は自治体の積算するスタッフ一人当たりの給与は時給換算で1200円から1400円くらいになっています。

 ▲ ここからが最大の問題です。企業はスタッフ採用に際して時給800円台、高い場合でも9百数十円で求人情報を流し、その賃金で採用します。つまり時給換算でスタッフ一人当たり平均500円前後の「企業の儲け」となる。単純計算ですが、10人スタッフの場合1時間で5000円。シフト・ローテーションで実際にはもっと多くのスタッフが雇い入れられて働いていますが、実稼働人数は10人以上にはしませんから、図書館開館時間分(今は基本的に朝8時台始業から夜21時、遅い場合22時台終業の勤務)で1日1館で6万円の「企業の儲け」、月額にすれば休館日を月4、5日としても150万円以上の「儲け」になります。自治体が想定し積算している企業への企業利潤を含む対価としての利益以外に、これだけの「儲け」になります。

 ▲ 単純計算で10館の指定管理者になれば月1500万円、年1億8千万円もの搾取でその分大きな「儲け」を生みます。これは「すごい儲け」です。50館で年9億円、100館で年18億円にもなる。つまり図書館ビジネスとは、図書館の仕事自体からではなく、何館の指定管理がとれ、何人の従事者を得るかが目的となり、派遣館数、派遣人数で儲ける。人材派遣会社以外の何ものでもありません。だから「3万人労働力市場のシェア占有」というスローガンが出てくるのです。

② 次に図書館での仕事の問題

 図書館の仕事は、窓口対応や事務処理にとどまりません。専門職である司書をはじめとして全員が、学習・研修・習熟とチームプレー(職場の労働者同士の組織的有機的連携)、経験を通しての組織的な蓄積と継承性が、職場環境としても職場運営としても求められます。それなしにこれまで図書館が担い培ってきている社会的役割に応える図書館業務は実務的にも不可能です。実に大変な仕事です。そうした図書館の労働者の連綿と積み重ねられひきつがれてきた努力のおかげで私たちは知り、学び、問題解決の手掛かりを得る拠り所を身近な地域に図書館として持ち得ているわけです。

 区長や政策経営部や行革担当部の管理職・幹部は、図書館を図書館たらしめている人的組織的財産である図書館職員のこのような仕事について理解しているのでしょうか。本や資料の出し入れと記録のチェック、窓口受付程度、「サービスの向上」と言ってもせいぜい接遇の向上程度にしか考えていないのではないでしょうか。

 実際には、指定管理者制度のもとでは、図書館職場で仕事に就く労働者は、ひきつぎも申し送りもスタッフ会議もチームプレーも予めほとんど不可能な労働条件で細切れでバラバラに配置されて、前記したような仕事に従事し尽力しています。

 杉並区は最近とみに「司書配置率が高い」と「質の高さ」を強調していますが、指定管理者制度のもとでは司書もまた非正規職として仕事に継承性も組織性も有機性も保障されず、専門的資格職としての意欲も力も発揮しようにも発揮できない劣悪な労働条件のもとにおかれています。

③ 「最小経費、最大効果、多様で質の高いサービス」の核心

 結局、圧倒的に酷薄な労働条件で労働者に献身的な犠牲を強い、使いまわし使い捨てするものでしかありません。「図書館は指定管理者制度になじまない」とよく言われます。この指定管理者制度・民営化が、労働者の賃金等の労働条件の無視・蹂躙の極限的な犠牲のうえに、労働者に対して「時代ニーズ、地域ニーズ、住民ニーズに応えるサービス」を求めるというところに無理があるということです。

 図書館に対する「時代ニーズ」「社会ニーズ」は確かに大きくなっていjます。しかし、それは、医療・介護・保育・福祉もそうですが、公的責任において、自治体が正規職員を増員・拡充することによってしか解決できない問題です。

 指定管理者制度・民営化は逆に、図書館で働く労働者に劣悪な労働条件を強い、本来の図書館の仕事すらもとうてい担いきれないような過酷な困難を強いることで、図書館を支える土台をこわし、図書館を図書館ではなくしてしまうものです。「時代ニーズ、住民ニーズに応えるため」にと「民間のサービス提供のノウハウと力の積極的活用」をうたいながら、実際には社会的ニーズに応えることができない図書館へと変貌・変質、後退・解体させるものと言わねばなりません。

   ④ 「第三者機関」と指定管理は《まるごと民営化》推進の両輪だ

 「第三者機関」はこの根本問題を隠ぺいし、図書館で働く労働者の労働条件、労働基本権の問題を企業に丸投げすることによって、区がいかなる責任もとらないための仕組み、指定管理者制度の維持・継続・強行のための仕組みです。

 区が外部評価制度として「公正」さを装って設置する「第三者機関」が行うことは、「最小経費・最大効果、多様な質の高いサービス」の基準で指定管理者による運営を「評価・検証」し、不適切ならば改善を勧告し、必要なら指定を解除し、別企業を審査・選定するだけです。

 この基準に直接かつ根本的に関係してくる図書館で働く労働者の労働条件は、当該指定管理者企業と企業に雇用された労働者の労使関係の問題として、区=自治体から切り捨てられ、そこに区が関知・関与することは「法律上できない」ということを楯にとって、区は絶対に責任はとりません。

 この点は何度となく区の高政策経営部長や大藤行革担当部長が議会答弁(強弁)してきました。区は昨年夏の高円寺地域区民センターでの指定管理者・東宝クリーンサービスの給与未払い事件発覚した際もいっさいの責任を経営破たんした同社のせいにして「区は同社に適切に指導監督してきた」とシラを切りとおし、前掲の当該労使関係の問題として区の責任を否認し続けました。

 「第三者機関」を設置したところで、指定管理者制度が指定管理者制度であるかぎり、区がその制度を導入・実施する限り、前記したような指定管理者制度のもとでの労働条件の問題が改善されることは金輪際あり得ません。

 

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田中杉並区長「地域図書館全館指定管理は慎重に進める」答弁の核心は? 

2010年09月18日 | 杉並田中区政批判

 

 2010年杉並区議会第3回定例会が現在開会中です。9月13日の本会議録画中継によれば、当サイトが重視して批判し絶対反対を表明してきた杉並区立地域図書館12館の全館指定管理者制度実施に関して、田中区長は一般質問で要旨以下の通り答弁しています。

地域図書館全館指定管理に関する田中区長の答弁

 図書館が指定管理者制度を導入したことに関する見解をお尋ねでございますが、図書館は区民の生涯にわたる学習と自立を支える教育施設であり、地域を支える情報拠点として多くの区民に利用されている事実があります。こうした重要性にかんがみ、地域図書館全館を指定管理者制度で運営するということについては慎重に進める必要があると考えています。

 教育委員会において、第三者機関による評価・検証をするということでありますが、十分な運営期間、少なくとも一年程度の運営期間を確保したうえで評価・検証を行い、進めていただきたいと考えています。

 私からは以上であり、・・・教育長よりお答えします。

 

 ◆なお田中区長が「教育長から」とした井出教育長の答弁では、図書館問題、指定管理者制度導入問題に関しての答弁はただの一言もありませんでした。また井出教育長が「中央図書館長より」とした和田中央図書館長の答弁では一般的抽象的な図書館像論があるのみで、地域図書館全館指定管理者制度導入に関して具体的に触れるところはただの一言もありませんでした。ここでは図書館指定管理問題に関連する骨子のみ紹介します。

井出教育長 

(※師範館等に関する答弁はあったが図書館に関する答弁はないままに・・・)私からは以上であり、図書館については中央図書館長よりお答えします。

和田中央図書館長

 魅力ある図書館づくりについてお尋ねですが、情報化社会の進展と社会状況の変化による新たな区民ニーズ、区民の問題解決、レファレンス、IT化に伴うデータベースの整備の課題等の地域ニーズに応えてまいります。図書館協議会、利用者懇談会の意見を聞き、意見交換して進めていきます。時代ニーズ、区民ニーズに応える図書館づくりを進めてまいります。

  既に今年4月1日から、阿佐谷、成田(丸善株式会社・東急コミュニティ共同事業体)、高井戸、宮前(大新東ヒューマンサービス株式会社・株式会社協栄共同事業体)永福、方南(株式会社ヴィアックス)の6館で前記括弧内の各社による指定管理が実施されています。

 残る西荻、高円寺(区直営、常勤館)柿木(区直営、非常勤館)、下井草(区直営、株式会社図書館流通センター業務委託)、南荻窪、今川(区直営、丸善株式会社・東急コミュニティ共同事業体業務委託)の6館については、2011年度指定管理者制度実施が区=教育委員会によって決定されています。いずれも前山田区政のもとで昨年6月決定されました。

 この実施計画工程から行くと昨年の場合にならえば、区は今秋9月には公募し10月第一次審査、11月最終選定と区議会議決承認を終えて選定された指定管理者が契約社員等のスタッフ募集・採用と社内研修等の必要な準備を終えて4月実施に備えなくてはなりません。また既に実施ている指定管理館6館の運営について区の第三者機関を設置して評価・検証するのであれば今秋には第三者機関を設置しなければ間に合いません。

 このこれまでの経過を前提にしての区長答弁です。

田中区長答弁は、決定されている全館指定管理を「慎重に進める」ための「評価・検証」。指定管理者制度導入そのものの凍結や見直しの可能性を視野に入れた「評価・検証」ではない!

 さまざまな点で独断的な区政運営として多数の批判、非難を浴びていた山田区長の後任として区長職に就いた田中区長は、ソフトランディングで田中区政をスタートさせるために、意識的に自ら行おうとしている施策と前山田区政を区別し、前区政の諸施策に対しては最大限「批判」し「見直し」「検証」のポーズをとっています。所信表明や本会議答弁でも、たとえば、▲減税基金条例については、金利動向や経済情勢からして長期間基金を積み立て運用することについての不安や懸念、危惧の意見もあり、区議会での集中審議でも紛糾しており、区の世論を二分しかねないことから、基金の積み立てについては差し控え、新たな構想の策定のための議論の中で検討していきたい(田中区長)、▲区独自の教員養成施設としてのすぎなみ師範館については今期をもって教員養成を終了する(井出教育長)、等々です。

 これらの区側答弁については、真に、そうした制度的仕組みを改廃するものであるのかという点で疑問とすべき点が付きまとっており批判すべき大きな問題点があります。しかし、ここでは煩雑を避けるために、ひとまずこの問題点は措いて論を進めます。)

 さて、それでは杉並の地域図書館全館指定管理制度実施についての前掲の区長答弁は、この制度の導入・実施そのものを「見直し」たり、いったん新たな実施を「凍結」し「差し控える」ものでしょうか?気の早い議員や会派は「図書館全館指定管理にブレーキ」「中央図書館長の答弁からも、ブレーキがかかったことは間違いない」と区長答弁を積極的肯定的に《よいこと》として評価しています。とんでもない!田中区長は、前山田区政のもとで決定された2010年度・2011年度の地域図書館12館全館の指定管理者制度の導入・実施に対してブレーキをかけたのではなく、アクセルを緩めて速度調節し速度を少し落とすと言っているに過ぎません。

 田中区長は「慎重に進める」「・・・進めていただきたい」と言っているのです。地域図書館全館への指定管理者制度の導入について、図書館への制度適用・導入そのものに吟味・検討すべき問題点があるので、いったん「(進めることを)差し控える」と言っているわけではありません。

 制度導入、全館指定管理を行うことが前提となっています。そのために既に実施している6館の運営について少なくとも1年間程度の運営期間を通して「評価・検証」を行うと言っているに過ぎません。「評価・検証」の対象的課題領域には公立図書館に指定管理者制度を導入することの当非、適否、是非の問題は含まれていません。

 急いで、今年4月の先行6館に続いて来年4月に残る6館を指定管理者制度を導入するために、半年間の短い運営期間で「評価・検証」を行うのではなく、(指定管理が軌道にのるまでは)少なくとも一年間は運営期間を確保して(「確保」というコトバを田中区長は使っています・・・指定管理者企業にそれだけの期間を保障し確保してあげる、という意味です)、「評価・検証」を行ったうえで残る6館の指定管理者選定に資するようにするというのが、区長答弁の真意です。

 全館指定管理を拙速で進めるより、スピードを少し緩めて、既に実施中の指定管理者企業にたっぷり時間を与え、経営・運営上の軌道に乗ってから、残る6館の導入を進め全館指定管理に持っていく方が賢明で得策と考えているということです。なまじ残る6館への来年度導入を自己目的化して、そこから「評価・検証」を急くと、先行6館の運営実体が不慣れで整っていない状況でボロが出る可能性がある。それが制度導入そのものの当非の議論となり反対運動に再び火がついてしまっては後行6館も危うくなり、ひいては先行6館に制度導入したことそのものも覆されかねない。これが「慎重に進める」の本音です。田中区政は反対運動の再燃・爆発を恐れています。問題が噴出・露呈して第三者機関も黙過・弥縫できなくなり、組合も後に退けなくなり、二進も三進もいかなくなることこそ回避しなければならない。だから円滑に進め確実に導入するためには「急がばまわれ」「時間をかける」というのが核心です。

田中区長の「慎重に進める」算段によっても、図書館全館指定管理は必ず破たんする 

 

 私たちは次のように断言して差し支えないと思います。田中区長は、運営期間を少なくとも一年間確保することで指定管理を軌道にのせてから円滑に残る6館の導入という算段でいますが、指定管理者制度で図書館を運営することによる矛盾は、期間が長くなればなるほど大きくなり、どんなに隠ぺいしても隠ぺいしきれない矛盾として必ず破たんします。田中区長は「急いては事をし損じる」という判断にたったのでしょうが、急いでも、期間を延ばしても、《図書館指定管理のかかえる根本的な矛盾》は火を噴くのです。田中区政は図書館指定管理問題から、まるごと民営化施策から必ずほころびを見せます。

 

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田中良杉並区長(民主党)の所信表明を批判する(その2)

2010年09月13日 | 杉並田中区政批判

田中(民主党)区政は「最小コストで最大効果」を掲げて自治体民営化-公務員制度解体、職員の総非正規職化をめざしています 

※9月12日の前回記事(その1)からの続きです。

(3)「新しい公共」とは?・・・「最小の経費で最大の効果」「多様な質の高いサービス」「民間団体、民間企業の活力を積極的に活用」

 

 田中区長の実際の所信表明(演説、印刷物)では、この小見出しで紹介している通り、職員削減・民営化・非正規職化で「公共サービス」を行うという基本線でハッキリした表現をとっています。

 田中区長が「区政の重点課題の第一」として「時代の変化に即して新たな基本構想と総合計画を策定します」と言っていること、その中身については、「今後10年後の近未来を見据えた基本構想」と言ってはいますが、さしたる意味がありません。施策課題が並んだだけで、いかにしての問題はすべていまの公務員制度と区役所のあり方等も含めた「行政」の組織的実現手段をぬきにしてはあり得ないからです。

 そこで最大の重点課題としているのが、「第二に、『新しい公共』の発想で区政経営を刷新し、区民との協働を推進します」という点です。

 広報すぎなみ掲載の「概要」では「新たな基本構想と総合計画の策定の中で今後の協働の取組を推進する計画と行財政改革・経営刷新の基本方針を策定し、区民・団体・事業者の皆さまとともに、豊かな協働による地域社会づくりを進めていきます」となっています。

 新自由主義は、公共部門の行革・民営化を「参加と協働」「民間でできることは民間で」といういかにも聞こえのよいキャッチフレーズで説明し強行してきました。ここで「協働」と田中区長が言っている具体的中身は何か?それが本項の小見出しで引用した実際の所信表明演説での「民間団体(NPO法人等)と民間企業の活力の積極的活用」です。すなわち民営化です。

 民営化の動機とは、コスト削減=低コスト化と「住民の福祉」のサービス市場化です。田中区長の実際の所信表明演説では「最小経費で最大効果、多様な質の高いサービス」と言っています。

 「新しい公共」とは、これまで役所が「官」としてになってきた仕事を官民を超えて民間企業や民間団体(NPO法人等)に全面的に開放し、「社会全体」で担うというものです(民主党マニフェスト)。

 役所・制度が主語だとそういうことですが、仕事を実際に担うのは労働者です。「新しい公共」とは、公務員=職員を削減し、民営化・民間委託する、非正規職に入れ替えるということです。ここに田中区政の最大の階級的役割、その本体、核心があります。

 財界や民主党政権、諸野党はこぞって「公務員総人件費2割削減」、そのための2012年度公務員制度改革実施を叫びたてています。公務員のいったん解雇、総非正規職化が狙いです。

 田中区長(民主党)所信表明演説はその先頭に杉並区が立つと言っているということです。民主党が掲げる「公務員総人件費2割(以上)削減」は国家公務員に限っているものではありません。2011年通常国会での国家公務員法改正は自動的に地方公務員法改正に連動します。この公務員制度改革後は、公務員の仕事(「公務」)は「新しい公共」概念のもとに「公共サービスの提供」にとってかわり、民間(民間企業、NPO法人等の民間団体)の事業となり、正規職員の三分の一や二分の一の低賃金の不安定雇用で年金も医療保険もない非正規職とボランティアが担うものとなります。田中区長が所信表明で言っている「『新しい公共』の発想に基づく区政経営の刷新と区民との協働」とは、この自治体=区役所の解体・民営化と経営中枢を除く総非正規職化の攻撃にほかなりません。

(4)杉並版「事業仕分け」の実施、山田前区長が強行してきた外部評価制度の積極的踏襲

 所信表明があげる区政の重点課題の第三点が「杉並版事業仕分け」です。 

 広報すぎなみ掲載の所信表明・概要では「これまでの区政を検証する一環として、行政評価の実績に踏まえ、外部評価の仕組みを一層充実させた区独自の「事業仕分け」を公開で実施し、事業の評価・検証を行っていきます。2010年度は試行実施とし結果を2011年度予算に反映させます」としています。

 

 実際の所信表明演説では「(行政刷新会議の)劇場型仕分けとは一線を画し、既存の行政評価システムの実効性を高める」ということを強調しています。 

 これはどういうことか?前山田区政のもとで行われてきた民間事業化提案制度や行政審査モニタリング委員会等での外部評価システムを強化・拡充し、実効性を高めるとしているのではないでしょうか?田中良が区長選公約以来ィ掲げている「区長直属の特命チーム」に既存外部評価システムがまるごと横滑りする可能性があります。

 事業仕分けとは、①自治体の財政で存続させる必要性が事業に認められるかどうか→認められない場合は民営化、②継続する場合は現在の事業への財政支出そのものを圧縮することが可能かどうか→圧縮はいかなる方法で可能か、給与削減か非常勤化か業務の民間委託化か・・・等々の仕分けが核心となります。

 さしあたって、所信表明ではこれまでの区政の検証と言っており、「区の世論を二分しかねない減税基金条例に基づく基金への積立は差し控える」ことを言明していますが、核心はそこにはありません。

 実際に区の各事業各部署では何が今起きているか?

 「業務の外部委託は可能ではないか。職員の削減はもっとできるのではないか」という職員削減・民営化指針が政策経営部や管理職の系列を通して現場に打診され始めています。田中区政が「管理職、幹部の意見を聴いて進める」という「区政経営の刷新」とは、低コスト化優先の正規職員の削減、民営化・外部委託化にほかなりません。

 それを効率的に進めるために「外部評価システムを充実させ、杉並版事業仕分けを実施していく」と田中区長は言っているのです。当サイトでは行政刷新会議主催の国の「事業仕分け」の実際の仕分人を育成・養成しそのエキスパートやオーソリティになっているのは、南学をはじめとした杉並行政審査モニタリング委員会のメンバーであると繰り返し指摘してきました。田中区長の念頭にある「区長直属の特命チーム」とは、そういう人格を想定していると言ってほぼ間違いないでしょう。

団結して田中良(民主党)区政に絶対反対で闘おう

 

 田中良(民主党)区政との攻防は、「新しい公共」の名のもとに政財界が強行しようとしている自治体の解体・民営化、公務員制度改革=公務員制度解体の大攻撃との激突点となりました。田中区長が「地域の見守りを強化‐医療・介護・福祉‐」「安心して出産できる環境づくり‐子育て支援‐」「全小中学校にエアコン設置」等を「区民が健康で安心して心豊かに暮らすことができる施策」として掲げながら、実際に実施しようとしている最大の「重点課題」「経営刷新」とは杉並区職場に働く職員に対する職員削減、民営化、総非正規職化、区職場に働く全労働者に対する超低賃金化です。

 先日全国都道府県の最低賃金(時給)が発表されました。

 東京都の最低賃金はこれまでで最大の引き上げ額で30円上がっても時給821円です。因みにこの杉並の図書館に指定管理者制度が導入されてそこで働く非正規職の時給はその最低賃金(時給)そこそこのものです。司書であってもそれにプラス10円といったものです。山田区政のもとで決定した指定管理者制度の図書館全館移行ですが、田中区長がこれをそのまま実施し2010年度6館実施に続き残りの6館にも拡大するのは目に見えています。12図書館まるごと民営化という大規模で区民・利用者に甚大な影響が出てくる区政運営上の大問題でありながら、減税自治体構想の場合のように見直しいったん実施を差し控えると言わないのは田中区長がこれを積極的に評価・継承しようとしているからです。 

 田中区政は区職の民営化・非正規化で労働者を際限なく超低賃金にすることを「最小経費で最大効果」と言って目標にしています。「新しい公共」のもとでもたらされる事態とはそういうことなのです。区でこの攻撃の矢面に立たされている区職(正規・非正規)8000名の労働者が声をあげ団結してたちあがるべき闘いのときが来ました。この闘いは区職労働者の闘いにとどまりません。全住民の闘いです。自治体に働く労働者が暮らしていけないような賃金等の労働条件を強いられるとき、そこに「住民の福祉」があろうはずもありません。

次回= 田中良(民主党)区長の所信表明を批判する(その3)に続く。

 ★次回からは、この秋、残る6館の指定管理が強行されようとしている図書館の問題を中心に具体的にお伝えしていきます。所信表明で田中区長が施策面で重視して掲げている杉並版の幼保一体化施設「子ども園」の問題や見直しに言及している学童クラブ・児童館の問題についてもお伝えしていきたいと思います。区の職場で働く労働者にとっても、地域の労働者住民にとっても、区職場=現場こそが田中区政との攻防となるからです。

 

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田中良杉並区長(民主党)の所信表明を批判する(その1)

2010年09月12日 | 杉並田中区政批判

「新しい公共」掲げ自治体民営化・公務員制度解体、前山田区政ひきつぎ職員削減・非正規職化めざすのが田中良・民主党区政の正体です 

 9月8日、東京杉並区議会の2010年第三回定例会が始まり、新区長・田中良の所信表明がありました。田中区長が行った所信表明の詳細は、下記で杉並区議会本会議録画中継で(再生マークのある9月8日本会議分・・・・※所信表明の前に議会日程等に関する数人の意見があり、その後に所信表明なのでそこまで早送りが必要ですが・・・・)実際の演説を聴けます。印刷された所信表明は事前に議員等に配布されています。http://www.gikai.city.suginami.tokyo.jp/vod/vodtop.htm

 所信表明の「概要」は杉並区発行の「広報すぎなみ 9/11 N0.1948」1面に「新たな基本構想を策定し杉並区の更なる発展を目指します」として掲載されており、下記にて確認できます。http://www2.city.suginami.tokyo.jp/library/file/sg1948_2.pdf

 

 当サイトで実際の所信表明(演説および印刷物)広報すぎなみ掲載の所信表明の「概要」を併記して紹介することには理由があります。大旨はもちろん両者同じです。しかし、よく目を凝らすと、広報すぎなみ掲載の「概要」では、所信表明で田中良区長がめざしている新区政の階級的狙い、性格を単刀直入に言明している箇所が省かれているからです。

 実際には田中区長の所信表明は録画中継で流され、議員配布の印刷物で全文公開されています。その意味では広報すぎなみで田中新区政の階級的狙いが端的に表現されている箇所を抜き去ったところで意味がありません。広報を手にする区の職員や広範な区民を意識してやさしい表現をとったのか、紙面の容量上の都合で結果的にそうなったのかはわかりません。しかし、それにしても、偶然的結果的というには符節が合いすぎる特徴的な箇所が、広報すぎなみ掲載の所信表明「概要」で落とされています。それが田中区長の指示による省略のせいか、あうんの呼吸で編集した中枢幹部官僚の要約・整理のせいかもわかりません。しかし、演説を聴いて広報を読んだ人でこのように感じるのは、決して私たちだけではないと思います。ぜひ、両者を対照してみてください。

広報すぎなみ(所信表明の概要)に載っていない部分で田中良区長は新区政の狙いをそのものズバリで表明している

 実際には田中区長所信表明の要の位置にある考え方であるにもかかわらず、広報すぎなみに載っていない核心的部分とはどんな点でしょうか?

 (1)地域主権型道州制の実現を前提に地方政府=基礎自治体として先頭に杉並区が立つという考え方

 実際の所信表明の冒頭で「先行き不透明な経済情勢」や「(民主党)新政権への期待と不安の交錯」「混沌とした閉塞状況」等の田中区長の情勢認識を示したうえで、政財界・民主党がその打開方向としてめざしている地域主権型道州制とそのもとでの基礎自治体の役割・使命に言及しています。そこでは「道州制」というコトバは使っていないが、以下抜粋の通り、地域主権型道州制の先頭に地方政府として杉並・田中区政が立つということの表明以外の何ものでもありません。

 「地域主権改革」で「区こそ地方政府として・・・創造的政策形成」

 「真の自治分権改革」で「税源移譲」

 「基礎自治体が最初の政府となる」

 (2)地域主権改革(行財政改革・職員削減・自治体民営化)=前山田区政の本体部分を積極的に継承する立場

 前山田区政を批判した田中区長所信表明演説については本会議議場、傍聴席も一斉に拍手が起きた模様ですが、民主党首長のもとでの区議会と政党会派の新たな翼賛状況を示しています。しかし看過してはならないのは、山田前区長が「地域主権型道州制」を「杉並改革の総仕上げ」の中で正面から掲げていた点であり、田中区長が「地域主権改革」(地域主権型道州制)を所信表明演説の開口一番で掲げている点です。

 山田前区長の強権的な極右ファシスト仕様と田中新区長の民主党・連合仕様に違いはあれ、施策の本体部分・核心構造は政財界が求める新自由主義の行財政改革・自治体民営化にあり、ここで田中良は山田宏から「首長権力者のタイマツを受け継いだ」ということです。

 ▲ 確かに区長選で最大の争点になった前山田区政を継承するか否かの点では実際の所信表明演説でも広報すぎなみ掲載の「概要」でも、建前と表現としては「一定の評価」と「少なからぬ危惧」の是々非々の両面スタンス。印象としてはかなり山田前区政への「批判」面がトーンとして強くなっています。

 たとえば田中区長は「区の政策形成、意思決定で独断的な区政の運営手法があり、区民や職員への信頼が感じられない」「独自の歴史観や道徳観に基づく政治メッセージの発信は54万区民の負託による区長として節度をわきまえないもの」と前山田区政を「批判」してみせています。

 

 ▲ しかし、前山田区長の区政運営手法や(「つくる会」や田母神俊雄グループとの一体化や拉致被害者家族との「共感の輪」運動の呼びかけをはじめとする極右ファシストとしての戦争扇動を指すと思われる)区長の偏頗な政治メッセージ発信に対する「批判」を除いては、前山田区長が強行した行財政改革の本体部分・核心構造については、田中区長はハッキリと積極的に継承する立場に立っています。広報すぎなみ掲載の「概要」では「前区長が、財政健全化や職員の意識改革などの分野で一定の実績をあげたことは評価します」という表現にとどめているが、田中区政が山田区政の本体部分・核心構造の継承を表明している点は断じて許すことはできません。実際の所信表明演説では次のように言っています。

 地方分権改革の節目にあって、(前区長は)新風を吹き込んだ」

 「職員の意識改革

 「区債残高削減」

 「自治基本条例制定」

 「五つ星区役所として顧客志向の行政サービス

 ▲ 所信表明では、区の職員との緊張を生みかねないことから一言も言及していませんが、この一群の前山田区政の本体部分には、当然、11年間の職員定数の1031名削減区の6割の事業を民営化・民間委託化、区の職場を次々と委託・非常勤化した事実が含まれています。そうやって、「区債残高削減」「財政健全化」をもたらし、「顧客志向の行政サービス」(山田前区長は「五つ星区役所による24時間365日の行政サービス」と表現)、「職員の意識改革」を強要してきたのだから。

 田中区長は、▲山田区長は手法が強権的独裁的な点が乱暴に過ぎ、発信する政治メッセージがあまりにも偏頗で極右に過ぎ、区の職場・職員に対するトップダウンの行政組織運営にも行き過ぎた点もあったが、▲地域主権型道州制、そのための行財政改革・職員削減・民営化・職員意識改革では積極的に評価できる土台を築いたという立場にたっており、▲田中区政でも継承し推進するということなのです。

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労働者の権利と未来を賭けて労働運動の復権を・・・公務員攻撃めぐる激突の階級的意義(7)

2010年09月07日 | 公務員制度改革・公務員攻撃について

労働者は団結して闘うことによってのみ、権利を闘いとり、未来を切り開くことができる

 リーフレット「公務員の労使関係が変わる」を批判する(④

デマリーフ『公務員の労使関係が変わる』に対する批判の結論-

 日教組本部発行の『CHANGE 2012 公務員の労使関係が変わる』というリーフレットのこれまでの検討と批判を通して、当サイトがお伝えしたかった点は、結局以下の点に尽きます。

 (1)公務員制度改革は、全労働者に対する大失業、超低賃金・クビきり自由の非正規職化の攻撃だ 

 

今に始まったことではありませんが、官・民分断、正規・不正規分断の公務員バッシングがますます激しさを増しています。公務員制度改革の攻撃は公務員に対するクビきり・賃下げ・無権利化の攻撃にとどまりません。私たちすべての労働者に対しておしなべて激しく襲いかかってきている攻撃です。大失業と超低賃金・クビきり自由の総非正規職化攻撃、その妨げとなるいっさいの規制をなくす、最後の止め金も外すというところに本質があります。私たちすべての労働者と家族に対する人間的生存の剥奪、今日明日の生計の際限なき破壊の攻撃です。社会の全面的破壊的な崩壊です。ここに誇張はありません。

 2000万人規模で労働者を失業で家族もろとも路頭に放りだす。1割の正規雇用と9割の非正規雇用で大恐慌時代の国際競争に日本が資本主義として生き残る。ただただ資本家の利害のために企てられ、強行されています。そのために、これまで労働基本権を剥奪・制約する代償として与えてきた公務員の身分保障も「邪魔になった」。これまで賃上げ抑制・賃下げ強要に役立った人事院勧告制度も「今や百害あって一利なし」・・・それが公務員制度を取っ払う、解体しリセットする、まったく別のものに変えてしまうというのが今回の公務員制度改革にほかなりません。

 ※【補注①】「2000万人大失業時代」・・・・バブル崩壊後、1990年代冒頭財界が言い出した時代認識。バブル崩壊後の「失われた10年」、今日言われている「失われた20年」、リーマンショック後の現在進行形の大恐慌時代の財界の基調的時代認識となっている。

 ※【補注②】1995年日経連「新時代の日本的経営」・・・・日経連報告では労働力市場・雇用の流動化について「(ⅰ)長期継続雇用=長期蓄積能力型が1割。(ⅱ)専門的熟練能力=必ずしも長期雇用を必要としない専門能力継承の有期雇用型が2割。(ⅲ)専門性や定型性も含めて雇用流動型が7割」という経営戦略指針がうちだされた。不安定雇用、非正規雇用の基本戦略の数値原型。ポイントは(ⅲ)の不安定非正規雇用類型とともに(ⅱ)の専門・熟練も長期雇用にしていないこと。現在(ⅱ)類型は非常勤や定年再雇用等として完全に非正規化している。記事本文の9割とは現在の方向性での(ⅱ)プラス(ⅲ)の合計である。

 自由に賃金を切り下げることができ、思いのままに労働者のクビをきれる社会の仕組みに一刻も早くリストラしないとこの国は持たない・・・これが政財界の時代認識であり国家戦略です。公務員制度改革をめぐって国会で閣僚やみんなの党はどんなことを言っているか?!

  ・・・「生首を飛ばすか希望退職を募るか、そうしないと公務員総人件費2割削減はいかない」

 ・・・「とにかく早く公務員に労働基本権を与えて、それで民間並みにリストラ、人員整理をできるようにしましょう」「できのいい人に給料を2倍、3倍はいいが、できの悪い人は給与を3分の1、4分の1と下げる」

 ・・・「JALだって生首切る。早く生首切れる、リストラできる公務員法改正をしてください」

 正規も非正規もおびただしい規模で掃いて捨てられるように職を奪われ、路頭に迷う・・・。正規でクビがつながっている労働者は生計を維持するために職をなくさないためには病気や過労死で倒れるまで精神的生理的限界を超えて働くしかない・・・。非正規労働者はどんなに働いても生計費にも満たない賃金しか支払われず、いつクビになるやもしれぬ将来への不安の中でそれでも働かなければ今日明日もしのげない・・・。これが政財界が私たちにもたらそうとしている社会です。

 (2)既成労働組合指導部が攻撃の先兵に

  この大攻撃は、政財界や企業がしかけてきている攻撃です。だが支配階級の力だけでできることではありません。支配階級はこの攻撃が一つ間違えば労働者階級の一大反乱、労働運動の嵐のような爆発を呼び起こしかねないことを知っています。政財界は「労働組合」を使うことによってしかこの攻撃を貫徹できない。ここに既成労働組合指導部が政財界の最大の協力者、先兵となっていることの裏切りの意味があり役割があります。

 本来なら反対して闘うべき労働組合、連合や日教組・自治労等労働組合の中央・本部が反対しない。逆に「労働基本権付与」(争議権は除外・禁圧・剥奪のまま)で労働者の利害と労働運動を売り渡し、このクビきり・賃下げ自由の公務員制度改革・総非正規職化の先兵となっています。彼らはこの夏の定期大会や臨時大会で相次いで、経団連や政府が掲げている「国家戦略」「成長戦略」や「制度設計」をそのまま労働組合の政策スローガン、活動方針に掲げています。組合員、現場からは怒りが噴出しています。この現場の労働者の抗議と批判に対して彼らがいま言い出していることは何か?

 ・・・「納得感ある公務員総人件費2割削減」(「納得感ある消費税増税」ということも言っている)

 ・・・「財政が厳しいとき世論の批判に耐え得る行動を」

 ・・・「官民格差が現実にある。正規は賃下げが避けられない

 彼らにも組合員が納得しないことがわかっている。「納得感ある」とは無理やり「これでいくから納得しろ、あきらめろ」と従わせるということです。

 (3)労働者の武器は団結

 これに黙って従っていられるでしょうか。反対しても無駄だ、闘ってもどうせ勝てないとあきらめればすむことでしょうか。とんでもない。私たち労働者と家族の生き死に、人間的生存、今日明日の生計の問題だ。犠牲にされてたまるか。そもそも、大恐慌も企業の経営破たんも国や地方自治体の財政破たんも私たち労働者住民にはいっさい責任はない。もとより公務員労働者、公共団体で働く職員のせいでも責任でもありません。

 根本問題は政府の財政が破たんしようが企業が破たんしようが私たち労働者(人民、人間)は生きていかねばならないということです。私たちは闘いによってしか、団結して闘うことによってしか生きていくことも未来を展望することもできない。かつて労働者にいかなる権利もなかった時代に、労働運動と労働組合はそうやって生きんがための決起の中から、人間の歴史に登場しました。その闘いの中で労働者階級としての団結の力をつかみ取った。日本の政財界や世界の資本家階級は新自由主義の合言葉として「工場法以前の状態に戻せ」とわめきちらしています。いま私たちに求められているのは、労働運動、労働組合の原点に立ち戻って、それを復権、再生させるということではないでしょうか。闘いなしに私たち労働者人民の権利も未来もありません。団結だけが私たちの人間的生存のための闘いの武器であり、人間中心の未来の社会へ扉を開く唯一の力です。

    《労働基本権は、労働者自身の決起で闘いとるものだ》

 賃金がそうであるように、労働時間がそうであるように、安全衛生問題がそうであるように、雇用関係がそうであるように、すべての労働条件をめぐる労働者の権利は、すべて労働者の血みどろの闘いを通して獲得されてきたものです。機械うちこわしからサボタージュ、工場・職場内集会・デモ、工場・職場の占拠、ストライキ・・・・・全世界の労働者が資本家と警察や軍隊やギャング・暴力団と衝突し弾圧と闘いながらかちとってきた・・・それが団結権であり、団交権であり、争議権(スト権)です。

 公務員制度改革で言われている「労働基本権」に関して言えば、権利とは政府や資本家から与えられるもの、政府や資本家が保障してくれるものなどではなく、労働者階級が自身の闘いで闘いとり、守り抜かねばならない権利だということです。

 労働者にとって本当に一歩も譲ることができない。だから労働条件をめぐって闘い(労働運動)が燃えあがるのです。

  労使関係と言われている核心問題はどこにあるか?

  《賃金を払って労働者を働かせることによって何もしないでもたえず儲けることができる資本家にとってはどれくらいの賃金でどういう条件で働かせればどれだけの儲けをあげられるかの問題に過ぎません。

  しかし、《生存を維持し自分の労働力を再生産するのに費消されてしまうかつかつの賃金を得るために働くことによってしか生きていくことができない、賃金奴隷の地位におかれている労働者にとってはまさに今日生き明日も生きていくことができるかどうかの問題です。そのために今日働き明日も働くことができるかどうかの問題をめぐる資本家と労働者の非和解的関係です。

  そこでは資本家(使用者)は、生産手段を持っていることで常に優位に立ち、労働力を買うことさえできれば儲けることができ、労働者の誰彼やその暮らし向きや生き死にや苦しみに関心を払う必要がありません。この資本家に対して、労働者は今日明日生き、今日明日働くために、団結して闘うしか対抗手段がありません。

  団結して闘わなければ、資本家に買い叩かれ生計費にも満たない賃金で働かされる。精神的身体的限度を超えた長時間労働でボロボロにされ病気で働くこともできなくなる。資本家の経営上の一方的な都合や恣意的な人事上の判断でクビにされ路頭に放りだされる。労働者は団結の力によってしか賃金や労働条件をめぐるささやかな改善をかちとることもできなければ、資本家が儲けを大きくするために行わう賃金や労働条件の切り下げと闘うこともできない。

 (4)闘う労働組合を再生しよう、労働組合運動を復権しよう

 

 

 労使関係での労働者の力とは何か?

 「交渉」は武器か?「法律」や「協約」は武器か?「交渉能力」は武器か?違います。武器とは労働者の団結です。常に最後は団結の力です。全組合員が一致して使用者(資本家)に立ち向かえるかどうか、全労働者が心を一つにして立ち上がれるかどうかです。「労使交渉」そのものや「労働協約締結権」そのものが労使関係を変えるわけではない。労働者として団結して闘うことがすべてです。

  そして団結して心を一つに闘いを貫き通すことで、政府や資本家の頑なな意思によって有利な結果をかちとれない場合でも、労働者はほかの何ものにも代えることができない、かけがえのない労働者の団結という「財産」を築き上げることができるということです。今回は「負けた」が団結を拡大して頑張って闘い続ければ、次はもっと大きな闘いができる、団結して闘い続ければ、この資本家が運営する賃金奴隷制度、資本主義社会の仕組みを覆すときが必ず訪れる・・・この団結と闘いの経験に裏打ちされた確信です。

 団結して資本家と徹底的に闘い、敵を心胆寒からしめることができれば、そういうことはまれであれ、より大きな反乱になることを恐れる敵に譲歩を強い、「権利」をもぎりとることがある。そうやって労働者の団結力の発揮をもって団結をさらに拡大する・・・労働者自身が持っている底力を知る。これが労働者の闘い、労働組合の闘いというものです。労働組合とはそのためにあります。

 労働組合とは労働者の生きるための闘いの唯一の武器であり、労働者同士が心を一つにしてかけがえのない仲間として結束できる組織的拠り所です。労働組合は闘いのための討論と団結の拡大、実際の経験を通して労働者にとって力をつける学校です。そうやって闘いの中で労働組合は「万人が一人のために、一人が万人のために」という絆で運営される組織となり、支配階級にかわって人間が人間として人間らしく生きられる社会をめざし、実現し運営する力をつかみとります。労働組合は既成の組合指導部が考えているように使用者(資本家)との交渉のための機関、使用者と折り合いをつける折衝機関などではありません。労働者の闘いの機関です。 

 ストライキサボタージュ順法闘争職場の勤務時間内集会、職場門前や駅頭や街頭での抗議や暴露のビラまきはそうした労働者の団結の力のさまざまな行使形態です。リーフレットが言っている「労使交渉」というようなものではなく、団体交渉=団交も、まさしくその労働者の団結の力の行使、闘いそのものです。

 労働組合の執行部=指導部の役割とは何か?職場=現場の労働者を信頼し労働者の団結がうみだす闘いの力を確信して、職場討議を組織することです。現場の意見、怒りと切実な気持ちを的確な断固たる闘いのスローガンに集約し、職場=現場の労働者の団結の力で必要な闘いへの総決起をかちとること。その先頭に自ら立って闘うということにほかなりません。組合員・労働者に代わって使用者と交渉するのが組合執行部なのではありません。組合員・労働者の切実な利害と使用者の方針の間に立って使用者の顔色をうかがって双方の折り合いの落とし所をさぐるような調停役でもありません。ましてや「労働組合」の顔をして使用者の労働者への攻撃を「労働者にとってよいこと」であるかのようにごまかして労働者に伝える使用者(資本家)のメッセンジャーでもありません。

 (5)現場=職場から闘いを

 政府閣僚が「生首を切れ」と叫んでいるように攻撃で血が流されるのは職場=現場です。現場=職場の攻防、決起こそが、労働運動の復権、闘う労働組合の再生の戦場です。政財界は労働運動が燃えあがりかねない大恐慌時代に労働者階級を階級として解体し労働運動を根絶やしにするためにこの攻撃に踏み切ってきた。官公労働運動の解体のために公務員制度改革に踏み切ってきた。しかし、労働組合の幹部を味方(手下)にできても、国会で法案を通す翼賛状況をつくれても、決戦は職場が戦場となる。これまですべての労働組合の歴史的な闘いがそうであったように職場こそ攻防の火点です。職場こそ生きんがための労働者反乱の現場です。政財界が最も恐れている情勢を職場からつくりだした時、この攻撃は破たんします。

  いまの常勤職員と非常勤職員や派遣・委託で配置される非正規職が無権利と賃金や労働条件のたえざる切り下げにさらされるからです。自治体職場の各現場、末端職場から討論を開始しよう。職場討議を通して全職員・全労働者の総決起、単組・分会・支部の労働組合総決起をかちとろう。

  どんな情勢下でも労働者は団結したら何でもできる。戦前治安維持法下でわずか5分間の「5分間ゼネスト」(神戸、1927年1月25日)でしたが、保険料の全額資本家負担を求めて官憲の厳戒下で2万6千人の労働者が一糸乱れぬ団結でストライキを決行している。動労千葉は幾たびものストライキで組合の団結を強化・拡大している。全国で全世界でたくさんの労働組合がストライキで闘っている。

 ストレートに気持ちを表現しよう。まず声をあげ、闘いを開始しよう。職場集会、団交、ストライキを含む闘いで、労働者の団結の力の行使によって公務員制度改革・総非正規職化攻撃を粉砕しよう。

▲自治体の既成の組合の裏切指導部をはねのけ現場からの闘いで闘う労働組合を取り戻す闘い

▲突破口として最も団結を禁圧され阻害されている非正規職の中に新しい労働組合を今すぐつくりだす闘い(労働組合は二人から結成できる)

  この闘いを一体で何としても成功させよう。正規・非正規、常勤・非常勤、官・民の垣根をこえる闘いの口火を切った時、公務員制度改革の攻撃を粉砕する展望は開かれます。

 ★公務員360万人、関係職員200万人のクビきりの公務員制度改革に絶対反対! 

 ★非正規職を正規雇用とせよ!労働者派遣法撤廃!

 ★正規・非正規の分断を許さず、正規・非正規の団結で公務員攻撃・総非正規職化攻撃と闘おう!

 ★「公共サービス提供の社会的責任」の名による労働運動圧殺を許すな!団結こそ力だ!労働者の生きんがための労働組合を取り戻し、ストライキで闘う労働運動を復権しよう!

 

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クビきり・賃下げ・労働条件切り下げ》の自由・・・・公務員攻撃めぐる激突の階級的意義(6)

2010年09月02日 | 公務員制度改革・公務員攻撃について

※前回8月31日の記事からの続きです。

総非正規職化で、使用者には《クビきり・賃下げ・労働条件切り下げ》の自由、労働者は無権利

 日教組リーフレットは、公務員制度改革・公務員法改正によって、「労使交渉」を通して労働協約で締結できる事項」として以下を列挙しています。

 賃金・諸手当、勤務時間、休暇、任用・分限・懲戒の基準、労働安全衛生、災害補償、人事評価制度、人事異動基準など

 リーフレットで文章(コトバ)だけ見れば、公務員制度改革・公務員法改正後は、まるで労働者が労働条件をめぐって「労使交渉」で団体交渉権を行使でき、その結果として労働条件の改善を使用者に認めさせ、それを協約書で法的拘束力をもって使用者に遵守させることができるかのようです。

非正規職の労働者がおかれている状態を完全に無視・抹殺

 

 しかし公務員制度改革・公務員法改正後にもたらされることはまったく正反対です。自治体職場で非常勤で働いている職員や業務委託や指定管理制度によって派遣されて働いている労働者、そして民間企業で子会社や外注・派遣、下請で働いている労働者は、みんな、非正規職には労働基本権など仮に契約上あっても実体はないに等しく、むしろ予め完全に奪われ無権利状態を強いられていることをくやしい思いで痛いほど知っています。社会的に求められているのは、公務員や正規職をなくして非正規職にすることではなく、低賃金不安定雇用の非正規職を正規職とせよ、非正規雇用そのものを撤廃せよ、労働者派遣法そのものを廃止せよということでなくてはならないはずです。

 非正規職が労働基本権上の無権利を強いられワーキングプアとして生存権・生活権そのものが踏みにじられているという現実を無視することは許されません。労働力市場が使用者の労働力の安値買い叩きの買い手市場となっている現実のもとでは非正規職の労働者の労働条件は「使用者の自由」で一方的に決められています。

 どんな低賃金であろうとどんな短期雇用であろうとどんな劣悪な労働条件であろうと、生きるためにはとにもかくにも採用されるしかない立場と状況を不当にしいられているのが非正規職労働者の現実の状態です。非正規とは超低賃金であり、雇用に明日の保障がなく年金もなければ社会保険もない、使用者の「クビきり自由」と労働者の無権利ということだ。不当労働行為を社会的に告発し、あるいは処分覚悟で血みどろの闘いで現場で新たに労働組合をつくって使用者と懸命に闘っているのが非正規職の労働者の置かれている労使関係のあるがままの現実です。

 ところが、リーフレットは、そのような非正規職の労働者が置かれている現実を百も承知の上で、反対せず、非正規雇用そのもの、労働者派遣法制そのものを撤廃せよという立場にもまったく立ってはいません。逆に、公務員制度改革で公務員、正規職をなくし、全部、非常勤、派遣、パート、アルバイトの非正規職に入れ替える、その制度改革後に「労使対等の交渉で要求を提出し妥結にもとづいて労働協約を締結する権利」があるというようなとんでもない大ウソをついているのです。

 公務員制度改革・公務員法改正後の労使関係にはそのようにリーフレットが文章(コトバ)で幻惑しているような実体はこれっぽちも想定も予定もされていません。そのことは「新しい公共」「公共サービス提供の社会的責任」を掲げて、これまで公務とされていたものをどのような制度設計のもとに運営しようとしているか?政財界の制度設計の具体的実体を見ればハッキリします。

『子ども・子育て新システム』がもたらす保育労働者の「労使関係」、労働者の状態

   

 6月25日に政府が発表した「子ども子育て新システム基本制度案要綱」というものがあります。2011年に国会に法案として上程し2013年度に制度として実施スタートさせようとしています。ここには、公務員制度改革が現職員の全員解雇であり、労働者の総非正規化・無権利化であることが、新システムの実体として明らかになっています。民主党政権のもとで急速に具体化したもので耳慣れていない新制度案ですが、全容を知りたい方は、下記①②にあります。

 ①は制度設計の全体を文章とフローで示しており、②は新システムの狙いを隠そうともせず・・・たとえば「子ども・子育て新システムによるマーケットと雇用の創出-新成長戦略との連携-」のように・・・コンパクトなフローで示しています。 

 http://www8.cao.go.jp/shoushi/10motto/08kosodate/pdf/youkou.pdf

 http://www8.cao.go.jp/shoushi/10motto/08kosodate/sk_2/pdf/s2.pdf

 この「子ども子育て新システム」は、制度実施への工程表が2011年公務員法改正・2012年度公務員制度改革実施と完全に一体です。

  2011年国家公務員法改正。「子ども子育て新システム基本法」制定     

  2012年地方公務員法改正。2012年度公務員制度改革実施

  2013年度「子ども子育て新システム」制度実施

 「子ども子育て新システム」の制度的特徴

 (1)利用者の選択に基づくサービス給付の契約方式への転換

 このかん職員配置や資格保育士の必置基準のなし崩し的な緩和と認証保育や無認可保育の拡大で形骸化している。新システムは、まがいなりにも憲法と児童福祉法に基づいて運用されてきたこの現行の公的保育制度をバッサリ解体するもの。「国と自治体の責任」「最低基準」「公費負担」の原則を最終的に解体する。区市町村=基礎的自治体を実施主体として事業者と利用者の公的保育契約のもとに、利用者補助方式と公定価格を基本とする多種多様なサービスを現物給付で提供する制度に根本的に切り替えるところにある。【この構造は介護保険制度とまったく同じである。】

 (2)多様な事業者の参入によるサービス基盤の整備

 サービス給付を類型化し

①《産前・産後・育児休業給付》・・・育児休業中の給付と保育サービスの切れ目のない保障、

②《幼・保一体給付》・・・こども園=幼稚園・保育所一体化、多様な保育サービス(小規模保育サービス、短時間利用者向け保育サービス、早朝・夜間・休日保育サービス、事業所内保育サービス、病児・病後児保育サービス 等)、

③《放課後児童給付》

の各類型ごとに基準を定めたうえで、指定事業者制度を導入し、イコールフッティング(※ⅰ)で多様な民間企業の参入を促進し、運営費の使途範囲は事業者に自由度を持たせ、一定の経済的基礎の確保を条件に他事業への活用(※ⅱ)も可能にする、という「仕事と子育ての両立」支援・保育・福祉の市場化・民営化である。政府がこの新システムで言うところの「新成長戦略との連携」であり「子ども子育て新システムによるマーケットと雇用の創出」である。

補注※ⅰ-「イコールフッティング」とは競争に当たっての条件・基盤を同じに整備すること・・・同じ内容でありながら公営事業と民間企業の場合に対等ではないという「官業の民業圧迫」論で出てきた。保育をめぐる議論では「認可保育所と同等に無認可保育に補助金を回せ」等の論となっている。補注※ⅱ-利益を配当に回すことの禁止等の株式会社やNPOが参入しにくい規制をなくするということ。】

 (3)「雇用の拡大・・・子育てサービス従事者増」とは保育職員の全員解雇と低賃金非正規職による「子ども子育てサービス」

 ここが新システムの眼目だ。政府は、保育所待機児童の激増と国と自治体の保育に関わる財政ひっ迫のもとで、公立保育所と職員定数配置、資格保育士の必置配置基準を撤廃し、民営化で保育サービス従事者のほとんどを非正規職とすることで保育の総人件費の削減と保育サービスでの新規雇用の創出をはかるつもりだ。

 新自由主義者は「公立保育所の職員は公務員準拠で人件費がかかりすぎる。民間参入で保育に要する人件費は大幅に節減でき、その分を人員増員に回せる」「東京都の認証保育所は資格保育士を職員の6割以下に抑えているために人件費が安い」とし「規制緩和で職員の過剰配置と保育料を見直せば、試算では6千億円の公費投入で計41万人、非正規雇用換算で計100万人相当の雇用が生まれる」と言い立てている(学習院大鈴木教授「保育園に民活促進を・・・私の雇用創出作戦⑤・・・朝日新聞2010年6月27日)

(4)新システム実施体制の一元化=「子ども家庭省」の設置

 公務員制度改革の実施の政府の中央責任官庁として「公務員庁」を新設しするのと相対応するのが、この「子ども子育て新システム」での「子ども家庭省」。保育の民営化、低賃金非正規職化を中央で指揮し指導・管理・監督するということだ。

(5)利用者にとっても深刻な保育の安全問題等をひきおこす

 もっぱら保育労働者の問題を中心にここではみてきました。利用者にとっては、公立保育所の廃止、資格保育士を中心とした職員配置の規制緩和、非正規職化のもとでの入れ替えとっかえのシフト制で必ず事故や安全問題が発生することは明白。保育料負担の値上げとともにこの保育安全問題は「子ども子育て新システム」の根本問題の一つです。これは労働者のせいではない。労働者に労働者としての基本権と労働条件が保障されないところに「子どもの安全」はありません。

保育の非正規職化、労働者の無権利化の攻撃のどこに「労使交渉」や「労働基本権」があるというのか?

 「子ども・子育て新システム」が、48万人の資格保育士をはじめとする100万人の公立保育所職員のいったん解雇・民間企業への非正規採用であり、新システムのもとでのすべての保育労働者の非正規職化・無権利化であることは歴然としています。

  あのグッドウイルグループ・コムスンは労働者派遣法と介護保険制度をとことん利用して労働者を生計費にも満たない低賃金で搾取し過酷な労働条件で酷使し、ナンバーワンのシェアをとった。そのあまりの無法な強搾取ゆえに社会的告発を受け、崩れ去ったのはご存じの通りです。介護保険制度は、公的介護・福祉=措置制度を廃止し、介護を市場化・民営化した。措置制度のもとで介護を担ってきた労働者はいったん職を失い、介護の仕事を続けるためには、介護保険制度が定める資格を取得し、コムスンはじめ介護に参入した民間の人材派遣企業や法人のもとに雇用され、低賃金で劣悪な労働条件を強いられるしかなかった。生計のために苦労して資格を取得して人材派遣企業に採用され新たに介護職についた労働者も低賃金と劣悪で過酷な労働条件に耐える以外に仕事を継続できない厳しい現実がある。いったん介護職についてもあまりの低賃金とひどい労働条件ゆえに仕事を続けられず辞めていく人が後を絶たない。人材派遣企業にはそもそも労働基本権や労働基本法制が前提になっているような「労使関係」などカケラモありません。「子ども子育て新システム」がその仕事に従事する労働者にとってめちゃくちゃな「労使関係」「労働条件」を強いることになることは、介護保険制度やグッドウイル・コムスンの前例を見ても明らかなことではないでしょうか?“保育におけるグッドウィル・コムスン”をめざしているのがピジョンでありベネッセグループです。

 リーフレットが「対等な労使交渉で労働協約を締結することができる」としている「賃金・諸手当、勤務時間、休暇、任用・分限・懲戒の基準、労働安全衛生、災害補償、人事評価制度、人事異動基準」は、非正規職の労働者にとっては「要求」し「交渉」を求めること自体が使用者からのクビきりを覚悟しなければできないような文字通りの懸命の闘いです。リーフレットに書かれているような「紙に書かれたコトバ」など今日明日生きるために今日明日働くことができるかどうかのギリギリのところにいる労働者にとって何の武器にもなりません。ましてや、その書かれている真の中身は、使用者と使用者とグルになった労働組合幹部による労働条件切り下げの仕組みです。労働組合でありながら「労働基本権」を使って労働条件の切り下げをはかる・・・・!本当に怒りに堪えません。

 公務員制度改革に対して私たちが声を大にして訴え、叫ばなければならないことは、次のことに尽きます。

 ★現職員360万人クビきりの公務員制度改革に絶対反対!

 ★非正規職を正規雇用とせよ!労働者派遣法撤廃!

 ★正規・非正規の分断を許さず、正規・非正規の団結で公務員攻撃・総非正規職化攻撃と闘おう!

 ★「公共サービス提供の社会的責任」の名による労働運動圧殺を許すな!団結こそ力だ!労働者の生きんがための労働組合を取り戻し、ストライキで闘う労働運動を復権しよう!

 

 

 

 

 

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